「Nのために」第9話~最終章~前編~今夜事件の幕が開く! | 日々のダダ漏れ

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「Nのために」



 
第9話 
最終章~前編~今夜事件の幕が開く!
 
 
高野) 書いてあることが、本当のことか、
    確かめてほしい。

 
夏恵) 「もっと早くに、この事を伝えられていたら、ど
    んなによかったかと思います。
14年前の夏、さ
    ざなみに、火をつけた人のことです。その人が、
    誰かを知っていて…今まで、隠していました。
    あの日、火が出たという知らせを受けて、すぐ
    にさざなみに向かいました。中には、まだ周平
    さんと慎司君がいると聞いて、居ても立っても
    居られず、燃えるさざなみの中へと飛び込み
    ました。


(回想)
周平) 何で助けに来たんぞ! 死なしてくれや。
夏恵) 何言いよん。ほらっ!
    周平さんが火ぃつけたん!?
周平) 店売ったって、金なんか、残りゃあせんのよ。
    俺には、何もないんよ…。死にさえすりゃ、生
    命保険で、慎司を大学に行かしてやれる。
    頼む。死なしてくれや…。
    いかんて。そんなこと考えたら!


夏恵) 「泥沼でもがくような周平さんを見ていられな
    かった。周平さんに疑いがかからぬよう、放火
    の事実を隠し、証拠品から、指紋を拭き取りま
    した。警察官の妻でありながら、犯人隠避罪、
    証拠隠滅罪という、2つの重い罪を犯しました。
    あの日から、何もかも変わってしまいました。
    私が話せば、たくさんの人が、取り返しのつか
    ないことになる。私の罪で、茂さんが駐在の仕
    事を失うのは、たまらなく苦しく、14年間、隠し
    ておく事しかできませんでした。茂さんが定年
    を迎え、事件が時効を迎える前に、ここに、全
    てを告白します。どうか、許してください。夏恵」。

慎司) 書いてあることはホントやと思う。
高野) お前を疑って、やさしくしてやれんで、すまん
    かった。何であんとき、あそこにおって、火事
    場を見とった?
慎司) 引っ越しの前の日やったけん、要らんもん捨
    てに出とった。俺を巻き込みたくなくて、1人で
    火を付けたんやと思う。俺も親父も、明日から
    どうなるか分からん。暗いこと考えてたら、飲
    み込まれそうになっとった。戻ったら、さざなみ
    が燃えとるのが見えた。それから親父は、俺と
    あまり目を合わせんようなった。何もかんも投
    げやりやったし、やってしまったことに、耐えら
    れんかったと違うかな。
高野) お前は…分かっとったんやな。
慎司) うすうす分かっとって、最後まで聞けんかった。
    俺が疑われとったし、それでええと思った。
    夏恵さんには、すまんことして…。
高野) 夏恵のことはええけん。
    夏恵には、俺がついとるけん。
慎司) バカや。親父は…。
高野) 許してやり。
慎司) できんよ。
高野) 今でなくてええけん。いつか、許してやり。
    希美ちゃん、お前がやったと思うて、
    かばったんやな。
慎司) うん。
高野) あんとき、車ん中で、希美ちゃん、
    何を言うたん?
慎司) たいしたことやないよ。


(回想)
希美) 成瀬君なら、どんなことやってできるよ。


慎司) 「どんなことだってできるよ」。俺が暗いほう向
    かんように、そう言うてくれた。杉下は、俺を守
    ってくれた。スカイローズガーデンの事件の後、
    またお互い会わんようになって。杉下がどんな
    気持ちでおったんか、ようやく分かった。
高野) 10年前、それぞれに、
    大事な相手がおったそうやな。
慎司) 俺は杉下やった。
高野) お前のNは、希美ちゃんやったか。
    なのに、会わなくなった。


**********

西崎) 今にも崩れ落ちそうなつり橋の向こうに、
    杉下がいたとしよう。
安藤) はっ? 何でそんなとこに?
西崎) 杉下がつり橋の向こうで、「助けて」と呼んで
    いたらどうする? 君はつり橋を渡るか? 橋が
    崩れ落ちるかもしれない。今までの生活には
    もう戻れないかもしれない。
安藤) 杉下はそんな簡単に「助けて」って言わない。
西崎) 言ったとしたら?
安藤) 何だってする。何の話? 杉下に何があった?
西崎) 大した話じゃない。ただ、あの日がなければ、
    杉下は幸せになっていたんじゃないかな、とか
    思うと、胸が痛む。
安藤) これからだよ。西崎さんも、杉下も、俺も。


