『007 ロシアより愛をこめて』 | やりすぎ限界映画入門

やりすぎ限界映画入門

ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」



■『007 ロシアより愛をこめて』(『007危機一発』)
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

1963年/イギリス映画/115分
監督:テレンス・ヤング
出演:ショーン・コネリー/ダニエラ・ビアンキ/ロバート・ショウ/ロッテ・レーニャ


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界女優賞:ダニエラ・ビアンキ


やりすぎ限界男優賞:ショーン・コネリー


やりすぎ限界女優賞:ロッテ・レーニャ


■第4稿 2018年 5月26日 版

[シリーズ第2作目]




第2作目『007 ロシアより愛をこめて』を初めて見た高校生の時、あまりに地味な印象で記憶に残らなかった。「ど派手」なアクションが当たり前だった80年代。高校生の僕は「秘密兵器」が「便利なケース」だけでは納得できなかった。だがこの「あまりに地味な印象」こそ、実は「現代の視点」で通用するリアリズムなのだと今理解できる。今見直して驚くのは『007 スカイフォール』の「地味」な秘密兵器が、『007 ロシアより愛をこめて』のスタイルに一番近いことだ。

[「名作」と言われる理由]




『007 ロシアより愛をこめて』はシリーズ初の「シリアス映画」だ。「『007』ギャグかシリアスか模索時代」で「シリアス映画」は2作目『007 ロシアより愛をこめて』と6作目『女王陛下の007』の2本。残り5本は全部「ギャグ映画」となる。映画ファンから『007 ロシアより愛をこめて』が「名作」と言われる理由は、初期の「『007』ギャグかシリアスか模索時代」で、1代目ショーン・コネリー唯一の「シリアス映画」だからかもしれない。多くの人間を共感させる「リアリズム」の普遍性を『007 ロシアより愛をこめて』に見た。

[シリーズ初の「シリアス映画」]




列車の死闘からボートの大爆発まで『007 ロシアより愛をこめて』は「見せ場の作り方」が現代のアクション映画と殆ど変わらない。50年前に完成してた「アクション映画の作り方」にまず驚く。また『007 ドクター・ノオ』と同じテレンス・ヤング監督の「ハニー・ライダー」から、一転したシリアスさにも驚愕。ボンドを恨む “スペクター” が刺客を送る発想に現実感がある。現代の殺陣と比べてスピードが遅い列車の死闘も、当時は衝撃的だった様子が伝わる。ロバート・ショウが「便利なケース」を開ける緊迫感は「現代の視点」でも迫力があった。

60年代当時、「ギャグ」がない1代目唯一の「シリアス映画」はかなり強烈に見えただろう。『007 ロシアより愛をこめて』は2代目ジョージ・レーゼンビー以降の「シリアス映画」作風の「原点」となった。1代目ショーン・コネリー全6作品のベスト1は間違いなく『007 ロシアより愛をこめて』。「シリアス映画」の「原点回帰」において、『007 ロシアより愛をこめて』が『007 スカイフォール』まで影響を与えるシリーズの基礎を築いた。

[「秘密兵器」]




『007』シリーズ「伝統」の「秘密兵器」が2作目で初登場する。実にシンプルな「便利なケース」。秘密兵器が「ど派手」なギャグにエスカレートしてく以後とは大違いの「地味」さ。だが「本当に作れそう」なこのケースにはリアリズムがある。

「地味」なケースで恐るべき緊迫感を出した、「50年前」の列車の死闘の駆け引きに圧倒された。高校生の時「記憶に残らなかった」駆け引きに現代の視点で引き込まれた。極限のくそリアリズムが要求された『007 スカイフォール』で到達した秘密兵器が、『007 ロシアより愛をこめて』の「便利なケース」レベル止まりである真実に漏らした。

[ヘリコプター爆発]




『007 スカイフォール』『ダイ・ハード』『ランボー 怒りの脱出』…。「アクション映画はヘリコプターが爆発しなければならない」。アンディ・シダリス監督は『売れる映画の五箇条』の一つに「ヘリコプターを爆破せよ」と論じてる。どの映画が初めてヘリコプターを爆発したかは知らないが、50年前『007 ロシアより愛をこめて』でヘリコプターはすでに爆発してた。これは現代の視点でも凄まじい。ダニエラ・ビアンキを抱きしめ、墜落したヘリコプターがもう一度大爆発する「間」はかなり芸術的だ。ボートの大爆発も含め、50年前なのにかなり大迫力だった。

[シリーズ最高の「オープニング・タイトル」]



『007』全23作品で僕が一番美しいと思う「オープニング・タイトル」は『007 ロシアより愛をこめて』。“ロシアより愛をこめてのテーマ” と “ジェームズ・ボンドのテーマ” 混ざり合うジョン・バリーの楽曲がとにかく素晴らしい。僕にはシリーズ最高のオープニング・テーマに聞こえる。女の体に字を映写するアイデアから色調、どエロ加減までもはや完璧。この「オープニング・タイトル」の美しさは『007 スカイフォール』も超えられない。

[現代の視点でありえないもの]




■ボンドに挑む婆さん

スペクター№3(ロッテ・レーニャ)がナイフを仕込んだ靴でボンドに挑む。『ダークナイト』でもジョーカーが使用した靴だが、ナイフ部分には毒が塗ってあるのだろう。だが高齢の婆さんがボンドに挑むのはあまりに無茶すぎた。自殺かもしれないが見てる方が同情する「絶対ありえない」限界シーンだ。

[ダニエラ・ビアンキ=ザ・ボンバー・ダイナマイト]





ローラに似てるダニエラ・ビアンキはウルスラ・アンドレスに負けない壮絶 “ダイナマイト・ボンバー・ギャル”。「ローラのお姉さん」と言って騙せる似方。この真実は、現代のローラが50年前から “ダイナマイト・ボンバー・ギャル” であった証明でもある。ダニエラ・ビアンキも “ボンド・ガール” の史上間違いなく上位に君臨する “ダイナマイト・ボンバー・ギャル” だ。この真実を確かめてほしい。




『007 ドクター・ノオ』
『007 ロシアより愛をこめて』
『007 ゴールドフィンガー』
『007 サンダーボール作戦』
『007は二度死ぬ』
『女王陛下の007』
『007 ダイヤモンドは永遠に』
『007 死ぬのは奴らだ』
『007 黄金銃を持つ男』
『007 私を愛したスパイ』
『007 ムーンレイカー』[前][後]
『007 ユア・アイズ・オンリー』
『007 オクトパシー』
『007 美しき獲物たち』
『007 リビング・デイライツ』[前][後]
『007 消されたライセンス』[前][後]
『007 ゴールデンアイ』
『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』
『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』
『007 ダイ・アナザー・デイ』[前][後]
『007 カジノ・ロワイヤル』[前][後]
『007 慰めの報酬』[前][後]
『007 スカイフォール』[前][後]
『007 スペクター』

『007』始末記①「シリーズ誕生50周年記念」序文
『007』始末記②「作品」ベスト10
『007』始末記③「ジェームズ・ボンド」ベスト6
『007』始末記④「ボンド・ガール」ベスト10[前編]
『007』始末記⑤「ボンド・ガール」ベスト10[後編]

画像 2015年 4月