ステラ / アルルカン | 安眠妨害水族館

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ステラ (Type B)/アルルカン
¥1,620
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1. ステラ
2. ダメ人間
3. 胸の内側に宿る息

アルルカンの2ndシングル。
結成半年にして、随分とハイペースで活動をしているような気がします。

激しくも、切ないサウンドを得意とする彼ら。
その中で本作は、とりわけ歌を押し出す意図を感じました。
全編歌モノで構成、というわけではないのだけれど、要所要所のメロディが立っていて、そこを聴かせるために全体を構築しているような。

表題曲である「ステラ」は、前半こそはラウド調。
ゴリゴリとしたイントロでスタートし、Aメロはデスヴォイスの応酬。
ハードさが目立つ序盤の流れに、やはりシングルでは攻撃性を優先するか、と思っていた矢先、メロディを歌うパートに入ってくると、イメージが変わってくる。

星空が浮かぶようなメロディアスなサビが、ロマンティックで、どこか切ない。
幻想的でもあり、甘酸っぱくもある。
ここまでガラっと変わると、強引に聞こえそうなものなのだが、なかなかどうしてしっくりくるのですよね。
イントロと、アウトロ。
入り口と出口で、楽曲の印象が塗り替えられてしまいます。

カップリングの「ダメ人間」も、総合的にはハードな部分が多い楽曲。
だけど、やはり歌メロのパワーが大きいせいか、Vo.暁さんの声を引き立てるためのアレンジだな、と思えてくる。
変態的なAメロ、デスヴォイスで煽るBメロを経ての、流れるようなサビ。
ここに照準を絞っているのだ。

"右から左"、"左から右"と、歌詞に合わせて、実際にボーカルパートをパンで左右に振り分けるギミックも面白い。
ウネウネとしたサウンドにトリップしてしまいそう。

Type Bにのみ収録されているのは、「胸の内側に宿る息」。
ライカエジソン限定のType Cには、「DROPLET」が収録されており、そちらも気になるところですが、なんとなく、日本語のタイトルのほうが好みなので。

こちらは、ロックバラードということになるのかな。
テンポはミディアム調ながら、相応に重さを維持するリズム。
ギターについては、じわりじわりと迫るような、ダークなフレーズを刻みます。
サイバーな加工が施されたコーラスが、不気味なのか、幻想的なのか、不思議な世界観を作り出す。
この手のナンバーでは、暁さんの伸びやかな歌声が効きますな。

現代的なサウンドを上手に取り込む。
そのうえで、様々なアプローチにもチャレンジ。
これだけやっておきながら、作品において出していくべきバンドの軸は、しっかりとリスナー間で共有できているのです。

前作までにあったような、1曲あたりのインパクトは少し標準化されてしまったような気はしますが、言い換えれば、早くも初期衝動の段階を終えて、安定して良作を生み出すバンドになろうとしている。
もうちょっと荒削りでも良いくらいに優等生。
マイナーバンド好きには、その点で物足りなさを感じてしまうのかもしれませんが、単純にクオリティの高いバンドが好きな人には、オススメの若手バンド。
しばらく勢いは続きそうです。

<過去のアルルカンに関するレビュー>
Eclipse
似非林檎-eseringo-
アルルカン