**********

電・西崎) 西崎です。成瀬君。
      もう一度、杉下を助けてやる気はないか? 
      杉下本人は誰の助けも必要としていない。
      だが、あるいは、成瀬君ならと思ってね。
電・成瀬) 相変わらずまわりくどいですね。
電・西崎) 単刀直入に言おう。杉下は…。


**********

希美) 10年ぶりやね。
慎司) うん。
希美) 島は、どうやった?
慎司) 変わらんよ。さざなみの放火事件も、
    解決つきそうや。みんな俺を疑っとったけん。
    杉下がかばってくれて助かった。
希美) どういうこと? 誰がやったん?
慎司) もうこの世にはおらん人や。
    恨みごと言いたくても、言いようないけんな。
希美) 成瀬君や、ないんよね?
慎司) ないよ。
希美) ほうよね…違うんよね。
    私、とっさに嘘ついてしまったんよ。
    ギリギリのとこにおって、自分じゃ、どうにもな
    らんで、辛かった。あの火を見てたら、父親も
    母親も、あの女も、全部消えてったんよ。自分
    を縛るもんは誰もおらん。そう思って上向けた。
    大袈裟かもしれんけど、成瀬君が火で私を救
    ってくれたって、思った。ごめんなさい。
    成瀬君の大事な家が燃えとるのに、
    私、何てこと考えとったんやろ…。
慎司) そんで、上には行けた?
希美) ほうねぇ。私、欲しいもんはそんなにない。
    食べるもんがあって、帰るウチがあって。
    それを誰にも取られんなら、それでええんよ。
    どん底におる気がして、そっから這い上がる
    出口が、うんと上に見えたんやね。
    手が届かんくらいの。ずっと上に。
    成瀬君はどうしとった?
慎司) 神楽坂のフレンチで働いとる。
    春にはそこ辞めて、島に帰ろうと思っとる。
希美) 帰るん?
慎司) 島でオープンする店に誘われた。
    地に足のついた所で、人の思い出に
    残るような料理作れんかなと思って。
希美) ええね。成瀬君らしいね。
慎司) 一緒に帰らん? ただ、一緒におらん?


**********

そのとき考えていたのは、
大切な人のことだけだった。
その人の未来が、明るく、幸せであるように、
みんな、一番大切は人のことだけを、考えた。


**********

夏恵の告白は、まあそうだろうなあって、想定内だっ
たので、驚きはないのだけれど…。もう今さら自首は
しなくていいんじゃない?とは思う。自分の罪悪感は
分かるけど、もう死んでるとはいえ、死者に鞭打つ行
為になるような。どうせなら、そういう秘密は、墓場ま
で持っていかないと~。犯人が誰であれ、あの火事
が、あの時の希美を救ったのは確か。もう、どこにも
行けない、逃げられない閉塞感に苦しんでいた希美
の心を、あの火事が救った。勘違いだったとしても、
そんなことはどうでもよくて、ただ、あの時、2人がそ
こにいたことが重要だった。罪の共有、いえ、あの時、
それぞれの苦しさを共有して、その苦しさを分かちあ
えたように思えた人が、そばにいたことが、2人にと
っての奇跡だったのだから。慎司もまた、希美がくれ
た「どんなことだってできるよ」という言葉に救われた。

希美のためなら、何でもできる男が2人。助けを求め
ない希美が、唯一助けてと言える相手は慎司だった。
そのことを思い出した西崎が、希美をサポートできる
男として選んだのは…。希美にとっての安藤は、好き
と同時に、憧れであり、だからこそ守られるより、守り
たい、光のままでいてほしい存在なんだと思う。希美
と同じように、闇を知る西崎には、光の世界の象徴の
ような安藤を、守りたいと思う希美の気持ちが、すごく
よく分かったんだろうなあと…。西崎さん、グッジョブ!

もうね、ラストの慎司と希美のシーンにキュンキュンし
ちゃいました。一緒に暮らそうとか…結婚しようとか、
プロポーズじゃなくて、ただ、一緒に帰らん? ただ…
一緒におらん?と。ただ、一緒にいる。あの時、ただ
一緒に火事を見ていたように。ただ、一緒にいようと。
うわぁああああ! ごめん、安藤も好きだけど、やっぱ
り慎司に肩入れしちゃうよ~! 慎司を選んでくれ~!
事件の方は、どういうことなのか見えているので、気
になるのは、希美が一緒にいたいと思うのはどっち?
ってことだけ。過去より、今の、未来の希美が気にな
るよ~。どういう形であれ、幸せになってほしいと…。
Nの未来が、明るく幸せであってほしいと…願います。

 
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第10話~明かされる事件の真実・・・N達の未来

●「Nのために」HP


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