特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~ / DEZERT | 安眠妨害水族館

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特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~/DEZERT
¥3,150
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1. Human soup(SE)
2. 「絶蘭」
3. メリーさんの自殺未遂
4. 脳みそくん。
5. さくらの詩
6. 飼育部屋
7. ストロベリーシンドローム
8. 「死刑宣告」

DEZERT初となるアルバム作品は、ミニアルバムでもなくフルアルバムでもない8曲入り音源集。
まぁ、価格設定は完全にフルアルバムなんですけれど。

グロテスクで内向的な世界観と、ハードさとマニアックさを兼ね備えた音楽性。
現代的なコテコテバンドとして注目を集めている彼らですが、現時点での集大成が完成したといったところ。
水に沈んでいくようなサンプル音に、赤子の笑い声が重なる不気味なSE、「Human soup」からスタートすると、DEZERTらしい楽曲が目白押し。
ドロドロとダークな世界観に酔いしれる楽曲に、激しさに特化したナンバー、切ないメロディアスチューンもあって、さすが音源集というだけあって、色々な側面を見ることができます。

近時のコテコテバンドは、90年代への回帰傾向が強い気がしていたのだけれど、このバンドは、きちんと2013年を生きているな、と。
軸として添えられた新曲、「脳みそくん。」なんかを聴くとわかりやすい。
ハードなパートの後に、メロディアスなサビを持ってきて、キャッチーに展開される。
彼らの音楽の下地になっているのは、あくまで現代V系シーンのアプローチなのです。
これが、きちんと若いファン層にも支持されている大前提なのでしょうね。

そして、懐古主義層にもアピールするような工夫も忘れていない。
エフェクトをかけてのシャウトで押し切る「メリーさんの自殺未遂」は、曲構成もさることながら、タイトルにインパクトがあるので、嫌でも目に留まる。
初期の蜉蝣なんか好きな世代であれば、現代風に正当進化を遂げたバンドとして、面白く聴くことができるかもしれません。

楽曲として好みなのは、「さくらの詩」かなぁ。
ダウナーな演奏に、美しいメロディ。
淡々と進行していくのかと思いきや、サビでは少し疾走感も持たせて、メリハリをつけてきた。
ギターソロでは、なんとも言えない切なさもあり、じんわり、何度でも聴きたくなる1曲。

色々と演出過剰な部分はあるけれど、駆け出し中のV系バンドなんて、実力や経験が伴っていない分を、どれだけアイディアでカバーできるかが勝負だったりするわけで。
少しやりすぎ、と思わせるくらいのバランスが、案外、カリスマ性として化けたりするものなのですよ。
そういう意味では、期待値が高いバンドなので、ナンセンスな試みであっても、どんどんチャレンジしてもらいたい。

そうは言っても、ボリューム的には、シングル曲を入れてでも、素直にフルサイズにしておいても良かったのでは、とは思いますけれど。
2013年下半期、彼らの更なるブレイクを予感させる一枚。

<過去のDEZERTに関するレビュー>
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