【作品#0356】トップガン マーヴェリック(2022) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

トップガン マーヴェリック(原題:Top Gun: Maverick)

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

 

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【概要】

2022年のアメリカ映画
上映時間は131分

【あらすじ】

海軍でパイロットして勤務するピート・ミッチェル大佐は、かつて自身も参加したエリート航空戦訓練学校、通称「トップガン」に教官として赴任するよう命じられる。

【スタッフ】

監督はジョセフ・コシンスキー
脚本はアーレン・クルーガー/エリック・ウォーレン・シンガー/クリストファー・マッカリー
製作はジェリー・ブラッカイマー/トム・クルーズ/クリストファー・マッカリー
音楽はハロルド・フォルターメイヤー/ハンス・ジマー
撮影はクラウディオ・ミランダ…「ベンジャミン・バトン」

【キャスト】

トム・クルーズ(マーヴェリック)
マイルズ・テラー(ルースター)
ジェニファー・コネリー(ペニー)
グレン・パウエル(ハングマン)
ヴァル・キルマー(アイスマン)
ジョン・ハム(サイクロン)
エド・ハリス(ハンマー)
アンソニー・エドワーズ(グース)※アーカイブ映像
メグ・ライアン(キャロル)※アーカイブ映像

【感想】

大ヒット作「トップガン(1986)」から36年の時を経て公開されたシリーズ2作目。2019年には撮影を終え、同年公開予定であったが、度重なる公開延期を経て3年越しの2022年に公開となった。トム・クルーズ主演作品の全米初週末の興行成績としては、自己最高記録だった「宇宙戦争(2005)」を約2倍上回るメガヒットスタートを切っている。ちなみに、トム・クルーズが主演した「オブリビオン(2013)」でタッグを組んだジョセフ・コシンスキーが本作の監督を務めた。

本作は前作のリスペクトやオマージュが嫌味にならない程度で、これほどの時を経た続編として申し分ない出来であると感じる。前作同様、王道に王道を重ねる展開で意外性など全くないと言っても過言ではないが、ここまで突き通せばすごいものはできる。

「トップガン(1986)」リスペクトをしつつも、トム・クルーズの代表作「ミッション:インポッシブル」シリーズと同様、トム・クルーズという人間を映画内で表現していると言える。その意味で、近年の「ミッション:インポッシブル」シリーズの成功は本作にも多大な影響を与えていると言える。「もういらない」という有人飛行を自身の映画人としての役割に象徴させ、生身の人間によるスタント、そして演じている俳優にしかできないことを映画内でまたしても実現させている。さすがに戦闘機の操縦までは許可が下りなかったそうだが、それ以外のシーンでは本人が操縦しているところに大きな意味がある。

本作のマーヴェリックは勲章ももらっていて昇進してもいいはずなのに、「なぜまだ大佐なのか」と質問を受けて「ここが僕のいるべき場所です」と答えている。もう管理職として若者を育てる立場に落ち着いても良いのに、現場でバリバリ働きたいというトム・クルーズ本人の願望を物語っている。トム・クルーズの過去作にも現場を離れて管理職になるという設定は「ミッション:インポッシブル3(2006)」でも描かれたが、教え子を救出するためにすぐさま現場復帰するという筋書きだった。でも、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション(2015)」では、スパイ組織などもういらない組織だと言われて、それでもチームで乗り越えて行くことで存在意義を示していた。本作にもチーム戦というところも映画内に色々散りばめられている。有人飛行で成果が出ないと無人飛行に予算を回されてしまうため、仲間の仕事がなくなってしまう。だったら自分が有人飛行で結果を出して仲間のために体を張ってやろうじゃないかという展開である。これぞトム・クルーズという生身の人間がアクションをする映画を支えるスタッフのためと言えよう。実際に本作にも多くのスタッフが携わり、クレジットの最後には「1万人に仕事を創出した」と記されていた。また、特にラストにかけてのアクションはトム・クルーズ一人ではなくみんなの力で乗り越えるというものになっている。

さらに、本作もまた「ミッション:インポッシブル」シリーズ同様に映画製作自体を反映している。本作内でシミュレーターを使って失敗する度にマーヴェリックは「原因は」と聞いて、納得できる答えが返ってこないと「それで遺族が満足するか」と言っている。つまり、映画製作で妥協したり失敗したりして、「観客が満足するか」と言っているようなものである。それくらい本気になって映画製作をやるべきだと、他人や自分に言い聞かせているようである。

