ケニア生活も終わりに近づいたところで、当地のコロナ禍もとりあえずは落ち着いた状況を呈しています。
かくなる上は、仕事の追い込みで忙しいながらも、少しでも国内旅行に時間を割きたいところです。
1月終わりのナクル旅行に引き続き、2週間後の2月11日から13日にかけての2泊3日で、今度はナクルへの途中にあるけれどもその時の旅行ではスルーしていた、しかし野生動物や野鳥の宝庫であるナイバシャ湖 (Lake Naivasha) に行くことにしました。
今回は金曜日に一日の休みを取らず、その代わり仕事を2時間ほど早く切り上げて、午後3時に出発することにしました。2時間の早退とは言っても、在宅勤務をしていて自宅から出発するので、あまり「早退」したという気分ではありませんが。
前回のナクル旅行と同じレンタカー会社で運転手付きの車を手配しました。車種はトヨタのハリアー。
今回の運転手はケヴィンという名の、あまり英語が達者ではない、比較的無口な青年でした。一応、用は足りる程度の英語は通じるものの、微妙なニュアンスと言うか、お互いが意図している細かい意思伝達が時にすれ違ったりするような感じでした。
しかし根は真面目な人間のようで、ぼそぼそとながらも、彼が私に良かれと思う事を、時に提案してくれたりします。「私の最大の関心事は鳥だ」と言うと、私の興味のない鳥を見つけても、「そこに鳥がいる!」と教えてくれたりする、そんな実直な青年です。
さて、そのナイバシャ旅行。
グーグルマップなどで宿泊施設を調べて、ここぞと決めたのが、エルザミア・ロッジ (Elsamere Lodge) です。この宿は、観光サイトや宿泊紹介サイトでは、あまり表立って紹介されていないようです。
しかし下に詳しく書くように、料金のレベルから言っても、宿泊施設の背景からしても、私としては、ここに勝るところはないと思っています。
特にその「背景」が、私をしてこの宿に決定せしめたのでした。
ここは、ノンフィクション『野生のエルザ (Born Free)』の著者、ジョイ・アダムソンが住んでいた家なのです。
私は、この本が原作となった映画を小学生の時にテレビで見て感動したことを、今でも覚えています。
その記憶を少しでも辿(たど)ることができれば、というのが、この宿を選んだ最大の理由です。
夕方、ナイロビからケヴィンに運転してもらって約2時間。町の中心からは20キロ以上離れた湖岸にあるエルザミア・ロッジに到着です。
私が受付の女性に最初に言ったことは、「今から50年近く前、私は『野生のエルザ』を子供の頃に見て感動した。今でも、エルザが3頭の仔を連れて現れて来たラストシーンを覚えている」
ダイニングルームとキッチンのある、メインハウス。アダムソン夫妻が住んでいた時もダイニングルームだったそうです。ご覧のように改装してありますが、建物自体は当時のものを使っているそうです。
そのダイニングルームには、彼女の描いた現地人の肖像画が幾つも並んでいました。また写真のように、『野生のエルザ』紹介パネルが掲げられています。
肖像画についてはナイロビ国立博物館にもあり、そこに行った時に展示品を撮りましたので、そちらの記事をご覧になっていただければ、どんな絵かお分かりになります。
ダイニングルームの奥の部屋では、45分の解説ビデオを見ることができるそうです。『野生のエルザ』の作品についてなのか、彼女の生涯についてなのかは分かりませんが。最初に「見ますか?」と聞かれて「後で」と答えた私は、自然観察に気を取られてそのまま忘れて見過ごしてしまいました。
アダムソン夫妻の乗っていたジープが屋外に展示されています。このように、この宿泊施設は、ちょっとした資料館でもあります。
それだけでなく、ここには「エルザミア保護センター (Elsamere Conservation Centre)」という自然保護活動・教育施設が併設されています(宿とどちらが先か分かりませんが)。敷地内には、植樹されたばかりでまだ低い木がたくさんあって、寄贈者名の書かれたパネルがそれぞれの脇に置かれています。
まさに私の関心事や目的にぴったりの宿です。宿泊料金など、宿のレベルも、ほぼ私の希望のあたりです。因みに料金は、ケニア在住者が朝夕2食付きハーフボードのシングルで1泊8,800シリング(1シリング=約1円)、3食付きフルボードで10,300シリング。これが非居住者だとフルボードのシングルが165ドル、すなわち約19,000シリングと倍額近くに跳ね上がります。
