脚本家の方の労働運動への深い理解に涙した ”相棒20元日SPについて(視聴を終えた方々へ)” | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2022年は、再起の年です。

総選挙での野党共闘の成果と不十分だった点をもう一度確認し、参議院選挙に向けて再出発し、深刻な医療従事者・介護従事者不足に具体的な対策を講じ、不合理な病床削減をストップさせ、憲法改悪を阻止し、差別やハラスメントのない職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。

 

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

 

毎年元日に放映される「相棒元日スペシャル」を楽しみにしています。

もともと社会問題に鋭く切り込むことが多い「相棒」ですが、スペシャルや映画ではさらに重厚なストーリーで深く問題を掘り下げる展開がみられることに期待できます。

今年の元日スペシャルも大変面白く鑑賞したのですが、1点残念なところがありました。作中で問題となる企業の非正規労働者たちが本社前で抗議行動しているシーンで、労働者たちが”ヒステリックにがなり立て、無関係な右京さんたちにまで(本社社員と誤解してなのですが)怒りをぶつける人たち”という演出をされていたことです。

このシーンを問題だと感じた人は他にも多かったらしく、ブログやTwitterでいろいろな意見を拝見したのですが、その中でこのシーンが脚本家の方が元々書いたものとは異なるシーンだったということを知りました。

脚本家の方がご自身のブログでそのことについて書いていらっしゃいます。

同じアメーバブログですので、リブログさせていただきます。

 

ブログやTwitterでは、抗議する労働者の姿の描き方の是非についての意見が多いように見受けられましたが、私は脚本家の方が元々お書きになっていたシーンが「デイリーハピネス本社の男性平社員二名が、駅売店の店員さんたちが裁判に訴えた経緯を、思いを込めて語るシーン」だったということに深く感動し、シーンが差し替えられてしまったことが改めて残念だと感じました。

経営者と非正規労働者の争議と聞くと、その会社の正社員は経営者側だと考える方が多いかもしれませんが、非正規労働者を劣悪な労働条件で働かせている会社は正社員も劣悪な労働条件で働かせていることは多く、正社員が非正規労働者のたたかいに共感して応援するということは、私としては大いにあり得ることだと考えます。実際、非正規労働者と正社員が一緒に労働条件の改善のために一緒に活動している労働組合は存在します。手前みそですがうちだってそうです。

作中の争議は、おそらくメトロコマース争議を下敷きにしているのだと思いますが、劣悪な労働条件改善のために立ち上がった駅売店の女性たちの粘り強いたたかいは、労働運動に携わる人たちの間では大きな感動と共感を呼び、支援が集まり、非正規労働運動史上に残る争議として記憶されています。

脚本家の方は、「自分たちと次の世代の非正規雇用者のために、なんとか、か細いながらも声をあげようとしている人々がおり、それを支えようとしている人々がいます。そのような現実を数々のルポルタージュを読み、当事者の方々のお話を伺いながら執筆しました」と書かれています。この言葉に、労働運動の神髄が込められています。単に、自分の生活をよくしたいというだけではなく、自分の次に続く人たち、自分の周りで働く人たち、もっと広く、同じ業界で働く人たち、同じ日本で働く人たち、様々に自分に連なる人たちにも波及していくからこそ声を上げ続け、支え続けるのが労働運動です。だからこそ労働者たちは団結し、連帯するのです。自分には何一つ利益にならない争議であっても、抗議行動に駆け付けたり、裁判傍聴したりするのは、それが労働者全体につながるものだと信じるからこそです。

ですから、あのシーンは争議の当事者がプラカードを持って抗議するシーンよりも、平社員が非正規労働者たちが訴訟に踏み切った経緯を思いを込めて語るシーンにすることに意義があったのです。平社員は非正規労働者と対立する存在ではなく、共感し、支援する存在だということを示すために。

このことに思い至った時、私は脚本家の方が労働運動を取材してその意義を深く理解してくださったことを感じ、感動して泣いてしまいました。そして、改めてそのシーンが改変されてしまったことを残念に思いました。

 

……上記のことは私だけの深読みかもしれませんが、少なくとも脚本家の方は非正規労働者の争議をきちんと取材して脚本を書かれたことが多くの方々に伝わることを願います。