そして、「ミッション:インポッシブル」シリーズになくて、本作にあるのは女性とのロマンスであろう。「トップガン(1986)」のケリー・マクギリス演じるチャーリーとのロマンスは「こういう映画だから」という意味合いが強かった。何ならバーで口説いた女が教官でしたってところでオチが付いていた印象もあり、その後彼らが結ばれるのはもはや惰性のような気もした。正直言って本作もその印象は拭えないけど、トム・クルーズの映画にはやっぱり必要なんだという娯楽映画の伝統を感じさせる。これほどの任務のために動いているのに、女と遊んで呑気なもんだというツッコミはあるにはあるが。さらには、短いながらもラブシーンは用意されていた。ただ、抱き合ったりキスしたりするシーンよりも笑顔で会話するシーンの方が長かった。この方が印象が良いし、トム・クルーズの笑顔がどれほど映画に必要かをトム・クルーズ本人が一番わかっている。本作の最後の映像も、「ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」「ジャック・リーチャーNEVER GO BACK(2016)」などの最後の映像と同様にトム・クルーズの笑顔である。コメディ要素も緊張感みなぎる任務に対する程よい緩衝材になっていた。

また、本作を見て連想したのは、「ロッキー」シリーズに対する「クリード」シリーズである。「ロッキー」シリーズでは、ライバルであり親友でもあったアポロが「ロッキー4/炎の友情(1985)」で試合中にソ連のドラゴに殺されてしまった。そして、長い時を経て「クリード/チャンプを継ぐ男(2015)」では、アポロに隠し子アドニスがいて、彼が父のライバルであり親友でもあったロッキーに教えを乞うというものだった。この「トップガン(1986)」でもマーヴェリックの親友だったグースが死に、本作で彼の息子ルースターがマーヴェリックの教えを乞うことになる。

そして、本作の冒頭は「トップガン(1986)」のまんまリメイクである。ケニー・ロギンズの「Danger zone」をバックに、空母への戦闘機の発艦、着艦の映像をテンポよく流していく。これはテンションが上がらないわけがない。まんまリメイクでも映画館で見るという効果も手伝ってか最高の掴みになっている。また、ケニー・ロギンズの「Danger Zone」を冒頭の1回しか使わなかった点は評価したい。「トップガン(1986)」では「Danger Zone」が最初の30分は10分に1回は流されていた。それがくどくなってくると今度はベルリンの「Take my breath away」がまた10分に1回流れて、その後また「Danger Zone」が流れるという、音楽演出でははっきり言ってくどい映画であった。また、どっちかというとスティーヴ・スティーヴンスによる「トップガン アンセム」をメインで流していたところも評価したい。

それから、ノースアイランドに来たマーヴェリックが酒場で若いパイロットらにおごらされて店から追い出されてしまう。そして翌日若いパイロットらの前にマーヴェリックが現れる展開も「トップガン(1986)」オマージュ。また、マイルズ・テラーが口髭を生やしてサングラスをするだけで、前作で父を演じたアンソニー・エドワーズを思わせるんだからそれは凄い。

さらに、「トップガン(1986)」ではビーチバレーのシーンがあり、本作ではビーチアメフトのシーンがある。「トップガン(1986)」でのビーチバレーは、アイスマンとの対抗意識を強調する意味合いと、特に女性ファン向けのサービスシーン、それからセリフがない場面のため音楽を流せるという意味合いのシーンだった。本作では「さすがにこんなことしている場合か」と言いたくなるが、チームを固める意味合い、それから変わらぬトム・クルーズが若手に引けを取らないことを示すシーンにもなっている。

また、トム・クルーズとともに前作から続投組のヴァル・キルマーも登場する。咽頭癌を患ったことにより以前のように話せなくなったヴァル・キルマーのために用意されたシーンは何とも感慨深い。何度かマーヴェリックとアイスマンが電話ではなくメッセージでやり取りしているというのも良い。トム・クルーズは涙こそ流さなかったが、目に涙を含んだ顔を見せたのもいつ以来だろうか。アイスマンというキャラクターへの最大の賛辞であり、このキャラクターの死で追いつめられたマーヴェリックが立ち上がっていくのも娯楽作の主人公らしくて良い。

アイスマンの死を期に司令官交代を告げられた後、マーヴェリックは自分の手で任務が成功する可能性があることを証明して見せる。ベテランが若手に打ち勝つ話も定番としてよくあるが、完膚なきまでまでに打ち負かす。だってトム・クルーズ以上のアクション俳優がいないんだから彼が一番で良いじゃないかという話だ。その後のサイクロンが究極の二択を迫られどうしようかと言っていると、前に出て言おうとして「何も言うな」と言われるあたり、彼のアクションへの熱情は誰かが止めないと止まらないものなのだ。

