掟 / RAZOR | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

掟/RAZOR

 

1. 掟

2. 狼煙

3. 明日もし僕がどこかで朽ちて

4. デラシネーション

5. 神様のアイロニー

6. 木枯らしの詩

7. 完全無欠

8. MAD INVISIBLE

9. 見知らぬ害虫

10. UNCHAIN

11. STARS

12. 邂逅

 

 

Dr.哲也さんの脱退があり、ex-ALSDEAD、ex-AllSのNIKKYさんが加入して新体制となったRAZOR。

前作から1年足らずのインターバルで、2ndアルバムが届けられました。

 

相変わらず、正統派のヴィジュアル系としてやれることを全部詰め込んでおこうというアプローチ。

1stアルバム「千年ノ調べ」から制作期間が開いていないこともあるのでしょうが、大きく何かを変えるというよりも、純粋にレベルアップを図ったという印象です。

メタル調で凶悪に攻め立てる楽曲があれば、世界観重視の歌モノもあり、現代風にエレクトロなサウンドを取り入れたと思えば、90年代風のベタさも残していく。

そして、雑多とも言える楽曲たちを、メッセージ性の強い歌詞により、一本の線を通していくのですよね。

 

その中で、不可抗力的に変化することになったのは、ドラマーの交代。

NIKKYさんのドラムは、高音に抜ける乾いたサウンドに強みを持っており、前任とは違う味がありました。

その意味で、ラウドなサウンドを主軸としつつ、バリエーションの広い彼らの音楽性には適役。

ラウド一辺倒なバンドであれば、ずっしりヘヴィネスを重視したタイプのドラマーを好むリスナーもいるでしょうが、案外、浮遊感のある曲や、軽快に疾走していくナンバーも多いので、バランスがちょうどよいと感じます。

 

とにかく王道を突き進むRAZOR。

アルバムの構成も、セオリーを貫いているな、と。

SEから繋ぐ形で、ハードさとメロディアスさの両輪を兼ね備えた「狼煙」を送り込み、勢いよく幕を開けるスタートすると、リードトラックとなる疾走チューン「明日もし僕がどこかで朽ちて」で勝負を決める。

序盤の3曲でアルバムの評価が決まる、というジンクス通りに出し惜しみしないパワープレーを挑んでいます。

 

中盤のアクセントとして、ドリーミーで浮遊感のある「木枯らしの詩」を挟んでいるのもポイントでしょうか。

それまでの「デラシネーション」、「神様のアイロニー」は、それぞれ、軽さ、重さを柔軟に使い分けてはいるものの、主流のサウンドの範囲内でのバラエティ性の拡大だったと言えるのですが、この曲は新たな可能性を示す新機軸。

ガラッと雰囲気を変えたうえで、シングル曲である「完全無欠」にて仕切り直した結果、王道的な楽曲が新鮮さを取り戻しているのですよ。

ハードチューンが揃えられている後半のラインナップ。

"またこんな曲か"と捉えられるのと、"ここからが本領発揮だな"と捉えられるのとでは、アルバムの価値が大きく変わってくるわけで、実に気の利いた曲順ですよ。

 

ラストの「邂逅」が、クリーントーンで疾走するメロディアスなナンバーなのもセオリー通り。

名盤とはどんな作品か、という模範解答を自らのアルバムで提示しているような清々しいストレートさ。

もしかすると、模範的、ストレート、という言葉は本人たちからすれば面白くないのかもしれないのだけれど、そこで違いを作ろうと捻りを入れたり、天邪鬼なアレンジにしてみたり、と模索しているところ込みで、リスナーがヴィジュアル系に期待している音楽のど真ん中なのです。

 

第一線に、正統派の王道バンドが存在してくれることは、シーンにとっても大事なこと。

"無難"とは近いようでまったく異なりますので、その辺はご理解を。

攻めの姿勢を忘れないRAZORの経験と勢いが、すべて詰め込まれている1枚。

 

<過去のRAZORに関するレビュー>

千年ノ調べ

the CORE