RAINBOW/DEZERT
Disc1
1. デザートの楽しいマーチ
2. Your Song
3. カメレオン
4. あなたのそばにいる
5. 殺されちゃう
6. ミザリィレインボウ
7. 脳みそが腐る
Disc2
1～4. カメレオン＜ステム音源(Dr,Ba,Gt,Vo)＞
5～8. あなたのそばにいる＜ステム音源(Dr,Ba,Gt,Vo)＞
9～12. 脳みそが腐る＜ステム音源(Dr,Ba,Gt,Vo)＞
１年８ヵ月ぶりとなるDEZERTのオリジナルアルバム。
「RAINBOW」というタイトルが示すように、７曲を収録しています。
＜レイ盤＞と称された初回限定盤は、特典DVDと特典CDが付属する豪華仕様。
DVDには、３曲のMVに加え、ドキュメント映像が。
CDには、各パートごとのステム音源が収録されていました。
通常盤にあたる＜ンボウ盤＞ は、初回プレス分のみ、７色のうちいずれかのカラーフィルム入り。
いずれも、トレーディングカードゲームのカードが封入されていますが、＜レイ盤＞は５枚、＜ンボウ盤＞ は１枚と、価格に応じて差があるようです。
「TODAY」、「black hole」と、MAVERICKに移籍してからのアルバムは、DEZERTをどう動かしていくかという戦略的な側面もある中での路線変更や試行錯誤もあったようですが、本作は、ストレートにやりたい楽曲を詰め込んだとのこと。
とはいえ、原点回帰的なアプローチに頼ったり、内向的な方向に突き抜けるのではなく、方向性を定め、広げてきたこれまでの作品を踏まえて、先を見据えるスタンスは変わっておらず、変わる部分もあれば変わらない部分もある、素直な意味でフラットな内容に仕上がったのではないでしょうか。
７曲に収まったのは、"RAINBOW"というコンセプトありきではないとの談。
ただし、そういう偶発的な要素が作品の完全性を補完しているのも、前に進む彼らを後押ししているようで、後々、語り草になりそうです。
１曲目の「デザートの楽しいマーチ」から、インパクトは抜群。
今伝えたいこと、歌いたいことを表現する、というスタンスを突き詰めた結果、Aメロについては、メロディを排除し、ポエトリーリーディング的な構成に。
暑苦しいメッセージを投げかけているようにも見え、ひたすら突き放しているようにも見え、その温度感が実にDEZERTらしいなと。
ナンセンスなタイトルも含めて、意外性から幕が開きました。
先行的に配信されていた「Your Song」を噛ませて、「カメレオン」ではギターロック然としたハードさを踏襲。
不穏なサウンドも織り交ぜつつ、サビでは清涼感すら感じさせる変幻自在っぷりは、まさに「カメレオン」なのですが、この1曲だけで「RAINBOW」を表現できているのでは、なんて考えるのは無粋なのかな。
ひとつキーになると思われるのは、「あなたのそばにいる」。
切なさを帯びた、メッセージ性の強いロックバラードとなっており、それまでの勢いのある流れと、アヴァンギャルドにギラついた「殺されちゃう」の間に、こんな沁みる楽曲を放り込んでしまうところに、現在のVo.千秋さんのマインドが反映されているのかと勘繰ってしまいます。
更に、「ミザリィレインボウ」も、スケールの大きさを感じさせる歌モノ。
この楽曲には、壁を感じないというか、ライブハウスではなく、フェスのメインステージのような無限に音が広がっていく環境で鳴り響いているのが想像できるのですよ。
もっと言えば、国境、あるいは大気圏まで越えてしまいそうなポテンシャル。
等身大のサウンドで、こんなにも懐の広い楽曲が演奏できるようになったのか、と感慨深い気持ちになる。
いや、リスナーの想像した速度を超える彼らの成長に、圧倒されてしまったという感覚のほうが適切かもしれません。
ラストの「脳みそが腐る」は、ある意味で変わらないDEZERTの攻撃性が見られるのだけれど、ベクトルとしては「ミザリィレインボウ」の延長線上にあるとも捉えられるのが面白いですね。
強い言葉を使っていても、慈悲であったり、救いであったり、何故だかそういう母性的なものを感じてしまった。
何て言えばいいのか、常に前に進み続けて、振り返ることをしない潔さが清々しい。
変化や進化の度合いに差はあれど、同じモチベーションで制作される作品がまったく見当たらないのが、ヴィジュアル系バンドとして、ロックバンドとして、正義を貫いているのだな、と思うのです。
いつも最新。
シーン全体を見渡した時に、90年代の栄光に縋りつくような戦略も増えた昨今、彼らが最前線にいてくれることは、本当に重要なことなのだな、と気を引き締めるきっかけになる１枚でした。
＜過去のDEZERTに関するレビュー＞
「最高の食卓」
タイトルなし
精神科医(拒食症)のスナッフフィルム集
特製・脳味噌絶倫スープ～生クリーム仕立て～
～包丁の正しい使い方～
ぼくの死骸と君のチョコレート