そして、任務をクリアするためにはどんな難関があってどれだけ困難か、そしてどれだけの時間しかないかをモニターの映像、そしてシミュレーターでの映像で2回見せるという非常に丁寧な下地を作っている。これぞ娯楽作の教科書とも言うべき演出で、大人から子供まで誰が見ても分かるような工夫はさすがである。これは前作のラストが急遽出動することになって、何がどうなって解決したのかという明確な理屈はあまりないまま終わった印象はあったが、本作はその反省を生かしてか、乗り越える壁という意味での明確な理屈も提示していたように思う。また、この任務は「スター・ウォーズ/新たなる希望(1977)」のデススター破壊を思わせる。

任務の遂行シーンはもちろんだが、本作の一番の見どころはドッグファイトシーンである。かつての映画でも描かれてきたが、本作のドッグファイトシーンは群を抜いて良い。ジョセフ・コシンスキー監督、トム・クルーズ主演の「オブリビオン(2013)」でも渓谷でのドッグファイトをやっていたが、ベースがCGのアクションとは比べようがない。

また、ラストの敵国は「トップガン(1986)」同様に明らかにされていない。前作の音声解説によると、当初は北朝鮮を敵国として想定していたが、友好に向けて話をする上での妨げになる可能性があると国から指摘されて具体的な国名を出せなかったらしい。どこかわからん敵と戦うという曖昧さが「トップガン(1986)」らしい軽さにも繋がる要素ではあった。本作ではNATOの同盟国を脅かすとなっているので、NATOに加盟していないどこかの国がアメリカと同盟国の脅威になっているということになる。さらには敵のパイロットは顔の分からない黒のヘルメットをしているので、人種なども分からないように配慮している。ただ、調べたところによると第5世代の戦闘機の外観からロシアであることは間違いないようである。

そして、マーヴェリックとルースターのお互いがお互いを助け合うという熱くなる展開。助かったルースターの下へマーヴェリックが得意のトム走りで向かうと、マーヴェリックはルースターを突き倒して言い合いを始めてしまう。言い合っても仕方ないことに気付いて「まあ助かった良かった」というところも良い。

その後は敵の戦闘機を奪って逃げるという、かつての戦争映画を思わせる展開。アメリカでは2006年には退役しているF-14という過去の産物となった戦闘機。2機を相手にしたドッグファイトで第5世代の最新の戦闘機にも打ち勝ってしまう。この第5世代の戦闘機の大きな特徴はステルス性らしいので、ドッグファイトで強いかどうかは本作でルースターが言っているようにパイロットの腕次第なのだろう。最後にハングマンに助けられる展開も王道である。そして車輪を失ったF-14が空母に着艦する際にみんなで止めるのも、走り出したら止まらないトム・クルーズを何とか止めるようである。

ここ最近の大作映画の結末は「アベンジャーズ/エンド・ゲーム(2019)」にしても「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021」にしても主人公の死であることが多かった。本作も割と湿っぽい展開もあって、主人公が死ぬのかなと思わせる展開、演出が何度かあるものの、やっぱり主人公はトム・クルーズ。主人公を死なせるわけにはいかないというお約束の如く困難を打ち破っていく。こういった湿っぽい終わり方ではなく、往年の娯楽大作のカラッとした明るい終わり方も爽快感がある。ちなみに、トム・クルーズは「オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014)」の中で何回も死んでいる。

エンドクレジットでは、登場人物の映像と名前のクレジットという、これも「トップガン(1986)」と同じ手法で、トム・クルーズの笑顔で終わるのはやっぱり素敵である。そしてトニー・スコット監督への追悼クレジットも用意されていた。

これほど王道に王道を重ねる展開でも全く嫌味がなく、長い時を経た人気作の続編と言う大きなプレッシャーの中でこれほどの映画を見せてくれたトム・クルーズら製作者陣には感謝しかない。この配信で映画を見る時代に、映画館でなければ体験できない映画を作ってくれたということも大きな意義があるだろう。ケチを付けようと思えばいくらでも付けられるのだろうが、紛うことなき最高の娯楽作。

 

【関連作品】

トップガン(1986)」…シリーズ1作目
「トップガン マーヴェリック(2022)」…シリーズ2作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【予告編】

 

 

【配信関連】

 

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

 

<BD+DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├離陸許可
├新境地の開拓-「トップガン マーヴェリック」の制作
├“飛ぶこと”へのラブレター
├ダークスターの創出
├「Hold My Hand」レディー・ガガ(ミュージック・ビデオ)
├「I Ain't Worried」ワンリパブリック(ミュージック・ビデオ)

 

 

<4K ULTRA HD+BD>

 

収録内容

├上記BDと同様

 

<4K ULTRA HD+BD(2作品収録4枚組)>

 

収録内容

├「トップガン」

├「トップガン マーヴェリック」

 

【音楽関連】

 

<Lady Gaga「Hold My Hand」>

 

 

<One Public「I Ain't Worried」>

 

 

<サウンドトラック>

 

収録内容

├13曲/45分