![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/19/rocky-balboa-1976/75/ef/j/o0400056613626449401.jpg?caw=800)
■『007 慰めの報酬』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]
2008年/アメリカ=イギリス映画/107分
監督:マーク・フォースター
出演:ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/マチュー・アマルリック/ジュディ・デンチ/ジェフリー・ライト/ジェマ・アータートン/ジャンカルロ・ジャンニーニ
2009年 第25回 やりすぎ限界映画祭
■2009年 ベスト10 第3位:『007 慰めの報酬』
■やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞/やりすぎ限界審査員特別賞:『007 慰めの報酬』
[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。
■第2稿 2016年 4月22日 版
■『007 慰めの報酬』[前編]のつづき
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/80/d7/j/o0400023513626542614.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/df/aa/j/o0400023513626542613.jpg?caw=800)
■「若い時は簡単に
善と悪の区別がついた
だが年をとると それが難しい
誰が善玉で 誰が悪玉か
ヴェスパーは かわいそうに…
君を愛していた」
「だが僕を裏切った」
「君に命を捧げた」
MI6が正しい部分、CIAが正しい部分、「組織」が正しい部分。年を取ると冷静に見えるのだと推測。「間違ってる」とわかってることでも「職務」で実行しなければならない時が日常にもある。MI6の「間違ってる」ことを「職務」で強行しようとしたボンドをハメたのかもしれない。「灰色」のバランスを保つのがマティス「職務」だったのか? 完全な「組織寄り」でないことを理解したボンドがマティスを頼る。「謝罪」の気持ちを見せようとしたのかもしれない。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/79/19/j/o0400023513626545411.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/e9/7c/j/o0400023513626545412.jpg?caw=800)
■「こんな自分に腹が立つわ」
フィールズ登場。「会った直後に瞬間セックス」が「絶対ありえない」非現実のように復活。だがこれはあまりにハードな「難解」な話の休憩に、観客へのサービスとして見せてくれたのだと思えた。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/b0/f6/j/o0400023513626547341.jpg?caw=800)
■「マティスから かねがね噂を
全警察を自由にお使い下さい」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/4e/6e/j/o0400023513626547342.jpg?caw=800)
■「 “マティス” は偽名か?」
「ああ」
「へたな偽名だな」
「互いを許そう」
「僕が守ってたら…」
「ヴェスパー…
君に全てを捧げた
許してやれ
そして自分も許せ」
“ティエラ計画” を知ったボンドを、「組織」がCIAとボリビア警察総監のカルロス大佐を利用してはめる。カルロス大佐を友人と思っていたマティスが殺される。マティスが殺されたのはボンドに協力して「組織」を裏切ったからか、本当に白だったからかは謎のままだ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/32/47/j/o0400023513626547340.jpg?caw=800)
■「 “マティスの死体を
見つけた警官を-”
“ボンドが射殺した” と
目撃者はいません」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/ac/3e/j/o0400023513626547343.jpg?caw=800)
■「M 我々の認識は変わった
“グリーンと我々の利益は-”
“相反さない” とね」
■「よし
グリーンを悪人と仮定しよう
昨今 取り引きできる相手は
悪人だけだ
ロシアは石油を売らず 米・中は
今ある石油を取り合ってる
善悪は もはや関係ない
やむを得ぬ国策だ
ボンドは もう抑えが利かん
敵に寝返ったら?
呼び戻せ
CIAに消されるぞ」
「組織」と結託してボンドをハメたCIA。アメリカをも抱きこむ「組織」の力に追い込まれるMI6。マティス殺害の容疑者にされるボンド。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/94/01/j/o0400023513626550109.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/b4/08/j/o0400023513626550110.jpg?caw=800)
■「グリーンじゃないの
メドラーノ将軍よ」
“ティエラ計画” でメドラーノ将軍から買収する砂漠に「石油」ではない「水」を発見するボンドとカミーユ。“ティエラ計画” の全貌が見える。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/70/2f/j/o0400023513626550111.jpg?caw=800)
お互いの過去を知り合う二人。ボンドとカミーユの哀しみが共感する。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/f8/5f/j/o0400023513626551527.jpg?caw=800)
■「米国の石油が欲しくて?」
「バカな」
「石油はない」
「信頼の問題よ
“復讐は念頭にない” と」
「任務一筋です」
「そう?
