高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

33.自宅囲い込み時の訪問アプローチの注意点

 

高齢の親がきょうだいの一人に「囲い込まれ」、自宅に滞在しているにもかかわらず、他の家族が会わせてもらえない──こうした相談は年々増えています。

 

施設に入所している場合と異なり、自宅での囲い込みは「家の玄関口」で拒否されるケースが多く、訪問の仕方を誤ると、余計に関係がこじれてしまうリスクがあります。今回は、自宅囲い込みに直面した際の訪問アプローチについて、注意すべきポイントを整理します。

 

 

 

1.なぜ「自宅囲い込み」が起こるのか

 

まず理解しておきたいのは、なぜ子どもの一人が親を自宅に囲い込むのかという背景です。代表的な要因としては、

  • 親の財産や生活費を自分が管理したいという経済的動機
  • 親の判断力が落ちていることを理由に、他のきょうだいを遠ざけたい心理
  • 「自分が一番親を世話している」という優越感や支配欲
  • 家族間の過去の確執や不信感

といったものがあります。
 

つまり、親のためというよりは「自分のため」の要素が強く、訪問する側がいくら「会いたい」と訴えても、正面突破では壁に跳ね返されることが多いのです。

 

 

2.訪問前に準備すべきこと

 

自宅に直接訪ねる前に、いくつかの準備をしておくことが肝心です。

 

(1) 記録を残す

訪問した日時、対応した人、会えたかどうか、どんな会話があったかをノートに記録しておきましょう。これらは後に家庭裁判所や弁護士に相談する際の重要な証拠になります。

 

(2) 事前に連絡を入れるかどうか

突然の訪問は警戒を招きやすく、「押しかけられた」と非難されるリスクもあります。一方で、事前連絡を入れると「来るな」と言われる可能性も高い。どちらを選ぶかは状況によりますが、親に直接電話がつながるなら、まずは親の意思を確認することが優先です。

 

(3) 第三者に同行を依頼できるか

ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員など、中立的な立場の第三者に同行を依頼できる場合があります。これにより「きょうだい同士の私闘」と見られるのを避けやすくなります。

 

 

 

3.訪問時のアプローチの注意点

 

(1) 感情的にならない

玄関口で拒否されたとき、つい「親に会わせてくれ!」と声を荒らげてしまう人もいます。しかし、それは相手の思う壺です。「騒ぎを起こす人だから、会わせられない」と正当化されてしまうからです。冷静な態度を崩さないことが最も大切です。

 

(2) 事実だけを伝える

「お母さんの体調を心配しているので、顔を見たい」
「先週も電話がつながらなかったので、直接様子を確かめたい」
といった具合に、客観的でシンプルな理由を述べましょう。相手の人格を攻撃するような言葉は避けます。

 

(3) 親に直接声を届けられるか試みる

玄関先で遮られても、親が奥の部屋にいるなら声を届ける方法があります。
「お母さん、元気? ちょっと顔を見せて」
と優しい声で呼びかけるだけでも、親に「会いたい」という意思があると示せます。ただし、怒鳴り声は逆効果です。

 

(4) 滞在時間は短く

長時間の押し問答は双方のストレスを高め、関係悪化を招きます。数分で区切りをつけ、拒否が続く場合は一旦引き下がりましょう。その代わり、訪問を繰り返すことで「会いたい気持ちは継続している」と示せます。

 

 

4.法的トラブルに発展させないために

 

訪問アプローチには「境界線」があります。無理やり家に入ろうとすると、不法侵入や迷惑行為とみなされかねません。相手が警察を呼んだ場合、こちらが不利になることもあります。

 

ですから、あくまで「冷静に・短時間で・記録を残す」を徹底してください。もし拒否が続き、親の安否が本当に心配な場合には、家庭裁判所への審判申立や地域包括支援センターへの相談など、制度的な手段に進むことを検討する必要があります。

 

 

 

5.心理的なダメージに備える

 

自宅を訪ねて門前払いされる経験は、とてもつらいものです。親に会いたいだけなのに、拒絶される。しかも拒否しているのはきょうだいである。これは心に大きな傷を残します。

 

そのため、

  • 訪問後に気持ちを整理する時間を持つ
  • 信頼できる友人やカウンセラーに心情を吐き出す
  • 「自分のせいで会えない」と思い込まない

ことが大切です。囲い込みの構造自体が理不尽なのですから、自己否定につなげないでください。

 

 

6.まとめ

 

自宅での囲い込みに対して訪問する際は、

  1. 事前の準備(記録・第三者の検討)
  2. 訪問時の冷静さと事実に基づいた説明
  3. 親への直接的な声がけの工夫
  4. 無理な突破はせず、短時間で切り上げる
  5. 継続して訪問することで意思を示す
  6. 心理的なケアも忘れない

という点が重要です。

 

「親に会いたい」という思いは自然で正当なものです。しかし、アプローチを誤ると、逆に「会わせられない理由」を相手に与えてしまいかねません。冷静さと粘り強さを両立させながら、必要に応じて専門家や制度の力も借りていきましょう。

 

 

 

 

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