周囲にレストランがなさそうで少々心配だった私はフルボードにしました。結局、ハイヤーした車で別のホテルのレストランや街のレストランにも行けたので、昼食を付けなくても問題はなかったのですが、ここの昼食も結構愉しめましたし、時間の節約になりましたので、フルボードで正解でした。
食事については次回の記事にまとめてご紹介します。
上に自然保護センターが付設と書きましたが、結局、自然保護活動に関することは何もせず、保護センターも周囲を自然探索したものの中には入りませんでした。しかし後の記事で触れるように、野鳥に詳しい方からガイドをしてもらえましたので、それなりの「自然」活動はできたと思っています。
鳥については、もちろん、たくさん写真を撮りましたので、これらも別の記事にしてご紹介します。
メインハウスの前には屋外テーブルがあり、その先にはナイバシャ湖が広がっています。
ここで気持ち良く昼食を取るということになりますが、猿や鳥に注意です。食べ物を虎視眈々と狙っている彼らは、食事中にちょっとでもテーブルを離れると、すかさずやって来て食べ物を奪って行きますから。
実際、3日目の昼食は一瞬の騒動になりました。隣りのテーブルに猿がやって来て、そこに座っていた男性客が、自分の座っていた椅子を振り回して追い払う場面もありました(しかし時既にに遅し)。
食事後も、すぐに皿を従業員に返す必要があります。残し物をしていたらもちろんですが、そうでなくても、皿に付いたわずかな食べ物の欠片(かけら)を目がけて彼らは飛んで来るでしょうから。
その猿についても、別の記事にてお見せします。
でも、猿以上に気を付けなければならないのは、夜間に出没する動物、とくに夜になると湖から陸に上がって来るカバです。だから、このように「夜間の野生動物に注意」の掲示があります。
夕食時のメインハウスと自分の部屋の往復は、警備員の護衛付きです。ほんの数十メートルの距離でしかありませんが、危険動物が徘徊しているので一人で歩くのは危険です。
実際、初日の夕食を終えて部屋に戻る時、警備員が「カバがいる」と。そして彼が手にしたライトを木立の方に向けると、その手前にデカいカバが、のそのそと歩いているではありませんか! 30メートルくらいの距離がありましたので危険は感じませんでしたが、私は立ち止まることなく、音を立てずにすぐに部屋に入りました。
と、心休まらない話をしたところで、心休まる写真を。庭に生えていた「雑草」の小さな花。植物同定アプリ Pl@antNet に画像をかけると、Boerhavia diffusa(ナハカノコソウ)が一致率36.43%、Boerhavia erecta が35.07%と出て来ました。小さくて目立たない花ですが、こうして接写すると可憐な感じがして可愛いです。
これが私の部屋のあるコテージ。左側が私の部屋です。このコテージの名前「パティ (Pati)」は、ジョイ・アダムソンのペットであったロック・ハイラックスの名前だそうです。
部屋は簡素ですが清潔そうで、ゆっくり休むには十分です。
ロッジ先の庭から湖越しに見たナイバシャ市街方面。湖の反対側に位置しており、直線距離で15キロくらいあります。
宿の敷地には小さな桟橋があり、小綺麗なボートがそこにありました。これで湖を遊覧するようです。
従業員に2日目はどうすると聞かれ、「クレセント・アイランドに行こうかと思っている」と言うと、「うちのボートで行くか?」と。
グーグルマップによると島へは橋か何かが架かっているようで、道路が記されていたので、この時点では自動車で島に入るつもりでした。だから、「いや、車で行く」と。
しかしその「道路」のある辺りまで行ってみたら、道は(ナクル湖で散々な目に遭った時と同様に)完全に水没しており、結局ボートを使わなければ行けない場所だったんですがね。しかもボート代に結構な料金を払うことになりましたので、この宿のボートで行く方が正解だったかもしれません。幾らだか分かりませんが。
「こんなことなら、その従業員は初めからそう言ってくれればいいのに」とも思いましたが、きっと彼は、車で最寄りの場所まで行って、そこからボートに乗るのだと理解したのでしょう。
私としてはそのつもりはなかったのですが、結果的には、そうすることになりました。
夕暮れ時の湖面は、気持が落ち着くような、少々沈むような、そんな色を呈しています。
こちらは2日目の朝に撮った写真。これから行くクレセント・アイランドで見られるであろう動物や鳥に対する期待で心を躍らせながら、庭先で鳥を探して散歩している時に撮りました。