みなさんは、「貿易摩擦」という言葉を知っていますか❓
「貿易摩擦」とは、自由貿易による国際間貿易競争が過度に激しくなった結果生じる経済・社会問題のことです。
第2次世界大戦後は自由貿易が世界的に推進されていくのですが、この自由貿易が徹底するに及んで、競争力の強い国と弱い国との間に摩擦が生じ、競争力の弱い国における産業の停滞や失業者の増加という問題を引き起こすことになります。
日本史の教科書などには、第1次石油危機以降の日本経済に関して以下のような記述がなされています。
世界経済が停滞する中で、省エネ型の産業、省エネ製品の開発、省エネ型のライフスタイルを追求して5%前後の成長率を維持し、第2次石油危機をも乗り切ることに成功します。
そして企業は、省エネルギーや人員削減、パート労働への切り替えなどの減量経営につとめ、工場やオフィスの自動化を進めていきます。
産業部門別にみると、鉄鋼・石油化学・造船などの資源多消費型産業は停滞し、省エネ型の自動車・電気機械や、半導体・IC(集積回路)・コンピュータなどのハイテク産業が輸出を中心に生産を伸ばします。
日本の貿易黒字は大幅に拡大し、欧米諸国との間に貿易摩擦が起こることになるのです😲
教科書の記述にもある通り、日本の自動車🚙は海外に多く輸出され、日本の貿易黒字に大きく貢献することになるのです。
しかし、ここで大きな問題が発生することになります😨
世界貿易の基本は自由貿易ですから、高品質で低価格の製品を作った企業が勝つのです。
そして世界で売れる製品を作ることのできる企業を多く抱えた国が、貿易競争で勝利することになるはずです。
日本の場合は、特に自動車が優秀な輸出品として海外で大きく売り上げを伸ばしたのですが、輸出先では大きな反発が生じることになりました😓
上記にかかげた写真は、日本製自動車を叩き壊すことで、日本の自動車の対米輸出急増を激しく非難している様子です。
いわゆる、「ジャパン=バッシング」といわれるものです。
教科書などにも載せられているこの写真には、あるメッセージが書かれています。
日本語訳してみます。
全米自動車労働組合は言っている。「売りたきゃ、アメリカで作れ!」
授業で生徒に、このメッセージはどのようなことを主張していますか❓と問いかけるのですが、生徒にはなかなか難しいようです😅
つまり、こう考えなければならないのです。
日本にある工場で作られた自動車がアメリカに輸出され、日本の貿易黒字に大いに貢献したのですが、この結果アメリカの自動車産業に従事するアメリカ人労働者の雇用が脅かされることになってしまいました。
アメリカ人によって作られた自動車が、日本車が輸入されたために自国のアメリカで売れなくなってしまったからです。
当然ですが、売り上げが落ちれば、その産業に従事する労働者へ支払われる給与は下げられ、売り上げがさらに落ち込んでいけば解雇ということにもつながっていきます。
自動車産業に関わっているアメリカ人は、是が非でもこうした状況を改善する必要がありました。
このため、アメリカ人労働者はアメリカ国内に日本の自動車工場を作れ!と訴えます。
こうすることで、自動車を作る際にはアメリカ人労働者が雇用され、部品はアメリカ製の製品が使われることになります。
写真にあるように、日本車をアメリカで売るのであれば、アメリカ国内に日本車工場を作り、アメリカ人を雇うことで雇用を守ることが訴えられたというわけです。
自由貿易だから、競争力のある企業が勝つ。
当たり前のことなのかも知れませんが、貿易競争で劣勢な側にとっては大変なダメージです。
授業では、ただ単に歴史を解説するだけではいけないと私は考えています。
さまざまな立場に立つことで歴史を考えさせることが大切だと思います。
これからの時代を生きていくために必要とされる、「物事を多角的に分析することができる力」を養成することのできる授業ができたら最高なのだと思います。
私の授業はそのレベルに全く到達していませんが、目指していきたい理想の授業です😊