イサベル・デ・トレスの山から降りて来ました。前々回の記事に山頂から見たプエルト・プラタ港をお見せしましたが、まずはそこに行ってみることにしました。
ちょうどロープウェイの従業員が一人退勤するところで、通勤に使っているバス停が港の方向にあるとのこと。港の近くまで私を案内してくれました。ロープウェイの駅から約20分、別れる時に「ここを真っすぐ行けばいい」と指した方向に数分歩くと、港に着きました。
MSCポエジア号が停泊していました。やはり近くで見ると巨大さが分かります。上から見えたもう一隻のノルウェジアン・アンコール号は既に出航したようです。
次にサン・フェリペ砦に向かうと、手前に「PUERTO PLATA」の文字塔(と呼ぶのか?)があり、その遥か向こうにクルーズ船が。
ズームアップして撮った写真を更に拡大して、サイトに出ているノルウェジアン・アンコール号の写真と比べてみると、船体の柄が一致しているようです。
やはり出航していました。次はどこに向かうのかしら。
サン・フェリペ砦の敷地内にあるプエルト・プラタ円形劇場 (Anfiteatro de Puerto Plata)。写真の左上にステージの屋根アーチがちょこっとだけ見えています。
そしてこれがサン・フェリペ砦 (Fortaleza San Felipe)。入館料100ペソ(約260円)。 ウィキペディア(英語版)によると、1577年の完成で、プエルト・プラタで唯一の16世紀の遺跡だとのこと。
クルーズ船――MSCポエジア号に違いありません――の乗客がたくさん上陸して訪れているようで、中国語で会話する中高年の夫婦らしいカップルや、守衛とのツーショット撮影を私に頼む中国人女性(←どこの人か聞きました)もいます。
砦に構える古びた大砲とMSCポエジア号。
沖の方に目を向けると、小さな見張り塔が見えます。
では、街の中心へと足を進めます。
砦から10分少々で、「傘通り(英 Umbrella Street、西 Calle de las Sombrillas)」で知られるサン・フェリペ通り (Calle San Felipe) の一角(ほんの1ブロック、数十メートルです)に来ました。このように天井にカラフルな傘を並べた小路は、今や世界の色々な所にあるようです。
虹色のパラソルです。小路の両側にはパステルカラーの小さいカフェや軽食屋が並んでいます。
ちなみに、パラソル (parasol) はもともとスペイン語で「太陽 (sol) を止める (para)」という意味です。「キタソル(quitasol『太陽を除(の)ける』)」、「ソンブリージャ(sombrilla『陰になるもの』)」とも呼ばれています。
更に言うと、「傘」はスペイン語で「パラグアス (paraguas)」と言います。「水 (agua)(すなわち雨)を止める (parar)」から来ています。
その1ブロック先には、今度は一面をショッキング・ピンクに塗った「ブランカさんの小径(こみち)(Paseo de Doña Blanca)」という一角――こちらも数十メートル――があります。
プエルト・プラタの観光案内サイトによると、18世紀末、この街の観光開発の先駆者であったビアンカ・フランチェスチーニ (Bianca Franceschini) がこの地に来たことを記念して造られたのだそうな。この名はイタリア語ですね。それをスペイン語風に言うと「ブランカ」になります。
ピンク色に塗られた自転車が壁に飾られていました。
しかし、なぜピンク? ここまでド派手だと、私にはけばけばしく感じるのだけれども、ラテンの人々にとっては「ラブラブ」の色ということなんでしょうか。実際、カップルが記念撮影するスポットとして知られているようです。
いずれにしても、私が長く居る場所ではなさそうです。ちょっと刺激が強すぎて、目が疲れるかな。
