δυσ-τόπος ~Dystopia~/アルルカン
1. 手放して掴む零
2. LOUDSPEAKER~天からの才~
3. 愚者の行進
4. 餞
5. blackboxx
6. アルファ
7. PARADISE LOST
8. Hello
9. ねがい
10. STIGMAS
4人編成としては初となる、アルルカンの5thアルバム。
本作がリリースされた時点で、彼らが置かれていた状況は、まさに逆境。
Dr.堕門が解雇となったばかりのタイミングだというのに、メンバーが書類送検されたというショッキングな報道が。
運営の対応の悪さも悪循環を生み、身から出た錆とはいえ、ネガティブな方向に評価バイアスがかかってしまったきらいはあるでしょう。
内容の異なるDVDが付属する初回限定版2種類と、CDのみの通常盤でのリリース。
音楽性としてテーマを設けるのではなく、直感的に格好良いものを、という作風は前作と変わらないのですが、メッセージ性が前面に出た「MONSTER」に対して、"Dystopia"をモチーフとした世界観重視の構成が、本作の特徴となっています。
SEなし、シングルからの収録なし、という潔さ。
歌モノ的な楽曲は「ねがい」のみに絞って、激しく鋭い楽曲ばかりを詰め込んだ全10曲は、35分間の勢いの塊となってぶつかってくる。
この怒涛のスピード感に、現状から抜け出そうと必死にもがいているような焦燥感と、それでもやってやるという熱量の高さを感じずにはいられず、そして、それは皮肉にも彼らの逆境とリンクしているようにも聴こえるのですよ。
良し悪しは別として、世界観にこだわる作品において、生々しさを創出していました。
Gt.奈緒さんが4曲、Gt.來堵さんとBa.祥平さんが3曲ずつ作曲を担当しており、Vo.暁さんが歌詞で軸を通すという役割分担も絶妙。
特に、來堵さんがコンポーズした「LOUDSPEAKER~天からの才~」や「blackboxx」は、お洒落なミクスチャーテイストを、攻撃的なアルルカンのサウンドに上手く落とし込んでいて、新鮮味を与えて、流れを変える効果的なナンバーに。
リードトラックとなった「手放して掴む零」も、祥平さんの楽曲。
これらは、メインコンポーザーである奈緒さんの楽曲だけがアルルカンの音楽ではないぞ、これ以上誰が欠けてもいけないぞ、と主張しているようにも見えるのでは。
コンパクトさも相まって、作曲者を分散しても、アルバムとしてはまとまっている点もポイントです。
ショウビズに走らず、初期衝動に回帰するかのような勢いに塗れた作品。
「MONSTER」で盛り込み切れなかった、濃厚な世界観という要素を補完する位置づけにもなっていて、最高傑作候補になり得るポテンシャルは十分に持っているはず。
どうにも作品外での話題が先行してしまい、ファンからしても新規層にアピールしにくい現状は、残念としか言いようがありませんね。
<過去のアルルカンに関するレビュー>