(この記事では、ミャンマーのクーデター関連のニュースをフォローしています(2023/6~12)。関連記事は以下の通り)

映画「ミャンマー・ダイアリーズ」を見てきました。
(12/27追記)
関連報道を追加しておきます。一時、3つの少数民族と国軍が中国の仲介の下で一時停戦に合意したとの報道がありましたが、紛争は依然として継続しているようです。
(12/9追記)
関連報道を追加しておきます。今回の紛争の民主派側から見た内情についての記事が出ていました。今回の紛争では少数民族と中国との関係が注目されていますが、実際にはそれとは別に、今回の紛争の1年前からミャンマー国内で民主派と少数民族の関係構築(連絡体制の整備や、各少数民族や民主派の参加者から構成される戦闘部隊「611旅団」の編成を含む)が行われており、今回の紛争でも各勢力の連携が戦況に大きな影響を及ぼしているとのことです。さらにそれより前、2022年を通じ、国軍は北部に所在する少数民族と和平交渉を行っていました。しかし同年の秋ごろには、国軍は少数民族側の求める自治権の拡大等を受け入れるつもりがなく、この交渉は民主派と少数勢力を分断するための時間稼ぎだったと見透かされていたとされており、それ以降、両者間の関係構築が始まったものと見られます。今回、国軍と反国軍派の間のパワーバランスが大きく崩れたのも、国軍のこうした分断策が失敗し少数民族が民主派についたこと、両者が緊密に連携して作戦を構築したことが大きな要因となっていたものと考えられます。
今回の紛争の主導権を握っているのが中国なのであれば、同国にとっても国境地帯で紛争があまり長く続くのは好ましくないでしょうからどこかのタイミングで調停に入るものと思いますが(関連して中国国内では「反政府勢力に打撃を与えるために中国軍が国境を越えて進軍していってもミャンマーの主権侵害には当たらない」とする識者のコメントが報道されているとのことです)、民主派側にも主導権があるのであれば今回の紛争の帰結が変わってくる可能性もあります。中国-少数民族-民主派の間でどのようなコミュニケーションが行われ、どこまで利害の一致があるのか分からない部分もありますが、今後の展開には引き続き注目です。
(11/23追記)
その後も紛争に関わる報道が続いています。当初の争点となっていた国際犯罪については、実に3万1千人もの容疑者たちがミャンマーから中国に移送されたと報じられました。この人たちは中国側で高速鉄道に乗せられ、さらに移動させられているということです。これだけの人を拘束し、国境を越えて移送するオペレーションというのはいかにも大掛かりで、少数民族と中国の緊密な連携を伺わせます。
紛争の収束点は未だに見通せません。主導権を握っていると思われるのは中国ですが、もし仮に中国側の主たる争点が国際犯罪なのだとすれば、関与した人の拘束は一つのマイルストーンにはなるはずです(但し、実際にはより戦略的な観点もあるでしょう)。少数民族の方は引き続き権益拡大を志向するものと思われますが、一方で自分のテリトリーを超えた権益を求めることは考えにくいとされています。ただ、今回の紛争は当初関与した3つの少数民族を超えた広がりを見せており、また国軍側の戦略(これまで民主派との紛争に充てていた戦力をどこまで周辺地域に振り向けるか、等)によっても今後の行く末は変わってくるのではないかと思います(紛争激化から4週間経って「国軍が首都防衛に向けて兵力の移動準備をしている」との報道も出ており、戦力的には不利なのではないかとは思いますが)。
(11/26追記) その後、中国は国境付近で軍事演習を開始。真意はわかりませんが、今般の紛争を梃子に、さらに国軍に対してプレッシャーをかけようとしているようにも見えます。また、3つの少数民族のうちの一つであるアラカン軍は、今回も中立を保っている「ワ州」と同程度の自治・独立を求めているとも報じられており、 こちらも直ぐに折り合いがつく状況ではないように見えます。
いすれにせよ今回、「国境警備隊(下でも書いた通り、実態は国軍が少数民族の分断を図るため、少数民族の民兵を手名付けて作った武装集団)」を始めとして、国軍が周辺地域に影響力を及ぼすために構築した制度や組織がかなり破壊されてしまったのだとすれば、中長期的な国軍のそうした地域に対する支配・関与は低下するものと考えられます。そのことによって例えば国軍の目が行き届かない「聖域」のようなものができてしまえば、そうした地域を使って民主派の民兵を訓練したり、武器を提供したりする勢力が増えていく可能性もあります。
国際社会の反応に目を転じると、今回改めて明らかになったのが国軍の外交的な立場の脆弱さです。具体的な反応としてはASEAN国防省会合(国軍は不参加)で従来からの「5項目合意」への復帰を呼び掛ける声明が出されたのみで、続く拡大会合(中国も参加)ではミャンマーは大きな論点とはならず、もちろんG20でもミャンマー関連の報道は見られません。2国間関係ではロシアとの海軍演習が報じられていますがこれもあまり国境地帯での紛争に対する重しにはなりそうになく、またこれまで積極的な仲介外交を展開していたタイも具体的な反応は見せていません。国内では官製と思われる反中デモがあったそうですが今回の中国の関与に対する反応としてはいかにも弱々しく、国軍が今後、どのように中国と外交的に対抗していくのかが注目されます。
(11/10追記)
その後、紛争は急速に拡大。「少数民族武装勢力が中国国境からの交通路を制圧」「これまで確保できなかった規模の都市を確保」「国軍の師団長が戦死」等、クーデター以降見られなかったような戦況が報道されています。国軍側も空爆を行うとともに予備役を総動員する等、緊迫した状況が続いています。
