BLESS / アルルカン | 安眠妨害水族館

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BLESS/アルルカン

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1. 世界の端

2. 黒犬

3. Rem

4. 好奇心、僕を生かす

5. 消えてしまいたい夜に

6. if

 

8月にリリースされた、アルルカンの1stミニアルバム。

TYPE AとTYPE Bで収録曲は同一ですが、TYPE AにはMVやライブ映像が収録されたDVDが付属しています。

 

結成当初、"次世代名古屋系"を名乗っていた彼ら。

しかしながら、発表された楽曲たちが、リスナーが想像する"名古屋系"のイメージとはズレがあったのも事実で、次第に自称する機会が減っていった印象でした。

 

そんなエピソードも頭の片隅に追いやられていた時期に、この「BLESS」を耳にすることになるのだが、脳裏に浮かんだのは"次世代名古屋系"という言葉。

ダークで激しく、メロディも重視。

そのうえでマニアックさも求めるアプローチが多く見られ、これは確かに"名古屋系"からの影響を感じるぞ、と。

いや、最後の最後でしっかり聴きやすく仕上げて、現代シーンで受け入れやすくしている器用さを踏まえれば、そこからの進化も見て取れる。

ならば、"次世代名古屋系"という冠もなかなかどうしてしっくりくるじゃないか、と。

 

重苦しさを纏ったミドルナンバー「世界の端」からのスタートで、今までとちょっと違うな、と思わせると、重低音をゴリゴリ響かせるサウンドは、それ以降も維持。

彼らがお得意とする疾走チューン「黒犬」も、ほんのりマニア臭のするリフを織り込んだり、デスヴォイスとの掛け合いを織り込んだりと、セルアウトから逆走しているようで興味深い。

この流れで聴くと、更にメロディアスに振って切なさを際立たせた「Rem」まで、名古屋系バンドのシングル曲のように聴こえてくるのですよ。

はじめに単体で聴いていたら、いつものアルルカンだな、と感じていたと推測できるだけに、この曲順で構成した意図も見えてきそう。

どこにも、無駄がないのですよね。

 

変拍子の複雑なリズムでアングラ路線を狙ったような「好奇心、僕を生かす」が、そこに入ってくるのもニクい演出。

ダンサブルな歌謡ロック「消えてしまいたい夜に」、ラストに持ってくるセツナ系の王道的な「if」と、終盤はリスナーの視点に立ってバランスを整えてくるだけに、ここで再び"名古屋系っぽさ"を与えたことで、前半と後半が完全に分断することを阻止しています。

インパクトを与える実験的な要素と、流れを意識したドラマ性。

その両立が可能なミニアルバムという媒体を使って、楽曲の個の強さを上手くさばいたな、と感心してしまいますね。

 

「ニア・イコール」が全曲シングルで切れるアルバム、「Utopia」がリード曲を引き立てるためにバランスも意識したアルバムだとすれば、本作は、脇役に光を当てるためにリード曲を流れの一部として使っている印象。

その意味では、新たな武器を手に入れたというより、もともと秘めていたポテンシャルが、いよいよ解き放たれたといったところでしょうか。

 

<過去のアルルカンに関するレビュー>

価値観の違いは唯一の救いだった

Utopia

ニア・イコール
無花果
墓穴
ステラ
Eclipse
似非林檎-eseringo-
アルルカン