『007 スカイフォール』[前編] | やりすぎ限界映画入門

やりすぎ限界映画入門

ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」

やりすぎ限界映画入門
■『007 スカイフォール』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2012年/イギリス=アメリカ映画/143分
監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ/ハビエル・バルデム/レイフ・ファインズ/ナオミ・ハリス/ベレニス・マーロウ/ベン・ウィショー/ジュディ・デンチ

2012年 第28回 やりすぎ限界映画祭
2012年 ベスト10 第3位:『007 スカイフォール』
やりすぎ限界グランプリ/やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『007 スカイフォール』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。


やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界男優賞:ダニエル・クレイグ

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界男優賞:ハビエル・バルデム

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界男優賞:レイフ・ファインズ

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界女優賞:ジュディ・デンチ

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界女優賞:ベレニス・マーロウ


■第4稿 2018年 5月31日 版

[シリーズ第23作目]




「『007』シリーズ誕生50周年記念作品」第23作目『007 スカイフォール』。1作目『007 ドクター・ノオ』誕生から50年の時が流れた。1代目ショーン・コネリーから6代目ダニエル・クレイグへ。『007』50年の歴史を振り返るとその時代の一番重要な価値観が見える。「ジェームズ・ボンド」=「バカ映画」でスタートしたシリーズが「実在のスパイが実際にどんな人間か?」を追究する時代へ到達した。

4代目がリアリズムに挑戦して失敗したほど5代目までは「バカ映画」の要素が強かった。6代目から豹変したギャグも秘密兵器もない『007』にファンは戸惑った。僕も『007 カジノ・ロワイヤル』を「これは『007』ではない」と思った。だが「『007』シリーズ誕生50周年記念作品」の『007 スカイフォール』は極限のくそリアリズムで「過去の伝統との融合」を成し遂げる。「伝統」の「ジェームズ・ボンド」が蘇る。

また『007 スカイフォール』は『007 ゴールデンアイ』の「極限のくそリアリズム版リメイク」に見える。『007 ゴールデンアイ』に足りなかった「実在のスパイが実際にどんな人間か?」の “本気” の答えが何かを叩きつけた。

[シリーズ最高傑作]




新シリーズ第3作目。『007 慰めの報酬』の「完全続編映画」から、いよいよ「極限のくそリアリズム版スペクター」の登場を期待して予想が外れた。今回は全然違う話。だが「『007』シリーズ誕生50周年記念作品」で過去の「伝統」が帰ってくる。「Q」と「秘密兵器」の復活。「M」と「マネーペニー」の誕生秘話が描かれる。今思うとこれは『007 カジノ・ロワイヤル』から完成してた筋書きで、1作目「フィリックス・ライター」との出逢いから順番に描かれる予定がすでに決まってたのかもしれない。

「狼がきた」と何回も嘘を言い誰も信じなくなる童話。極限のくそリアリズムの前に消えた「秘密兵器」が当たり前となり、もう誰も「秘密兵器」は出てこないと思い込んだ。その勝手な思い込みで危うく大きい方を漏らす寸前に追いつめられた。思えば旧シリーズの展開も1作目と2作目は「スペクターの話」3作目は「違う話」。そして「秘密兵器」の初登場が2作目「アストンマーチンDB5」の初登場が3作目だ。「Q科」という台詞。「『007』シリーズ誕生50周年記念作品」…。全く予想できなかった。極限のくそリアリズム「過去の伝統との融合」に完全にやられた。

また『007 スカイフォール』はいくつかの社会問題のテーマを描く。『007』が1本の映画として世に一石を投じるなどもはや限界。この信じられない変化に完全に漏らした。真実の「シリーズ最高傑作」だ。この極限のやりすぎ限界映画を漏らさずに見れるかを問いたい。

[職務を果たしただけ]

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界映画入門

■「あなたを失うか
  潜入した部下を失うか?
  それを考えた上の判断よ」


冒頭で狙撃されたボンドに漏らした。「一人の命より職員全員の命」というMの命令。「職務を果たしただけ」という文明社会の正論。現代社会で「職務」に被害を受けてない人間はいない。僕も日常でかなり痛い目に遭ってる。『007 スカイフォール』は誰にでも共感できる人間社会の歪みに切り込む。

