小林アキヒトの一生:咎/鐘ト銃声
1. 雨の日
2. ふと、思った事。
3. 残花
4. 浅草ブルーハワイ
5. ♫
"小林アキヒト"シリーズとしては第五弾となる、 "Q"三部作の完結編。
"序"、"破"、"Q"と続いたミニアルバムシリーズ、「小林アキヒトの一生」。
更に"Q"は、"急"、"泣"、"咎"と三部作に分けられていて、終わりそうで終わらないシリーズとなっています。
本作は、"Q"の完結編ではあるものの、"小林アキヒト"シリーズの完結編となるかは、まだ不明。
ブックレットの最後に終わりが仄めかされているものの、伏線である可能性も高いと思われ、「シン・小林アキヒトの一生」の制作も待たれるところですね。
まず、1曲目「雨の日」から随分と外してきたな、と。
ローファイなサウンドと、素朴さと適当さのスレスレを狙う歌詞は、いかにも鐘ト銃声らしい。
とはいえ、気の抜けたユニゾン歌唱は、ボーナストラックに入っていそうな脱力感。
何でもありな雑多性を高めるとともに、ブラフとしても機能しています。
というのも、続く「ふと、思った事。」、「残花」、「浅草ブルーハワイ」が、正統派のヴィジュアル系ビートロック色を強めているのですよ。
気持ちの悪さを前面に出した歌い方や、必ずしも様式美的ではない歌詞のフレーズなど、すべてにおいて王道とは言えないものの、ソリッドでハードな演奏とマイナーコードで疾走するメロディアスな展開は、最後の最後にやってきれたな、と驚かされること請け合い。
ラストの「♫」は、キャッチーな方向に帰ってきた感こそあれ、従来のコテオサ的なアプローチではなく、ビートロックバンド特有のポップ感なのです。
三部作をまとめると15曲入りのフルアルバムになる、という予想をしていましたが、良い意味で裏切られた形。
並び替えれさえすれば相応の作品に仕上がるとは思われますが、こうもセオリー全無視の構成でぶち込んでくるとは。
なんというか、このやっちゃいけないところに踏み込む危うさが、彼らの武器なのでしょう。
一方で、ヴィジュアル系的なコンセプト作品にはしてやるものか、と言わんばかりに挿入された「雨の日」にも、彼らの矜持を感じるところ。
とにかく、これが1曲目にあったことが肝になっているのだよな、と感心せざるを得ません。
サウンドプロダクションの軽さ、薄さは前作までと同水準ですが、3枚聴くことで確かに凄みは感じます。
過去作品はソールドアウト済で、本作も完売は時間の問題。
現時点で、ストリーミング/ダウンロードには未対応ながら、サブスク版として3枚を再編集した【小林アキヒトの一生:Q】を発表しても面白いのでは。
<過去の鐘ト銃声に関するレビュー>