ジョゼと虎と魚たち さわやかさの中のテーマ
◇すてきな邦画にであった。幸せ。
◇池脇千鶴の名演技に脱帽である。冒頭の乳母車の中で包丁をかざす,醜い彼女が,どんどんかわいく知的でエネルギーとウイットに満ちたすばらしい人物像へと観る者の目を新しくしてくれる。
◇「こわれもの」として世間から隠そうとする世代(祖母)と偏見をもたない不思議さわやかな大学生(妻夫木)。リアルさとそうでなさがないまぜになって主人公ジョゼのまわりを回るが,ジョゼはしっかりした自分をもち,自立している。
◇ラストで,結局ジョゼから逃げてしまう自分の情けなさに涙して,その情けなさからも逃げようとする大学生(でも,男ってこういうものだと思う)と電動車いすで買い物に出て,人生を楽しむかのようなジョゼの後ろ姿が対比されて終わる。車いすは後ろ姿しか映さないが,たぶんジョゼは微笑んでいる。それが,さわやかさの中に見事にテーマを浮立たせていて秀逸。
◇「スウィングガールズ」の上野樹里が芦屋(?)の令嬢で大人っぽい役を演じるが,違和感なく,高校生でも大学生でも,そして主婦もできる,恐るべき女優かもしれない。
◇「ジョゼ」の表現語法で感心するのは,映像で全部を語らず,観る者の想像を上手に喚起すること。それは,まるで文学である。例えば,セクシーな場面だが,ジョゼ「いちばんHなことしてもええよ」で,画面はモーテルでの愛の交換の終わった場面で,妻夫木「いたくなかった?」ジョゼ「あんなんでええの?」これは,いったいどんな行為をしたのかは,観る者の想像にゆだねられるが,男はたいがい判ってしまう。こんなところが,じつに文学的である。久々に出会った邦画の秀作である。
