1986年の秋だったかな。
厚木のNTC(日産テクニカルセンター)の造形部のスタジオに通された私は、なんとも言えない気分になりました。
驚きとカタストロフィーの入り混じったような気持ち。
スタジオにポツンと佇んでいたのは美しい曲面を持つボリューミーな1台のクルマでした。
描いてみました。
近くまで歩いて行くと、その存在感に圧倒されました。
5ナンバー枠に囚われない威風堂々とした大きさ。
後になって、
8代目グロリアが登場した時の、
「きっと、新しいビッグ・カーの時代が来る」
というキャッチコピーに納得したのも、この時の感覚が忘れられなかったからでしょうね。
1988年の初めにシーマはブランニューとして世の中に出ました。
シャシーはY31グロリアと共通でしたが、
全長は4,890mm、全幅は1,770mmとグロリアよりひと回り大きい。
エンジンは3ℓV6 DOHCのVG30DEと、それにターボを装着したVG30DETの2種類。
ターボ車は実に255馬力、最大トルクは35kgmというスポーツカー並みの、当時としては国産最強の部類に入る動力性能を備えていました。
(写真はwebから拝借)
これから日産の高級車の役割は、グロリアではなくて、このシーマが担って行くんだな、と思いました。
その翌年、私は自動車会社生活を終えて転職、広告会社生活をスタートさせました。
グロリアの系譜シリーズも、スカイラインの系譜シリーズと同じように、今回で一旦終わらせていただきますが、
何故、グロリアの系譜の最終回がシーマなのかと言いますと、
実はシーマの初代の正式名称は、
「GLORIA CIMA」なのです。
(セドリック販売店扱いは CEDRIC CIMA)
上のイラストにはそのエンブレムも描き添えました。
日本の高級車がバトンを引き継いだ証だと、
私にはそう思えて、
最終回を「グロリア・シーマ」にしました。
ちなみに、グロリアはその後も代を重ねて、11代のY34型まで続きましたが、
2004年の「フーガ」発売に伴い、45年の歴史に幕を下ろしました。
『グロリアの系譜』一覧