海を渡る夢 スペインの空気とユーモアと哲学と
◇長崎セントラル劇場にて鑑賞。ふらりと立ち寄ると,時間ぴったり。2Fでの「ベルリンフィルと子どもたち」にも惹かれたが,やはり,アメナバール監督を選ぶ。
◇四肢麻痺のラモンの腕が動き,立ち上がり,ベッドをどけて,助走をつけて窓から飛び出していく。カメラはラモンの目となって,スペインのどちらかというと荒涼な土地を昇降しながら,そして海へ。すばらしい映像である。スペインの空気を伝えてくれる。
海へと飛んだあと,砂浜を歩き,知り合った女性弁護士との抱擁。そして,カメラは,ラモンのベッドでのうつろげな表情へ切り返す。最高の名場面であり,涙があふれる。
◇テーマは尊厳死であり,重たいものだが,ラモンのウイットにあふれユーモアある語りや切り返しで,見ていて気分が落ち込むことはない。ラモンの書く詩は,哲学的で自分には難解であったが,DVDなどでもう一度見て理解したい。できるかな?
とまれ,9時半に起き,長い一日を,哲学書を読んだり,ワーグナーを聴いて過ごしているラモンの知性はすばらしく高まっているはずである。思索をめぐらす暇もない自分の毎日を考えてしまった。むろんラモンの人生は地獄である。だからこそ,あれほどの家族の愛情につつまれていても,死を選択するのである。
◇アメナバール監督だからといって,最後のどんでん返しを期待してはいけない。海を渡るラモンの魂(視点)をエンドタイトルに,生や死について考える暇さえない多忙な自分に,じっくり考えてごらんと語りかけてくれる。
