『菜根譚』●成功から見放されるがさつ者ー吉田 豊
『菜根譚』ー吉田 豊●成功から見放されるがさつ者✪性燥に心粗なるは、一事も成ることなし。心和し気平らかなるは、百福おのずから集まる。せっかちで粗暴な人間は、何をやってもものにならない。心が穏やかで落ち着いた人のもとには、さまざまな幸福が自然と集まってくる。いろいろな職業の人を見ていて共通に感じるのは「一事も成ることなし」の、がさつな仕事をする人は、お客や利用者に対する責任感と、自分の仕事に対する愛情が欠けていることだ。そうした人は、ただ仕事を右から左へこなしてお金を取ることしか考えない。これに対して「百福おのずから集まる」仕事ぶりとは、自分の仕事に愛情と誇りをもち、どうすればお客や利用者により喜んでもらえるかの工夫を忘れない姿勢である。小売業であれば、念を入れて仕入れた自信のある商品を、お客の好みと必要に応じて過不足なく勧め、売ったあとまで満足してもらえたかと気にかけるようなら本物だ。このように商人にとっては「あれ、おいしかったわよ」「気に入って使ってるよ」といったお客の反応が何よりの喜びだろう。自分が扱っている商品についての関心といえば、ただ利幅と回転率だけで、それがお客の生活にどう役立つかなどは気にも止めない商人には、このような喜びは無縁だし、お客との心とのつながりは期待できまい。