怒りで自分を見失って-
相手構わず手を下している
敵・味方を区別できない者は
去って」
■「今 “石油はない” と言った?
肺まで石油が」
「グリーンだ」
「でも なぜ彼が?」
「それは…」
「なぜ こんなことに?」
アメリカばかりか石油の採掘権が欲しいイギリスも「組織」の “ティエラ計画” に協力する流れとなる。フィールズの「肺まで石油」の死体は、ボンドが「組織」の捜査を止めねば「イギリスの採掘権剥奪」という脅しの演出、ボンドを「何人 死なせた?」と陥れるための演出、そして「石油」を見せて「水」を隠すための演出と推測。「全裸石油」の死体は意味のない「虚仮威し」だった『007 ゴールドフィンガー』の「全裸金粉」の死体のオマージュに見える。だが理由の必然性が極限のくそリアリズムでもはや怖過ぎ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/f6/69/j/o0400023513626551526.jpg?caw=800)
■「事件を追います」
「逮捕状が出て 命も危ないのよ」
「誰の指令かな」
■「彼の後を追って」
「CIAが…」
「CIAが何よ 彼は部下よ
私は彼を信頼してるの」
「調査が済むまで停職」。ライセンスを剥奪されるボンド。だがボンドを信頼し命令違反するMの本心に涙が出る。この映画の見せ場だ。正義を貫くMとボンドの信念に熱いものが込み上げる。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/c0/c8/j/o0400023513626552970.jpg?caw=800)
■「グリーンがクーデターの資金を-
メドラーノに手渡す
砂漠のラ・デュナス・ホテルだ」
■「奴に何を話したんだ?」
「ガセネタさ」
CIAを裏切るライターの信念とボンドへの友情はこの映画の見せ場だ。「ガセネタさ」の友情と男樹に熱いものが込み上げる。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/ad/e3/j/o0400023513626552971.jpg?caw=800)
ラ・デュナス・ホテルでメドラーノ将軍とカルロス大佐がグルだったことが明らかになる。マティスもハメられた一人だった。ヴェスパーとマティス二人分の恨みで、ボンドの怒りは極限に到達する。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/87/28/j/o0400023513626554395.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/57/81/j/o0400023513626554394.jpg?caw=800)
■「どうした」
「点検よ」
カミーユの銃を組み立てる所作の芝居がヤバい。メドラーノ将軍との格闘も含めて元諜報部員に「見える」。もはや “ボンド・ガール” と思えない。
[シリーズ極限 “すげぇ切れ方” ]
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/aa/a2/j/o0400023513626557509.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/22/48/j/o0400023513626557507.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/ac/70/j/o0400023513626557510.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/ae/1b/j/o0400023513626557508.jpg?caw=800)
■「マティスを覚えてるか?」
この映画の全てがこの1シーンに向かって収斂されていた。マーク・フォースター監督はこの1シーンに命を懸けたように見える。ボンドの極限の怒りが爆発。『007』シリーズ極限の “すげぇ切れ方”。「本物のスパイ」なんか知らないが「本物のスパイ」にしか見えない。ダニエル・クレイグのカルロス大佐射殺の凄まじき速さに漏らした。ラ・デュナス・ホテル爆発の壮絶さは『007 消されたライセンス』を超える。
[大失敗作]
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/19/rocky-balboa-1976/35/a7/j/o0400023513626453677.jpg?caw=800)
以上のことが殆ど全部台詞でしか描かれていないのは『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』と同じ「大失敗」だ。だが『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』との大きな違いは、俳優の芝居のヤバさで「台詞だけ」を「全部想像させた」こと。
本来映画として全部シーンを見せるべきだが、これを全部見せたら映画が何本になるかわからない。もともと無理な話を無理矢理107分に凝縮したのは壮絶。瞬きしたら話が理解できない密度、1回見ただけで話が理解できない密度は限界過ぎだ。「大失敗作」だろう。だがヤバい。
[映画で描かれてないこと]
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/22/rocky-balboa-1976/9c/01/j/o0400023513626599457.jpg?caw=800)
■「組織」がヴェスパーの “彼氏” を拉致したエピソード。
■「組織」とヴェスパーのボンドの命取り引きのエピソード。
■「組織」とマティスの繋がりのエピソード。
■マティスとヴェスパーの繋がりのエピソード。
■カミーユがグリーンに殺されないエピソード。
■ホワイトの行方のエピソード。
■「組織」の「メッセージ」のエピソード。
■「組織」のボンドが「寝返ってた」と言うエピソード。
[「組織」=「極限のくそリアリズム版スペクター」か?]