更に1ブロックの所(この辺りは名所が集中しています)に、街の中央公園 (Parque Central) たる独立公園 (Parque Independencia) があります。中央の立派な四阿(あずまや)と大聖堂――レンズがやや広角なので、どちらもピサの斜塔みたいに傾いていますが、実際には直立しています――が、いかにも中南米の町の中央広場を象徴しているかのように、私には思われます。
広場を取り囲む町並みも、実にコロニアル風。何と言ってもこの色調が、カリブ海諸国(この町はカリブ海には面していませんが)の異国情緒を盛り上げてくれます。
こちらがその使徒サン・フェリペ大聖堂 (Catedral de San Felipe Apóstol)。中南米には真っ白な大聖堂が多いですが、このようにベージュの外観も優しくていいですね。
内装も清楚で優しい感じがします。
しかし全体的に優しい色遣いにしてこのステンドグラスの鮮やかさは、ハッと目が覚めるようです。
喉が渇ききっていたので、大聖堂を出た所に小さな露店の飲み物売りがいたのを見つけて水を買いました。500ミリリットルを買おうとしたら、60ペソ(約150円)と。えっ、それって高すぎない? と一瞬思ったら、「これはおまけ」と1リットルのペットボトルを付けてくれます。確かにこれで相応の値段になったけれども、でも、この人の良さそうで貧乏そうなおばあちゃん、いいの、そんなんで、と逆に同情心が私に湧いてくるのでした。この様子を見るに、たぶん、一日に何本も売れていないんだろうな。
この「おまけ」に、おばあちゃんの誠実な姿勢と、売れ残りを抱えてどうすることもできない切なさを感じたのでした。
夕方になりました。宿泊しているソスアに戻る前の最後の訪問先は、中央広場から2ブロック行ったところにあるドミニカ琥珀博物館 (Museo del Ámbar Dominicano)。入館料120ペソ(約300円)。サントドミンゴにも小さな琥珀博物館がありましたが、こちらは一つの邸宅をそのまま博物館にした感じで、やや大きめです。
閉館間際だったのですが、受付にいた男性に大急ぎで最初の方の展示について説明してもらい、途中で先の団体と合流したので、後は彼らと一緒に説明を(中途半端に)聞きながら、展示品を見ていきます。
原石から加工品まで。
コオロギ (cricket) の入った琥珀だそうです(そのようには見えませんが)。前の記事にも書きましたが、こういう、中に何かの入ったものは価値が上がります。
なんと、これにはちっちゃなトカゲが入っています! いかに気泡をたくさん含むとしても、こういうのは価値が高いでしょう。
少なくとも私が琥珀コレクターだったら高い値を付けます。
色のバリエーションを示す展示。
「哺乳類の毛(の入った琥珀)」と説明プレート。
なんでこういったものが琥珀に閉じ込められてしまうのか不思議です。
琥珀は宝石の一種とみなされているようです。しかし他の宝石と決定的に違うところは、他の宝石では純度が物を言い価値を上げるのに対して、琥珀では、このように、いわゆる「不純物」が、その内包物によって価値をむしろ上げることです。
琥珀は、独特の価値を持つ宝石です。そもそもその化学組成にしても、有機物ですしね。
では日も暮れそうなので、宿泊先のソスアに帰ります。
現地の交通事情も少々分かってきたところで、ソスアへの20キロ余りには、観光客が使うタクシー(2,000ペソ=約5,100円)ではなく庶民が使う乗合タクシーを使いました。乗り場は市の総合病院脇。
乗合タクシーの場合、助手席には通常2人乗せているようですが、安全も考えて、私はその2人分の助手席を独占させてもらいました。従って料金も2人分を払うことに。
で、幾らだったと思います?
その2人分で、何と200ペソ(約510円)なんですよ! つまり、1人分なら100ペソ。
運賃が行きの20分の1とは! 観光客相手の乗り物とローカルの乗り物との価格設定の違いに驚くばかりです。
タクシーはソスアの長距離バス発着所の向かいまで来てくれたので、そこで降ろしてもらいました。ここから宿までは歩いて3分です。
……で、気がかりなことがまた強く意識されてきました。
失くした部屋の鍵!