回顧録「いつか見た映画 1991」53『客途秋恨』 | やりすぎ限界映画入門

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ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

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■『客途秋恨』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

1990年/香港=台湾映画/100分
監督:アン・ホイ
出演:マギー・チャン/ルー・シャオフェン/リー・チーホン/加地健太郎/ティエン・ファン/逸見慶子

■1991年 劇場公開作品 53本目

「28年前」1991年、「21歳」の僕が、渋谷Bunkamuraの「ル・シネマ」にならんでかなり通った映画館は新宿「シネマスクエア とうきゅう」。「回顧録」を書いてて、当時ここで見た多くの映画が、「LD化」「DVD化」されず、今もう見れなくなってしまった現状を思い知る。『客途秋恨』もその1本だった。

DVDがレンタルされてないなら買おうと思い調べると、レンタル以前に「一度もDVD化されなかった」真実を思い知る。香港や中国ではされてるみたいだが、日本ではされてない。中古で変えるのは「VHSビデオ」しかなく、僕の「格差生活」では買うのが苦しい金額。困ってしまった。

どうしても見たくて追い込まれ、最後は「友達関係」ルートから探し、何とか「字幕なし」の海外版を見ることができた。理解できるか不安だったが、半分くらい理解できたと思う。今『客途秋恨』を日本で見るのはとても難しい。いい映画でも簡単に見せられないのが悔しい。

なぜこれほど『客途秋恨』が今日まで忘れられなかったのか? 「21歳」の僕が『客途秋恨』を見に行った理由は、恐るべき “極限ダイナマイト・ボンバー・ギャル” 「マギー・チャン」の「極限の美」を見たかったから「しか」ない。恐るべき “極限ダイナマイト・ボンバー・ギャル” 「マギー・チャン」の「極限の美」を、今日まで僕に忘れることなどできなかった。

『ポリス・ストーリー 香港国際警察』で「大ブレイク」し、『プロジェクトA2 史上最大の標的』『ポリス・ストーリー2 九龍の眼』と、「マギー・チャン」は大スターだった。「マギー・チャン」を見て「時間が止まった」速さは瞬間だったと思う。この後「ウォン・カーウァイ監督」一連の作品で映画史に名を刻む存在となった。関係ないが僕が30代前半の頃片想いだった女性が、「マギー・チャン」に「くりそつ」で、「マギー・チャン」には個人的な思い入れがある。

「28年間」の時を超え、「シネマスクエア とうきゅう」に見に行った「1回」以来、人生で「2回」目を見た。いつものごとく「殆ど何一つ覚えてない」「初めて」見るに近い状態だったが、運がいいことに約半分「日本語」の映画だったので思ったより楽しめた。まさか『客途秋恨』が約半分「日本語」だったなど、殆ど何一つ覚えてなかった。

当時の「うっすら」覚えてる記憶で、『客途秋恨』は僕の中で☆☆☆☆★[85]だった。「そんなに面白くなかった」記憶がある。「2回」見なかった理由でもあった。「日本」が出てきたこと、母親と仲が悪かったのがラストで和解すること、母親が戦争で苦労したことを、「うっすら」覚えてたが、詳細は忘れた。

ところがまた「今」の視点で惹き込まれた。「字幕なし」の不安が途中で消えたほど「ガン見」だった。ぜひ「DVD化」してほしい。ちゃんと「字幕」がついたDVDが欲しくなってしまった。

見直して、「アン・ホイ監督」の実話を基にしてるのを感じた。調べたらやはり殆ど「実話」。「21歳」の僕に実話など視界に入らなかったのだろう。「マギー・チャン」の役は、「アン・ホイ監督」自身だった。

「アン・ホイ監督」は『桃さんのしあわせ』の監督で、僕にも強烈な印象がある。「アン・ホイ監督」が「日本人」の母親と「中国人」の父親のハーフだと初めて知った。どんな幼少期を過ごしたかから、TVのディレクターになるまで、「満州」移民でやってきた日本人の母親と、中国人の父親がどうして結婚できたのか? 母親の実家が九州「湯布院」の近くで、母親と里帰りするシーンなど、『客途秋恨』が『桃さんのしあわせ』の監督の「自伝映画」と知ってビビった。殆ど「日本」で撮影した真実にもさらにビビってしまった。

日本人の母親が、中国に残留していじめられたエピソードはかなりすごく、「21歳」の僕にこの「重さ」は何も見えてなかった。幼少期の「アン・ホイ監督」は父親側の「爺さん」「婆さん」にかわいがられて育ち、「爺さん」「婆さん」が母親を『シンデレラ』みたいにいじめるのだが、母親が「日本人」でいじめられる理由が、幼い「アン・ホイ監督」には解からない。母親と不仲のまま大人になってしまう。「アン・ホイ監督」のような希少な体験をした人がいる現実に、忘れてはならない「歴史」を感じた。『客途秋恨』は絶対「DVD化」してほしい、後世に残すべき映画だと思った。




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「いつか見た映画 1991」51『プロヴァンス物語 マルセル…』
「いつか見た映画 1991」52『プロヴァンス物語 マルセル…』
「いつか見た映画 1991」53『客途秋恨』
「いつか見た映画 1991」54『ムーンリットナイト』
「いつか見た映画 1991」55『ダリ天才日記』
「いつか見た映画 1991」56『英国式庭園殺人事件』
「いつか見た映画 1991」57『グリフターズ 詐欺師たち』
「いつか見た映画 1991」58『メンフィス・ベル』
「いつか見た映画 1991」59『レナードの朝』
「いつか見た映画 1991」60『幕末純情伝』
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画像 2019年 7月