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/f3/8d/j/o0400023513626559663.jpg?caw=800)
■「君の質問に答え-
組織(クァンタム)のことを話した」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/c7/25/j/o0400023513626559662.jpg?caw=800)
■「名前は?」
「コリーヌ」
ヴェスパーの “彼氏” を逮捕したボンド。カナダの情報がどこから「組織」に漏れてたか判明する。“トスカ” のシーンに繋がる。
以上のこと全てを総合して「組織」=「極限のくそリアリズム版スペクター」の可能性を想像した。話は途中のまま完全に「24作目につづく」状態。とんでもないやりすぎ限界映画だ。
[復活した「ガン・バレル」]
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/6e/f7/j/o0400023513626560693.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/03/46/j/o0400023513626560694.jpg?caw=800)
『007 カジノ・ロワイヤル』で消えた「ガン・バレル」がエンディングで復活。『007』シリーズの「伝統」が戻る。だが本作から「ガン・バレル」はオープニングではなくエンディングへと変化する。
[オルガ・キュリレンコ=ザ・ボンバー・ダイナマイト]
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/4c/f1/j/o0400023513626561777.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/22/rocky-balboa-1976/c9/53/j/o0400023513626596150.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/74/6c/j/o0400023513626561779.jpg?caw=800)
極限のくそリアリズムへ変化してく “ボンド・ガール”。オルガ・キュリレンコの元ボリビア諜報部員の芝居はかなり限界。メドラーノ将軍をガラスで刺すシーンに熱いものが込み上げた。ボンドと寝ないなどもはや信じられない。壮絶 “ダイナマイト・ボンバー・ギャル” に震撼せよ。
[ジェマ・アータートン=ザ・ボンバー・ダイナマイト]
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/e7/ac/j/o0400023513626563127.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/10/bf/j/o0400023513626563125.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160422/21/rocky-balboa-1976/0d/ed/j/o0400023513626563126.jpg?caw=800)
本編とオルガ・キュリレンコがやりすぎたため、マーク・フォースター監督がおまけで見せてくれたのだろう。限界 “ダイナマイト・ボンバー・ギャル” のジェマ・アータートンの肢体こそ、この映画の本物の「慰めの報酬」だった。
■『007 ドクター・ノオ』
■『007 ロシアより愛をこめて』
■『007 ゴールドフィンガー』
■『007 サンダーボール作戦』
■『007は二度死ぬ』
■『女王陛下の007』
■『007 ダイヤモンドは永遠に』
■『007 死ぬのは奴らだ』
■『007 黄金銃を持つ男』
■『007 私を愛したスパイ』
■『007 ムーンレイカー』[前][後]
■『007 ユア・アイズ・オンリー』
■『007 オクトパシー』
■『007 美しき獲物たち』
■『007 リビング・デイライツ』[前][後]
■『007 消されたライセンス』[前][後]
■『007 ゴールデンアイ』
■『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』
■『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』
■『007 ダイ・アナザー・デイ』[前][後]
■『007 カジノ・ロワイヤル』[前][後]
■『007 慰めの報酬』[前][後]
■『007 スカイフォール』[前][後]
■『007 スペクター』
■『007』始末記①「シリーズ誕生50周年記念」序文
■『007』始末記②「作品」ベスト10
■『007』始末記③「ジェームズ・ボンド」ベスト6
■『007』始末記④「ボンド・ガール」ベスト10[前編]
■『007』始末記⑤「ボンド・ガール」ベスト10[後編]
画像 2016年 4月