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界映画入門

Mの「職務」によって「自殺」を強要された元00諜報員シルヴァの極限のくそリアリズム。シアン化水素で融けた歯に震撼。これは実話を基にしてる。1987年の大韓航空機爆破事件で李京雨が同じ方法で自殺した。

[自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる]

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界映画入門

■「さあ 俺と一緒に自由になろう
  同じ弾丸で
  撃て」


どんなに科学が発達しようとこの世が人間社会であることを痛感した。「職務」が正論であろうと「職務」で死んでる人間は後を絶たない。「正義」が場合によって判断が難しくなる現実を『007 スカイフォール』に見た。「人間の恨みは消えない」。戦争を含めたあらゆる事件の根源が「人間の感情」であることを改めて痛感させられる。

シルヴァがMに銃を握らせ「職務」のための「自殺」を強要する。あの「笑い」。「おまえ自分で言ったこと俺にやって見せてくれ」という魂の叫びを見た。人間は絶対に「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」。他人事で済まない誰にでも起こり得る極限恐怖の現実。おしっこは全部出尽くした。

[現代にスパイは必要か?]

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界映画入門

■「スパイ活動の黄金時代は
  過去のものです
  人手で情報を集める?
  そういう古い考え方が
  人命への軽視を招いて…」


■「我々の無用論の前に お答えを
  ご自分が安全だと確信が?」


「現代にスパイは必要か?」という限界テーマ。これは現実での『007』シリーズ「打ち切り」の意味も含んでる。「実在のスパイが実際にどんな人間か?」を、極限のくそリアリズムで突きつめるとここまで到達する。「打ち切り」か「存続」か。時代の流れを考慮し、本当に考えねばならないテーマと対峙するスタッフ達の “本気” が映画に見えた。

[人間とは?]

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界映画入門

■「現場経験は?」
 「現場を知らなくても分かるさ」


「復帰テスト」に「不合格」するボンドが面白い。ギャレス・マロリーの「情に流されてる」の突っ込みにMが「職務にある限り 部下は私が選ぶわ」と反抗。不合格のボンドをあえて起用する。現代の社会問題である人間同士のコミュニケーション。人間同士が対峙する現場ではマニュアルで予測し切れない事態しか起きない。「スパイ無用論」を否定する『007 スカイフォール』の具体例に震撼。人間の持つ理論で説明し切れない不思議な「勘」や「能力」の一例を見せる。

やりすぎ限界映画入門
やりすぎ限界映画入門

80歳で3度目のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんなどのように、ボンドとMに「歳を取った人間の経験」から生まれる理論で説明し切れない不思議な「勘」や「能力」の説得力を見た。消火器を撃って視界を曇らせる一瞬の判断、場慣れした援護射撃に完全に漏らした。「スパイ無用論」を豪語して女性大臣が「不合格」のスパイに命を助けられる限界のオチ。もはや限界領域の「スパイ必要論」を漏らさずに見ることはできない。

『007 スカイフォール』[後編] につづく


『007 ドクター・ノオ』
『007 ロシアより愛をこめて』
『007 ゴールドフィンガー』
『007 サンダーボール作戦』
『007は二度死ぬ』
『女王陛下の007』
『007 ダイヤモンドは永遠に』
『007 死ぬのは奴らだ』
『007 黄金銃を持つ男』
『007 私を愛したスパイ』
『007 ムーンレイカー』[前][後]
『007 ユア・アイズ・オンリー』
『007 オクトパシー』
『007 美しき獲物たち』
『007 リビング・デイライツ』[前][後]
『007 消されたライセンス』[前][後]
『007 ゴールデンアイ』
『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』
『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』
『007 ダイ・アナザー・デイ』[前][後]
『007 カジノ・ロワイヤル』[前][後]
『007 慰めの報酬』[前][後]
『007 スカイフォール』[前][後]
『007 スペクター』

『007』始末記①「シリーズ誕生50周年記念」序文
『007』始末記②「作品」ベスト10
『007』始末記③「ジェームズ・ボンド」ベスト6
『007』始末記④「ボンド・ガール」ベスト10[前編]
『007』始末記⑤「ボンド・ガール」ベスト10[後編]

画像 2013年 9月