ギター練習前にウォームアップ(ウォーミングアップ)を実践している方は多いんじゃないでしょうか?。しかし、そのやり方やアップにかける時間は人によって千差万別だったりします。
 
 今回は、「そもそもウォームアップって本当に効果あるの?」、「効果のあるウォームアップってどれなの?」、「というか、そもそもウォームアップって何なの?」という疑問について解説する記事となっています。
 
1.そもそもウォームアップとは?
 恐らく、多くの方はウォームアップの効果についてはなんとなくは理解していると思います。例えばギターを弾き始めてから、10分くらい手を動かしていると、段々手の動きがスムースになっていって、体感的に「勘を取り戻した」とか、「身体が慣れてきた」と感じることはないでしょうか?あれ、勘とか慣れとかじゃなくて
 
 生理現象によって実際に動きやすい状態になっています。
 
 具体的に何が起きているかというと、本運動の前に準備運動を行うことで、血流量が上昇し筋温(筋肉の温度)も上昇します。筋温が上昇すると以下のようなことが起きます。
 
 ・関節内の滑液と呼ばれる潤滑油のような役割の液体が分泌され、スムースに動く
 ・中枢神経が興奮状態となり、反応速度が向上する。
 ・筋肉、腱の柔軟性が高まり、関節可動域が広がる
 
 そう、確実にパフォーマンスが上がっているのです。 筋温は38度程度で多く滑液が分泌され、大体15分程度の運動でその温度に達すると言われています(個人差あり)。そういった意味では、筋温が高い人、高くなりやすい人は運動のポテンシャルが高いと言えるでしょう。
 
2.ウォームアップのやり方
 本章では左手と右手のウォームアップのやり方について解説します。内容は簡単。筋肉を温めるためのエクササイズをすればよいのです。
 
2-1.左手
(1)グーパー体操
 ギターを弾かずにできる方法としてはグーパー体操。末端冷え性の人の改善エクササイズなんですが、やり方は簡単。手がポカポカするまでひたすらグーパーを繰り返すだけ。難点として結構疲れるところです。
 
(2)トリルとレガートを繰返す
 全ての指でトリルやレガートを行います。手がポカポカするまで繰り返します。フィンガリングの持久力UPも期待できるのでギターがある環境ではトリル、レガートが効果的です。
 
2-2.右手(腕)
 右手(腕)はちょっと複雑です。動き別にウォームアップを解説します。
 
(1)開閉する動き (ストローク) 
 腕を開閉する動きはストロークに使う筋肉です。ポカポカするまで開閉を繰り返します。負荷をかける必要は全くありません。
 
(2)ひねる動き(ピッキング)
 車のキーを回したり、丸いドアノブ(最近あんまりないですね)を回すひねる動きは、ピッキング時に使う筋肉です。これ前項と同じくポカポカするまで繰り返します。
 
(3)振動させる(速弾き)
 ここは普段使わない筋肉ですね。肘の裏あたりにグッと力入れてプルプルさせる、速弾きに用いられるエルボーピッキングというやつなんですが、これはさすがにギターがあったほうが良いかなと思います。
 
 肘の裏あたりにグッと力を入れて、開放弦(何Fでも良い)を限界まで速く刻みます。できれば6連符ずつ弦移動しながらが良いでしょう。弾ここでは弾けているか、弾けていないかは全然問題ではありません。実際に使う筋肉を温めるというのが主目的なのでそこは問いません。
 
 で、ざっと右手と左手で書いてて気づいたんですけど、筋肉の温度を上昇させる手っ取り早い方法としては、こんな局所的で末端の筋肉でちまちまアップせず、大腿筋、胸筋、背筋などの大きい筋肉でトレーニングしたほうが効率的であると考えます。
 
2-3.避けるストレッチ
 ウォームアップには大きく分けてダイナミックストレッチスタティックストレッチの2種類のストレッチがあります。2-1.2-2で紹介したのはダイナミックストレッチに当たるんですが、指を開いてじっくり筋肉を伸ばすような動きはスタティックストレッチと呼ばれます。
 
 このスタティックストレッチ本運動前のウォームアップには適さないと言われています。というのも、筋温が上昇しなかったり、反応速度が低下したり、伸張反射(無理な動きを避けるための反射)が発生しにくくなったりと、昨今のスポーツの世界では運動前に行うことは非推奨となっています。
 
 また、スタティックストレッチは、筋肉をリラックス状態にできるとか、疲れを残しにくいといった練習後に向いている効果がありますので、毎日元気な状態で練習したい人は積極的に練習後に取り入れたいところです。
 
3.ウォームアップが長くないと上手く弾けない?
 これはギターを一番練習していて、一番成長のなかった若かりし頃の話なんですけど、ウォームアップというか、一番調子よく弾ける状態になるまで、1時間とかそれ以上の長時間弾かないと駄目な時期があったんです。
 
 当時は「長く弾いていると手がだんだん慣れてきて、上手く弾けるようになる」というふうに解釈していて、ウォームアップって長いんだなぁという風に思ってたんです。
 
 結果から申しますと、単に手が凄く力んでいて、長い時間弾き続けると手が疲弊し、いい感じに脱力出来て、調子よく弾けるようになるという状態なっていたというパターンです。だから、次の朝起きると手の筋力は回復して、また強く力むことが出来てしまうので、上手く弾けなくなっている。元気のいい状態ほど下手くそという凄い悪循環になってたことがありました。
 
 教訓的な話にはなりますが、ウォームアップに時間のかかる方、以下2点に注意です。
 ・1時間もかかるようなウォームアップはこの世に存在しない。
 ・調子が出るまでに時間がかかる場合、根本的な弾き方が間違っている。
 
4.まとめ
 ウォームアップの本来の意味は身体を温めて、運動・演奏に適した状態にすることです。しかしながら、ギター教則の世界では全然ウォームアップにならないような単なるマッサージや運指トレーニングがウォームアップとして紹介されることが散見されます。
 
 ウォームアップってやり方色々あるけど、本当に効果あるのはどれ?と悩んでいる方は"ウォームアップ=筋肉を温めるための運動"と認識し、色々実践したのち、自分に合ったものを選択していただければいいのかなと思います。
 
 
おしまい☆

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