年が明けて、ドラマ『ばけばけ』の後半がはじまった。主人公のトキとヘブンが結ばれた後は、トキの肩にかかっている家族のあり様が焦点だ。家族と言っても松野家の人々だけではない。雨清水家のタエと三乃丞と新たに勘右衛門が好いた女性もいる。みんなまとめて面倒を見るつもりがトキになくても、トキの肩にかかってくるのだろう。トキとヘブンが二人なかよく暮らして終わりではない状況だ。大体筋書きはわかっているので、それをどのように描くのか、それを注視して見ている。
明治時代の出雲大社
トキとヘブンの結婚の披露宴の席で、ヘブンがつむじを曲げた。予兆はあった。ドラマの展開としては常道だ。「カゾク ナル デキナイ」「ミンナウソツキ」とヘブンが言った。場が白けて、トキがどうするのか一瞬不安になってしまった。トキは真正面から心情を吐露した。言い訳ではなくて正攻法でトキは返した。「お金のために一緒になる」と思われることを嫌ったからこそのトキの態度だったのだ。突っ込みどころはいっぱいあるけれども、髙石あかりの毅然とした演技と顔いっぱいの涙顔には圧倒されて何も言えない。この人の笑顔は顔いっぱいで笑っているのが印象的だったが、泣くのも顔いっぱいだ。その迫力につられて思わず涙が出そうになった。
それにしても、トキがうかつな女性のように描かれたのはどういうわけだろう。「シキュウ コラレタシ」との電報で駆けつけたトキに、宿で錦織の面前でヘブンがトキにプロポーズをしたのはいいにしても、杵築大社で二人が永遠の愛を誓ったというのに、トキが家族のことをまったく失念していたというのが理解できなかった。突っ込みどころ満載のドラマなのでもこれはちょっとまずい、と思ったのだけれど、そういう女性だったのでいいのかも知れない。髙石あかりはだんだんヒロインの顔らしくなってきた。大きな目だけではない、顔中で表情豊かに見せている。明治の女性にはあまり見えないけれども、ドラマにはうまく溶け込んでいる、と思う。
今日1月9日(金)のNHKプレミアムトークはトミー・バストウだった。当たり前だけどドラマのヘブンと同じような雰囲気を醸し出していた。ユニークな俳優だ。共演の髙石あかりが日本髪のまま出ていて印象に残るコメントをしていた。杵築大社へ行く稲佐の浜で合流した後の宿でヘブンがトキに告白する場面に対してのコメントだ。この場面の二人のことを彼女は目と目が合っただけで、「心が読める。きっとお互いに・・」と彼女は語った。役者にしかわからない距離感なのだろう。その語り方を見ていたら、自然で実際そうだったんだろうな、という感じがした。朝ドラ『虎と翼』の主人公を演じた伊藤沙莉をプレミアムトークで見た時にも、そのコメントの表現力の豊かさにびっくりしたことがある。その時以来だ。トミー・バストウが髙石あかりのことを総理大臣にもなれる、と言っていたが、彼女の意気込みを感じてのことだろう。日本髪で役の扮装のままだったので気合いも入っていたのかも知れないが、彼女の話す言葉一つ一つに納得させられた。
フミが大事な場面で言うべきことをしっかりと話していたのが印象的だった。司之介がタエに口を滑らしたときにこわい顔をして手遅れをピシャッと指摘した。結果的にはその方がよかったのかも知れないことだったが、言うべきことをきっちりというフミは見ていて気持がいい。そしてトキがヘブンに啖呵を切ったときにその場を丸く収める話をした。娘のため家族のために何とかしようという気概が出ていた。タエもそれに応えた言葉を添えたので、ヘブンの気持もやわらいだようだ。「支える」と言った司之介や「大船に」と言った勘右衛門は何する術もないようだったのと対照的だ。やはりいつの時代でも家族のことを現実的に対処できるのは女性のようだ。明治時代は日本髪の女性が多かったようだが、こうしてドラマの中で見ていると日本髪の女性は好印象だ。頸筋の線が美しく見える。現代は髪の長い女性が、というのはセクハラなので言わない。
今週の最後は「だらくそ」で終わった。松野家の借金取りの口癖だ。これをみんなで口をそろえて言わせるとは、脚本家の度量がすごい。気の抜けた三乃丞のために司之介が提案したのだが、よくもみんなもタエ様までも了解したものだ。批判ではないけれど、こういう使い方は松江でもされないと思うのだが・・・。今週はせっかく稲佐の浜へ行ったのだから、有名な美しい夕陽を見せてほしかったし、神話の謂れの一端を紹介してほしかった。ドラマの中では松江らしさ、出雲らしさがもう一つ伝わってこない感じがしている。すべての問題が一気に落着したので、これからは何があるのだろうか? 隠し事や課題がたくさんあって気が揉めていたので、三乃丞じゃないけれど気が抜けてしまった。



