『アウトレイジ 最終章』 | やりすぎ限界映画入門

やりすぎ限界映画入門

ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『アウトレイジ 最終章』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2017年/日本映画/104分
監督:北野武
出演:ビートたけし/西田敏行/大森南朋/ピエール瀧/松重豊/大杉漣/塩見三省/白竜/名高達男/光石研/原田泰造/池内博之/津田寛治/金田時男/中村育二/岸部一徳

2017年 第33回 やりすぎ限界映画祭
2017年 ベスト10 第11位:『アウトレイジ 最終章』
やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『アウトレイジ 最終章』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:ビートたけし


やりすぎ限界男優賞:金田時男


やりすぎ限界男優賞:白竜


やりすぎ限界男優賞:大森南朋


やりすぎ限界男優賞:松重豊


[北野武監督第18作目]



2010年『アウトレイジ』を初めて見た時、まさか「3作目」まで行くとは思わなかった。『アウトレイジ ビヨンド』も大ヒット。全世界で『アウトレイジ』シリーズが、「みんな大好き」な映画にまで到達した。北野監督自身も「3部作」としてやりたかったかもしれないが、『アウトレイジ 最終章』は、世界中からも切望されたように見える。『ゴースト・イン・ザ・シェル』『沈黙 -サイレンス-』『ブレードランナー 2049』『ムーン ライト』の時代。『アウトレイジ』シリーズ「3部作」ここに完結。

[「復讐の連鎖」]



■「参ったで…
  ヤバいで お前
  お前 エライとこと
  揉めてもうたな
  張会長いうのは
  日本と韓国の両方の顔やからな
  おい お前がホテルで
  揉めたって言うてた日本人
  大友って言うてなかったか?」




『アウトレイジ ビヨンド』でマル暴の片岡を射殺した大友(ビートたけし)は、韓国、済州島で、政財界を裏で牛耳ってるフィクサーの張会長(金田時男)に匿われ、静かな生活をしてた。だが大友に「平和な暮らし」はなかった。済州島のシマに、とうとう「花菱会」がやってくる。



「暴力団を賛美した表現をしたことはなく、拳銃を使った人間は幸せになれないようなシナリオにしている」。北野監督が貫いてきたテーマの極限のくそリアリズムを、『アウトレイジ 最終章』にも見た。



「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」。「人を殺した人間」に「平和な暮らし」は、二度と絶対できないということだろう。「人を殺した人間」が「絶対助からない」「復讐の連鎖」に背筋が凍りついた。これが「人間」の世界の真実に見えた。

[「最初から自殺」]




張会長の言うことを聞いて日本に行かなかったら、大友は「長生き」できただろうか? 大友が自ら帰国を決意した「覚悟」に、「震撼」「驚愕」「絶句」した。




もし現実に、自分がこの状況にいたらどう考えるだろう? 僕は済州島にいれば、死なずに逃げ切れる可能性もあったと思う。もし僕がこの状況にいたら、僕は「死なずに逃げ切れる可能性」に懸けた。だが大友は、このまま済州島にいても、「次の花田がやってくる」と考えたのかもしれない。




大友が日本に帰った「決意」が、もはや「あえて」の「覚悟」にしか見えない。高の「仇討ち」の帰国が、「最初から自殺」に見えた。「人を殺した人間」が「絶対助からない」ことを誰よりも理解し、「死に場所」を日本に選んだようにしか見えなかった。

[「最期は死ねばいいから何でもできる」]




「出所パーティー」での大殺戮は「死ぬのが怖くない」人間にしかできない。一人殺しただけでも「恨み」を買い、「復讐」「仇討ち」される人間の世界で、あれだけ多人数を殺したら、どれだけ「復讐」されるか知れない。大友自身が「復讐」で帰国したのに、「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」のに、大友は花菱会に突っ込んだ。「最期は死ねばいいから何でもできる」という「死相」が大友に見えた。

[「復讐の連鎖」を終わらせた]



済州島にやってきた花田=「花菱会」は、大友に人生で犯してきた「大罪」を償わせるための、「仏様のお迎え」だったのかもしれない。




大友が「絶対助からない」と理解しながら、「最初から自殺」「最期は死ねばいいから何でもできる」とまで決断し、花菱会に突っ込んだ理由は「復讐」「仇討ち」。「高」だけでなく、「木村」の分まで「絶対許さなかった」。「自殺」しても惜しくないほど、「人間の恨み」が絶対消えない極限のくそリアリズムを見た。だからこの世から「戦争」がなくならない。



僕は「復讐」してはいけないと言いながら、もし現実に、僕が大友の状況にいたら? 「絶対助からない」と思い知らされるまで、済州島に「花菱会」=「仏様のお迎え」がやってきたら? 僕も「きれいごと」は言えないかもしれない。




大友は「1作目」の関内会長、「2作目」の布施会長を超えるほどの「悪」、西野と中田を殺さなかった。大友は西野と中田を殺すべきだっただろうか?




現実はもし西野と中田を殺しても、花菱会はなくならない。またすぐ「次」の関内会長、布施会長、西野会長が現れるだけ。




大友が西野と中田を殺せば、西野と中田の子分が大友だけでなく、張会長をも殺すかもしれない。大友は「自殺」して「復讐の連鎖」を終わらせた。大友の「自殺」は「犠牲心」。「ここで復讐を止める」北野監督の決意に見えた。『アウトレイジ』3部作最期の結末は、誰かが「復讐の連鎖」を断ち切らねば、この世の「戦争」が永遠に終わらないことを見せたようだった。




[Previous]
『座頭市』
『TAKESHIS'』
『監督・ばんざい!』[前][後]
『アキレスと亀』
『アウトレイジ』
『アウトレイジ ビヨンド』
『龍三と七人の子分たち』

画像 2019年 7月