高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

 

38.面会交渉時の“言ってはいけない言葉”──親の囲い込みに直面したとき

 

高齢の親と面会したいのに、きょうだいの一人や施設の担当者から拒まれてしまう。
 

「親に会いたいだけなのに、なぜこんなに難しいのか」と、多くの方が心を痛めています。

 

面会交渉の場は、ただでさえ緊張が高まりやすいものです。そこで不用意な一言を口にしてしまうと、相手の態度が硬化し、ますます面会が遠のいてしまうことがあります。

 

本記事では、面会交渉で絶対に避けるべき“言ってはいけない言葉”について、事例と心理学的な観点を交えて解説します。

 
 
 

 

1.面会交渉が難航する背景

 

なぜ、親との面会という自然な願いが、こんなにも大きな壁にぶつかるのでしょうか。背景には次のような事情があります。

  • きょうだい間の対立(財産、介護の負担感、過去の感情的なしこり)
  • 親の判断力低下(認知症や病気で意思があいまいになる)
  • 施設やケアマネの「トラブルを避けたい」という防衛姿勢

つまり、面会交渉の場は「単なるお願い」ではなく、利害や感情が複雑に絡み合う場です。
 

そこでの言葉選びは、将棋の一手に近い重みを持っています。

 

 

2.“言ってはいけない言葉”の典型例

 

ここでは、私が相談を受ける中で特によく見られる「NGワード」を紹介します。

 

(1)「親は私のものだ」

 

意外と多いのが、この強い言い回しです。
気持ちは理解できます。「会わせてもらえない苦しさ」から、思わず独占的な表現になってしまうのです。

 

しかし、この言葉は相手にとって「支配の主張」に聞こえます。
結果的に、「だから会わせられない」と囲い込み側の正当化を助長してしまいます。

 

(2)「あなたが親を洗脳している」

 

相手の行動を断罪する言葉は、交渉を即座に決裂させます。
仮に事実として親への影響があったとしても、交渉の場で直接糾弾すれば、相手は防衛本能をむき出しにし、会話が成立しません。

心理学的に言えば、人は「責められる」と自己防衛に走り、冷静な判断ができなくなります。

 

(3)「弁護士に言うからな」「訴えてやる」

 

法的手段を持ち出すことは、最後の切り札であって、交渉の入り口で言うべきではありません。
この言葉が出た瞬間、相手は「敵」とみなし、以後の協力関係は築けなくなります。

 

もちろん、最終的に家庭裁判所などの法的解決に進むことはあります。
 

しかし、その前に「対話で歩み寄れる余地」を自ら閉ざしてしまうことは避けたいところです。

 

(4)「親はもう長くないんだから」

 

切迫感を伝えたくて言ってしまう言葉です。
 

しかし、これも逆効果です。「死」を交渉材料にすることで、相手には「感情的に揺さぶられたくない」との拒絶感が生まれます。

むしろ、冷静に「親の意思を確認したい」「親の安心を第一に考えている」と伝えるほうが、相手の耳に届きやすくなります。

 

 

 

 

3.なぜ“言ってはいけない言葉”が出てしまうのか

 

頭では分かっていても、実際の交渉場面では感情が先立ち、つい強い言葉を投げてしまうものです。
 

その背景には次のような心理があります。

  • 被害感情:「自分だけ排除されている」という強烈な孤独感
  • 正義感:「これはおかしい、正さなければ」という使命感
  • 焦燥感:「時間がない、早く会わないと」という切迫感

これらはすべて自然な心の反応です。
ただ、相手にぶつけた瞬間、交渉は硬直化しやすいのです。

 

 

4.“言っていい言葉”への置き換え

 

では、どう言えばいいのでしょうか。
具体的に「NGワード」を「OKワード」に変換してみましょう。

  • 「親は私のものだ」
     →「親と平等に会える関係を望んでいます」
  • 「あなたが親を洗脳している」
     →「最近、親と話す機会が減って寂しく感じています。状況を共有していただけませんか」
  • 「弁護士に言うからな」
     →「冷静に進めるために、専門家の意見も参考にしたいと考えています」
  • 「親はもう長くないんだから」
     →「親の心が安心できるように、面会を大切にしたいと思っています」

言葉を少し置き換えるだけで、相手に伝わる印象は大きく変わります。

 
 

 

5.施設や第三者との交渉でも同じ

 

実は、施設職員やケアマネとの面会交渉でも同じ注意が必要です。
 

「施設はグルだ」「職員が協力しているだろう」といった断定的な言葉は、相手の防御を強め、情報が閉ざされてしまいます。

 

施設側には「他の家族との板挟み」という事情もあるため、冷静に事実を伝え、「協力者」としての立場を尊重することが肝心です。

 
 

 

6.ケーススタディ

 

あるご相談者は、面会を拒む兄に対し「親を独占するな」と強く言い放ちました。
 

結果、兄は弁護士を立ててさらに壁を厚くし、面会が半年以上も実現しませんでした。

 

その後、言葉を「親の安心のために、兄弟みんなで関わりたい」と改めてから、少しずつ面会のチャンスが開けていきました。

このケースは、「言葉の力」が交渉を左右する典型例です。

 

 

 

まとめ

 

面会交渉の場では、感情をぶつけたくなるのが人間の自然な反応です。
 

しかし、その一言が面会を遠ざける原因になってしまうことがあります。

 

言ってはいけない言葉のポイント

  • 親を「所有物」のように語る言葉
  • 相手を断罪・非難する言葉
  • 法的手段をちらつかせる言葉
  • 親の死を材料にする言葉

代わりに選ぶべき表現

  • 「親の安心を第一に考えている」
  • 「平等に関われる関係を望んでいる」
  • 「冷静に専門家の意見も参考にしたい」

 

言葉を工夫することは、相手の心を閉じさせない最初の鍵です。
 

「親は家族みんなのもの」という原点を忘れず、冷静で誠実な言葉を選んでいくことが、面会への道をひらきます。

 

 

 

 

 

 

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