総務省が8月5日に発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、今年1月1日時点の人口は1億2427万1318人で、前年から50万5046人(0.40%)減少。マイナスは11年連続で、減少数、減少率とも過去最大である。都道府県別に見ると埼玉、千葉がマイナスに転じ、これまでで最も多い44道府県で減少したことになる。増えたのは東京、神奈川、沖縄の3都県だけで、この国の未来は益々暗くなるばかりだ。 

(日経紙記事より)

 東京とて例外ではない。増加数は67.301人(0.52%)にとどまり、これは昨年より1万人以上少ない。神奈川県は0.05%で、比較的健全な出生率を示してきた沖縄県でさえ0.16%まで低下し、どちらも風前之灯にある。

 一方、減少県は急拡大。-1%以上だけでも、秋田1.52%、青森1.36%、山形1.27%、岩手1.25%、高知1.21%、徳島1.15%、和歌山1.14%、長崎1.12%、新潟1.11%、福島1.08%、山口1.07%、愛媛1.03%、島根1.00%と13県に及び、ことに東北と四国地方で顕著になっている。

(都道府県別、転出入超過数)

 (総務省データ2019より)

 これから見ると東京(首都圏)一極集中だけに目を奪われがちだが、そうとも言えない。首都・東京にも忍び寄る影が・・。

 本当に東京一極集中なのだろうか。数字の上では突出しているとはいえ、全国的な急減傾向にあって、ただ単に目立つだけではないのか。昭和30年代には年間30万人以上も増加していた。増加率は5%に達した。今では、その10分の1でしかない。いわば、増加率0.52%は、一極集中ではなく人口を維持する上での適正値さえ下回りかねない危険水域でもあるのだ。

 夏季五輪を前に、ヒト、モノ、カネを独り占めした東京に忍び寄る影。コロナ狂奏曲による事態の悪化が先行きをより深刻にさせる。無事、開催に漕ぎ着けたにせよ、その後は五輪不況も加わり雇用もなく人口減少に転ずる可能性が極めて高い。中止にでもなれば尚のことだ。何せ、一極集中とは名ばかりで、この1年間に6万人しか増えていないのだ。景気後退なら一溜まりもあるまい。

 2012年から減少に転じた日本の人口は、その幅を100万、150万へと拡大しつつ、今世紀の後半にかけて全自治体の3割が消えゆく運命にある。減少傾向は、まもなく神奈川と沖縄が、そして東京が仲間入りし、やがては日本全土が消滅の危機に直面するだろう。

 これは半世紀も前から分かっていたことだ。遅くとも出生率急降下の1980年代には対策を講じねばならなかった。バブルに興じて繁栄は未来永劫とでも思ったのか、人口の減少など意にも介さず、物笑いの種でしかなかったことに起因している。いわば少子高齢化は人災以外の何物でもない。

 今、巷には“人口減少下の云々”を説く書物が氾濫する。いずれも少子高齢化をビジネスチャンスと捉え、明るい未来だけを約束ている。確かに約4000万人の高齢者市場は魅力に違いない。だがそれを支えるだけの活力がどこにあるのか。人材がどれだけいるのか。過酷な労働と低賃金から外国人(就労)の活用さえ難航しているのに。

 ことに、コロナによる影響は計り知れない。生産を支える現場に外国人はいない。就労の拡大も、あくまで体のいい“季節工”だけに帰国してしまって誰もいない。生産は滞り農作物は収穫すら出来ない。呼び戻そうにも、アジア各国からみて日本は「渡航警戒地域」であり、出国さえ認められない。欧米との比較論で(コロナ対策の)優位性を誇示したところで、アジア諸国からみれば劣等生なのだ。所得水準でも格差は急速に縮んでおり、コロナ問題が解決しても、どれだけが戻ってこようか。

 空き家問題も深刻だ。現在の860万戸ですら収拾が付かぬままに、2030年代には全国で、2050万戸にまで拡大すると予測される。これは全棟数の3分の1に相当する。単身や子供のいない貧困層の住まいは集合住宅だけではない。東京では戸建てにも38万世帯が居住している。空き家問題は地方より東京の方が遥かに深刻ということだ。

(空き家の推移)
(総務省、住宅土地統計調査より)

 日本創成会議は消滅が疑われる全国の896自治体を公表した。東京は奥多摩や島嶼部に混じって豊島区だけが入った。だが安心は出来ない。都内の宅地は家屋の建て替えさえ困難な狭小地が大半を占める。再開発でもない限り無価値な土地ばかりだ。これは地方より東京の方が遥かに危機的であることを物語っていよう。

 この数年で住宅戸数が世帯数を上回った。需給の暗転は不動産相場の暴落を意味する。加えて、この先は開催の成否に関わらず五輪不況が追い討ちをかける。コロナ次第では1929年の大恐慌を凌ぐ恐れも。モノ、カネだけでなくヒトまでが東京から逃げ出してゆく。廃屋銀座に名を変える住宅地に陸の軍艦島と化す都心。ならば首都圏に魅力はない。一極集中で無縁と思われた東京がいの一番で限界集落に成りかねないのだ。

 地震学者の石橋克彦氏は、かつて「東京は度重なる大地震によって無人の荒野に帰す」と述べたが、何れにせよ限界集落を意味する。評論家は「人口減少下の経済成長」に自信を示す。だが、こうした楽観論を述べるのは、政治家にしろ評論家にせよ高齢者ばかりだ。地震が先か絶滅が先かはともかく、自らの存命中には無関係であるが故の絵空事なら、それこそ戦犯でしかない。

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《折り紙》

『東京さ行ったら銀座でベコ飼うだ~♪♪』


 「ん、東京が穀倉地帯になるってか」

 「モー、オイラの出番でないかい」

 「・・・・」