人間失格/mama.
1. 「人間失格」
2. 感染
3. ゆびあそび
4. MUDER RED CHAINSAW
5. 心中唄
6. 怨ミ晴ラサデオクベキカ
2019年に結成されたmama.の1stミニアルバム。
1種類のみでのリリースであり、全6曲が収録されています。
太宰治の「人間失格」からインスピレーションを受けて制作された、ある種のコンセプト作品。
作詞・作曲は、すべてVo.命依さんが担当しているのですが、タイトル、曲順、歌詞を先に決めて、後から楽曲を作り上げたのだとか。
必ずしも一本道でのストーリーではないものの、共通のテーマで6篇の歌詞が描かれており、音楽性の幅の広さを、うまくまとめる手段としてテーマ性が機能していると言えるのかもしれません。
表題曲である「人間失格」や、中盤で盛り上がりのピークを担う「MUDER RED CHAINSAW」を聴くに、彼らが得意とするのはメタリックなラウドサウンド。
重低音を埋め尽くし、ゴリゴリのヘヴィネスで押し切る演奏に、それを切り裂くような命依さんのハイトーンボイスが重なってくる。
メロディアスなパートでも勢いを殺さず、まるで、鈍い痛みと鋭い痛み、両方をダブルパンチで放ってくるのですよ。
本作は、そこに昭和初期の和製ホラー的なおどろおどろしさと、歌謡曲由来の哀愁をコーティング。
暗さや翳りを纏いつつ、激しさにも振り切れるという極端な緩急が生み出され、ベタに見えて個性的、異質に見えて耳馴染みが良いという化学反応を起こしていました。
「ゆびあそび」ではひたすらに不気味さが強調されており、「心中唄」ではしんみりとした歌謡曲とヘヴィなサウンドの融合が味となる。
最後の「怨ミ晴ラサデオクベキカ」についても、ドロっとした和の空気感と、モノクロの陰鬱な風景が脳裏に浮かびます。
雑多な印象もあるけれど、これ以外には考えられないという曲順の妙。
整理しきれていないカオティックな構成は、実に初期衝動的で、むしろ魅力として映るのではないでしょうか。
文学を踏まえたテーマ性と、昭和レトロなメロディライン。
そこにミスマッチとも言えるラウドサウンドをがっつりと被せてくるメンタリティは、異端ながらセンセーショナル。
コテコテ系へのカウンターパンチであった"密室系"を現代に昇華したら、こういうサウンドに行き着いていた可能性もあったのでは、と考えてしまいます。
今後、どこに活路を見出すのかは未知数ですが、和のフレーズを取り込むスタイルがハマっている彼ら。
本作限りのアプローチになってしまうのであれば、それはさすがにもったいない気がしますね。
願わくば、本作での実験結果を踏まえて、「人間失格」と地続きの作品が聴いてみたい。
将来性のあるmama.にとって、スタートダッシュになりそうな1枚です。
<過去のmama.に関するレビュー>