2017年5月4日、深遠なる紀伊半島彷徨の初日。この日のネタで記事にしているのは、時系列でカナウナギトンネル、四ノ川の吊り橋、北山トンネルとその奥、小又川の吊り橋だが、今宵ご紹介するのは北山トンネルとその奥を極めた後に訪ねた物件。
イントロは、その移動のひとコマより。
国道169号に残されたわずかな酷道区間である、北山村下尾井~小松間。そこを、2台のバスの後ろにつけて進んでいた。
どこに行くバスなんだろう。もしや?と思ってたら、ビンゴ。
なんとわたくしの目的地に吸い込まれていくではないか(爆)。
場所コチラ。
はっはーーん!?となったね。あのバスが入って行ったってことは、やはりそういうことか。
実はあのトンネルは、過去に記事にしている上滝トンネル。
以下しばし前記事を見ていただいた前提で進めるので、よければまずは目を通してから進んでいただきたい。
抜けた先で行き止まりのこのトンネル。先ほど
はっはーーん!?
となったのは、例のバスがどういうバスなのかわかったためであり、そのことが、前回書いた「それなりのお金をかけてこのトンネルを建造した理由」を裏付けると思われたからだ。
それならば、目の前でバスが吸い込まれていったのを目撃した上で、このまま追尾するのはちょっと気が引ける。邪魔にならないよう、少しタイミングをずらそうかな。
ちなみに見ていただくとわかるように、最初の訪問時にはトンネルに進入してないのだ。これが心残りで改めて訪ねたいと思っていた次第。
あと、今回改めて記事にした理由だが、なんでだかやたらと閲覧されているこの記事に全くもってまともな写真がないのがなんか恥ずかしくって、補足記事として紹介しようかという意図だったりする(笑)。
つうわけで、上滝トンネルに続いて訪ねるつもりだった物件を先に訪ねることにした。
それは、先ほどの写真でそのまま道を直進した先にある…
こちらの吊り橋遺構。
場所コチラ。ドンツキの集落・小松は目と鼻の先。ちなみに、対岸は三重県熊野市紀和町である。
かつてここに架かっていた、車道吊り橋。
高さ制限と、(見切れているが)主塔に向かって右側には、1.4mの幅員制限標識があった。
銘板でもないかとジロジロ舐めまわしていると…
とんでもないものを見つけた。
主塔に引かれた白い線。見にくいが、その下書かれていたのは…
左から右に読むんだと思うが、
最高水位
昭和三十四年九月廿六日
15号台風ニ依ル最高水位午后11時
エゲツな…。
昭和34年9月26日の台風15号、いわゆる伊勢湾台風において、北山川の水位がここまで到達したというのである。こんだけの広くて深い谷が…。エゲツなすぎる。
そして2011年9月3日。紀伊半島に甚大な被害をもたらした台風12号により、伊勢湾台風にも耐えたこの橋は流失してしまった。
毎年のように台風被害に見舞われている紀伊半島だが、この年は本当に酷かった。大雨による洪水や土砂崩れ、そして深層崩壊による河道閉塞(天然ダム)の発生…。多くの人命が失われ、ここのように多くの橋が流失、道路もズタズタにされた。
「近畿の吊り橋」さんで、在りし日のこの橋を見ることができる。紀伊半島でよく見るタイプの、グレーチング敷きの車道吊り橋だったようだ。
http://kintsuri.main.jp/302_komatsu.html
立地を考えても、この橋が生きていれば面白いルートが組めるのに…と思わされる。そういう意味でも実にもったいない橋だが、今では小松の集落もほぼ無住に近い様子、この感じでは架け直されることはもうないんだろうな…。この橋が生きている間に渡れなかったことが残念だ。
この写真に写っている範囲全てが水に呑まれた。
なんという恐ろしい光景だっただろうか。想像を絶する。
今年は、災害なく台風シーズンが過ぎ去りますように…。
…てな感じで、小松の吊り橋にひとしきり想いを馳せてから…
改めて、上滝トンネルへ。
今なお道路地図には描かれないこのトンネル。ご覧のように、進入を止めるものは何もない。
なので、前回は(ビビって)果たせなかった
通り抜けを。
で、初めて目視するその先は、
かねてわかっていたとおり、バッサリと終了。その脇には、北山川へと降りるスロープが設けられている。
ちなみに止まっている車は先客?で、車内に人がいたので
転回してトンネルに向き直った景がコチラ。
ほんとこれだけを見ると、なんのために建造されたトンネルなのか謎すぎるわけだが…。そのヒントとなる先ほどのバス2台のうち1台が、トンネルに突っ込むような位置で待機していた。
ヒントは、バス後部に表示されたある文言。
ちょっと見にくいが「筏専用バス」とある。
やはりこのトンネルは、北山川の観光筏下りに関連して建造されたものなのだろう。ここは筏下りのスタート地点でもゴール地点でもない途中の場所だが、ここに一か所「セーブポイント」を設けておくことで、万が一に備え安全を担保している…のが真相か否かはわからないが、実際にこうして筏専用バスが入っているということは、当たらずとも遠からずか。
疑問なのは、日常的にここでバスが待機しているものなのかということと、もう1台のバスがどこに行ったのかということ。
考えてみれば、バスの運転手さんに聞いてみれば一発解決やったのにな(笑)。
…という、ちょっと異色な記事でありました。テーマ分類に困るんだが、ここは吊り橋に敬意を表して「道路橋・橋梁」にしとこうかな。