この紛争の背景にいるとされるのが中国であり、国境付近での犯罪、特に「国境警備隊(実態は国軍が少数民族の分断を図るため、少数民族の民兵を手名付けて作った武装集団)」の中国人を巻き込んだ国際犯罪を国軍が抑えられなかったことから、少数民族の攻勢を黙認しているものと見られています。少数民族側も今般の攻勢の目的の一つに犯罪の撲滅を掲げています。中国とこれらの少数民族(のいくつか)との関係は深く、実際、もし本気で止めようと思えば直接、これらの少数民族に圧力をかければいいのだと思いますが、そうした動きはこれまで報道されていません。
こうした行動の背景としては、国軍による外交の停滞、民主派との紛争の結果としての国軍の戦力低下と少数民族の勢力伸長等が考えられます。国軍が国際的に孤立し、国内情勢も安定させられないと見た中国が、関係の近い少数民族が勢力を拡大することを認めるのと引き換えに、国境地帯の治安維持、権益の保護等に役割を果たすことを期待しても不思議ではありません。詳細は過去記事をご覧ください。
こうした国境付近での犯罪、紛争、交通・貿易等の問題は一見、中央平野部の問題と比べると重要度が下がるように見えますが、国境を接する近隣国との間では外交上の重要なイシューとなり得ます。例えば中国側が、今般の紛争を梃子に国軍により強い圧力をかける可能性は否定できません。また、下でも触れた通り、雨季が終わるこの時期は毎年、紛争が激しさを増すタイミングであり、例年、国軍側から攻勢に出る動きを見せていました。しかし今年は反国軍側に機先を制されただけでなく、紛争激化から2週間近く経ってもまとまった反撃の動きは見せられておらず、反国軍側に主導権を握られてしまっている感は否めません。
(10/28追記)
関連報道を追加しておきます。北部と西部の3つの少数民族武装勢力が国軍に対する作戦行動を実施、NUGも共闘を宣言しました。2022年以降、国軍は中国の関与も得て北部の少数民族とは和平交渉を行い(西部の1民族(アラカン軍)ついては日本の笹川氏が仲介)、空いた戦力を対民主派に振り向ける戦略を取っていましたが、2023年を通じ、この戦略は大きく崩れた印象です。両者が今後どの程度、連携していくことになるのかはよく分かりませんが、中長期的な構図の変化には注目です。また、雨季が終わるこの時期は毎年、紛争が激しさを増すタイミングでもあり、現地の状況が心配されます。
(10/9追記)
関連報道を追加しておきます。外交、国軍の内政、戦況、国際犯罪等、様々な角度からニュースが出ています。
ASEANを除く、各国レベルでの外交関係等のニュースを並べてみました。タイ、中国はそれぞれが主催するベンガル湾周辺地域や一帯一路関連のフォーラムへの国軍司令官の招待を見送り。一方で中国は犯罪対策、インフラ建設に向けた協議等を官民で着々と進めています。
(9/9追記)
関連報道を追加しておきます。今週はASEAN首脳会議がニュースになっていました。ミャンマー関連で言えばASEAN議長国を前年の議長と翌年の議長が補佐し、計3カ国で対応することが合意されました。その裏では、国軍と近隣国の要人の会談や、ミャンマーを舞台とした国際犯罪の摘発等が報道されています。
ミャンマー経済、中国タイ勢が存在感 政変後も友好関係 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
2023年度4~7月の外国直接投資認可額、前年同期比61.7%減(ミャンマー) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)

ISP Data Matters - ISP-Myanmar (ispmyanmar.com)
ミャンマーにおける中国・タイ勢の事業拡大の報道があったのでデータを調べてみました。クーデター後の海外直接投資のうち中国(香港を含む)が55%を占めていますが、そのほとんどがクーデター前に認可された資源開発のプロジェクトとガス田開発に関するものであり、数字を見る限り一般的な民生投資が活発化しているわけではないようです。海外投資の認可額の元データを見ても中国からの投資はクーデター前後で大きく減少しており、他の国からの投資が激減(消滅)したことで相対的に中国の存在感が上がっている状態のように見えます。
(9/2追記)
関連報道を追加しておきます。
(8/6追記)
関連報道を追加しておきます。ミャンマー国内ではスーチー氏の恩赦が話題になる一方、周辺国でも今後の外交に影響を及ぼしそうな事柄がいくつか起こっています。
(7/15追記)
関連報道を追加しておきます。ASEAN外相会議が開かれ、それに先立ってタイの外相がアウンサンスー・チー氏と面会したことが報じられました。但し具体的な打開策はなく、既にASEANはミャンマー問題に関する国際的なリーダーシップからは後退しているように見えます。
もう数が多すぎて一つ一つが大きなニュースになることは少なくなっていますが、国軍による空爆が続いています。
(6/24追記)
前回の整理から半年経ちましたのでここで中間整理をしていましたが、独立させて一つの記事にしました。
関連報道を追加しておきます。
(6/3追記)
関連報道を追加しておきます。タイで総選挙が行われ、野党が大勝しました。タイではかつて「裁判所が野党党首の公民権(被選挙権)を微罪で停止、政権崩壊」といったこともあったようですので今後の見通しはまだ分かりませんが、ミャンマー外交への影響も含め、注意して見ていきたいと思います。
その他の主なニュースはこちら。G7ではミャンマーはメインの話題にはならず。サイクロンの被害状況、日本のODA打ち切り、国境付近の紛争等のニュースが報じられています。
さらに、4月頃に激化した紛争の状況も含め、足元の状況に関する報道・レポートが出ています。