リーディング小説「生む女~茶々ってば~」
第八話 Are You Ready?
Are You Ready?
野心の扉の開いた先は、秀吉の跡取りとなる天下人の母。
秀吉が望む子どもを、私が彼に与える。
正室の寧々にも他の側室達にもできなかった豊臣を継ぐ男児を産む。
その子が彼から私への愛と地位を、揺るぎないものにする要石。
彼との褥を終えた私は、どんな手を使ってもこの要石を手に入れることを決意した。
翌日、すぐ手を尽くし子どもが授かる、という妙薬を取り寄せた。
そして、子どものできる願掛神社を回り始めた。
身体を冷やさぬよう気をつけ、身体を冷やすと言われる食べ物をやめた。
秀吉は毎週、私のところに通い夜を共にする。
ただ年齢のせいもあり、男の機能を果たさない時もあった。
「もう、わしは男としてダメなのかもしれん・・・」
そうガックリ肩を落とす時もある。
その時の彼は天下の覇者でなく、しぼんだ彼の象徴と同じように、しょぼくれた年寄りだ。
私は聖母のような優しい笑みで、大丈夫ですよ、と彼の背中を優しく撫でる。
だが、言葉と裏腹に、彼への憐憫の情は湧かない。
なぜ彼が妻や側室達に子種を植え付けられないのか、分析する。
貧しい農民の出だった秀吉は、子どもの頃から食うや食わずの生活をしていた。
母親の再婚相手とそりが合わず、早くに家を出て苦労した。
身体が出来上がる成長期に、十分な栄養を摂っていない。
だから身体は強いが、背は低く貧弱だ。
そんな生活だから、男としての子種が薄いに違いない。
しかも女好きの彼は、これまで無駄に女達に子種を放出した。
彼が放つ子種は、彼の強い執着力や精力や権力欲とは反対に、身体から出たとたん元気をなくし、女達の子宮にたどり着かない。
が、それは私にとって好都合。
次から次へ鉄砲の玉のように放出しても子どもができていないのは、彼の子種の生命力の弱さだ。
彼の弱い子種をどうやって自分の子宮に導き、植えつけるべきか、私は知恵を絞った。
まず子種を強くするため、鰻や山芋など精力のつく食事を用意した。
だが秀吉の好物は、割粥という石臼で米粒を細かく砕いたお粥なのだから、貧乏くさい!
ずらり、と並んだごちそうを用意しても、少し箸をつけるとすぐ
「粥をくれ!粥だ!」
と、美味しそうに粥をすする。
こんなものでは弱い子種がさらに勢いをそぎ、弱くなるだけではないか、と私はイライラした。
むかつくから、彼が私の身体に手をかけようとすると、プイッと背中を向けふてくされてやった。
すると彼はオロオロする。
「どうした、茶々?
どこか、具体が悪いのか?」
と何度も聞く。
私は彼の様子を見て、どれくらい不機嫌な態度を取ればいいか時間を計る。
男が下手に出る時間を、長引かせてはいけない。
男はもともとプライドが高い。
ましてや彼は天下人だ。
そのプライドを傷つけることは、彼の怒りを買う。
長時間不機嫌でいるのは、得策ではない。
彼の高いプライドを傷つけていいのは、彼の後継ぎである男児を産んだ時だ。
その時まで私は、犬をしつけるように上手に彼を手なづける。
その自信が、私にはある。
不機嫌な私に彼がため息をつくタイミングで、タイマーが灯った。
私はくるり、と身体を秀吉に向け笑みを浮かべた。
そして自分の胸を強く彼に押しつける。
秀吉は肩を降ろし、両手を私の身体に巻きつけた。
「驚かすな、茶々。
わしは、もうそんなに若くないぞ」
「いえ、秀吉様はまだ若くお元気でございます」
そう悪戯っぽく笑い、私は右手を彼の下半身に伸ばす。
いつの間にか、このような下品なしぐさも出来る女になった自分を一瞬哀れむ。
だが、すぐに憐憫を振りはらい、目を閉じ布団に横たわる。
ニヤリと笑った彼は、ゆっくり私の上にかぶさってきた。
愛撫もそこそこに性急に、私の中に自分をさしこむ。
私の花芯は彼が入っても、もう痛みはない。
だが快感もない。
あの時開いた快感の扉は開いたと思ったが、すぐ閉じた。
代わりに男子を産む、という野心の扉は両手を広げ大きく開いたままだ。
だから私はその扉と同じくらい、両足を開く。
そして快感のあるフリをし、切なげな声を出し、腰をねじる。
秀吉の骨ばった背中に手を回し、抱き寄せる。
子種を植えつけ妊娠させろ、と彼をゆすり上へ下へと激しく腰を動かす。
彼の息が荒くなった。
あともう少しだ。
間違えるな、欲しいのはお前ではない、お前の子種だけだ。
目を閉じ快感に身をゆだね、荒く息を吐く彼を下から見上げ、背中に回した手に力を込める。
私を妊娠させる子種だけが欲しい。
愛はいらない。
愛は邪魔だ。
私が愛するのは、自分だけ。
私が自分を使い、揺るぎない地位と権力を与える。
そのためにどうやってでも、彼の子種を手に入れる。
その為なら、偽りの愛もsexも、なんだというのだ。
そして彼は、果てた。
力尽き、満足した秀吉が眠った後、私は満ち足りた気持ちで今日の子種が私の子宮に達したことを願い、お腹をゆっくり撫でた。
私には、妊娠した自分が勝利の笑みを浮かべているビジョンが見える。
必ず子種を手に入れ、出産する。
そのためなら、どんなことでもしてみせる。
と私が両手を強く握りしめた時、Are You Ready?と声が聞こえた。
OK!
覚悟はできている。
そっと寝床から立ち上がり、障子を開き、夜空を見上げた。
私は勝つ。
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