ご案内の通り現在、新津章夫の未発表音源を集めたCDの制作中です。
その中で彼が21歳の時、多重録音を始めた1973年の記念すべき(笑)第一号作品を発見しました。
コード3つ、リフ1つのシンプルな曲ですが、ジャズの名曲「Take Five」が大好きだった彼らしく変拍子のジャズロック風のアレンジです。2チャンネルのオープンリールデッキのピンポン録音(ひとつの楽器パートを録音したら、それをバックに2つ目の音を重ねていくスタイルの多重録音)で作られています。
始まりはサイレンですが、これは後にドハマりするエフェクター(最近はペダルと呼ぶそうですが…)の中で彼が始めた購入した新栄電器(Shinei)というメーカーの効果音機能付きワウワウ&ボリュームペダル兼用のモデルに付いていたひとつの機能です。この効果音には「未来永劫」でも使用されている波の音(ホワイトノイズですね)もあってプロになってからも使用しておりました。
イントロのハーモニックス音は中途半端に聞こえますが、これはテープの編集中に誤って最初の音を消してしまったための事故です。新津章夫は録音したオープンリールのテープを切り貼りして編集していたので、何度もオリジナル音源を失う事故を起こしております。
途中2分40秒ほどのところからディストーション音(使用しているのはHoney製のファズ)のギターソロが始まりますが、その直前のシューッ!という効果音はオープンデッキの電源をオフにすることでテープの自走がゆっくりと停止し、再生すると逆に速くなりシューッという上昇音になる効果を狙ったものです。これは事故ではありません(笑)。
この乱暴極まりない技術は、「I/O」の「ブラックホール」のエンディングでも用いられています。あちらの場合は使用したアンペックスのMTRに付いている電力安定ボリュームを徐々に下げるという信じられない暴挙に出ました。
2、3個のギターエフェクターだけでミキサーもなければエコーもない。そんな貧弱な機材で新しいことをやろうと思うとテープを切り貼りしたり、テープレコーダーの電源を落とすなどという前代未聞の行為以外の方法はなかったわけです。
しかし、21歳の時に初めて作った多重録音のエンジニアリング(と言っていいと思いますが)が、その後の新津章夫の音作りの礎になろうとは驚き以外の何ものもありません。





