おやすみ世界 / mama. | 安眠妨害水族館

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おやすみ世界/mama.

 

1. おやすみ世界

 

 

連続リリースとなる「3つの錠剤」シリーズの最終章となるデジタルシングル。

 

"精神安定剤"、"緊急避妊薬"ときて、最後の3錠目は"睡眠薬"。

音楽的には、王道的なV-ROCK、ストレートなパンクチューンと続いた中でのこのテーマ。

バラードになることは想像が出来ていたのですが、こういう引き出しを持っていたとは。

静かに淡々と進むAメロと、バンドサウンドで爆発するサビ。

大まかにたったふたつのメロディしか用意されていないにも関わらず、現代音楽としては長尺の5分弱を聴かせ切ってしまうのです。

 

とにかく、肝となっているのはメリハリ。

静と動の切り替えによって生じるパワーだけを武器に引っ張っていく構成となっており、雰囲気モノ、世界観モノの側面も強いでしょう。

いや、パワー"だけ"と論じてしまうのは語弊があるな。

もちろん、その圧倒的なパワーが生じるのは、それを最大限に活かすためのアレンジの工夫や、感情のスイッチを一瞬で振り切る表現力があればこそ。

極限にまで、そのアウトプットを集約した結果が、このシンプルな構成になったと捉えると、より趣が深まるのでは。

 

アレンジについては、上モノや同期ではなく、環境音を多用しているのも面白い点。

歌が入っていない部分で聞こえてくる街の雑踏や子供の声が、楽曲にリアリティを刷り込んでくるのですよ。

総合的には、これをシングルで切ってくるか、というキャッチーさの欠片もない、サブスク時代に中指を立てるような音楽性。

3部作にしてドラマ性を作ったことで、これを受け入れる下地を作ったのかと思うと、なかなか策士である。

結果として、mama.というバンドの守備範囲の広さを見せつけた形。

彼らの描くコンセプチュアルな楽曲への興味を強める作品群となりました。

 

<過去のmama.に関するレビュー>

あふたぁぴる

僕らの病名は「人間」でした。

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