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新津章夫 Official Blog 《迷宮の森》

謎に満ちた迷宮のギタリスト、新津章夫のオフィシャル・ブログ。迷宮の森 《Forest in maze》

夏の甲子園決勝、日大三高は沖縄尚学に敗れ準優勝となりました。残念。

 

実は日大三高は新津章夫の出身校なのです。1972年のセンバツ優勝時には当時、神戸に住む叔母の家から甲子園に応援に出かけていました。ふだんから野球には興味のない人でしたが、それでも母校が優勝となると黙っていられなかったのでしょう。ちなみに、プロ野球はヤクルト・スワローズのファンでした。

 

当時、日大三高は東京のど真ん中、赤坂にありました。今では考えられませんが、歴史は古く大正時代には赤坂中学校と呼ばれていたそうです。

 

ラジオの深夜放送(パックインミュージック)が大好きな新津章夫は学校帰りには近くにあったTBSラジオに寄って見学したり、公開番組を聴きに行ったりしておりました。

 

ふと、そんなことを思い出した2025年8月23日の午後。

 

これは以前にも書きましたかね? さすがに20年以上やっていると忘れている…。

 

トランザムという日本のロックバンドがありまして、この頃(1981年)はすでにメンバーも大幅に入れ替わってしまい、元々のトランザムらしさはなくなっていたのですが、なんと新津章夫のプロデュースで1枚アルバムを作っています。

 

仕掛け人は毎度おなじみのビクターレコードの高橋卓士さん(元ソルティーシュガー)。高橋さんは新津章夫をとても気にいって下さっていて、アイドルからロックバンドまでいろいろなプロデュースの話を持ち掛けていただいたのですが、残念ながらどれもヒットはしませんでした。高橋さんご自身は業界でも有名な大ヒットメーカーだったのに、せっかくの依頼を成功させられず申し訳なかったです。兄に成り代わってお詫びします。

 

新津章夫は実はトランザムの大ファンで、私も一緒にコンサートを見に行ったことがありました。まだドラムはチト川内さん、ギターは石間秀機さんという絶頂期でした。しかし、「アジアの風」ではチトさんはスタジオにいらっしゃることもなく、兄はお会いできずにとても残念がっておりました…。

 

さて、このアルバム「アジアの風」の中の一曲、「哀しきミュージシャン」では新津章夫のギターソロが聞けます。自分のアルバム制作以外で彼がギターを弾いたのは後にも先にも、アンドレアス・ドーラウさんのアルバムとこれだけ。しかも、倍速ギターでもなんでもないノーマルのギターソロ。

 

ま、聴いてみてください。

 

トランザム「悲しきミュージシャン」

 

 

 

 

 

 

 

新津章夫ファンの皆さん、たいへん長らくお待たせいたしました。

 

未発表音源のCD化が決まりました。しかも、2枚組CDが2セットとアナログLPが1枚発売になります。

 

「I/O」のCD化をしていただいたブリッジさんとの協議の結果、私が管理しているマスター音源のすべてをCDに収録することになりました。

 

第一弾は1978年にプロミュージシャンとして発表しした「I/O」制作に至るまでの5年間の自宅録音による音源「EARLY MINIMALISM 1973-78」。「I/O」に収録した「光のオルゴール」「未来永劫」「コズミックトレイン」の宅録デモバージョンが収録されてます。

 

第二弾は「I/O」以降、ジャパンレコード(現在の徳間ジャパン)移籍後の「PETSTEP」、そして最後のアルバムとなった「ウィンター・ワンダー・ランド」までの期間に制作されたアウトテイク音源と3枚のアルバムの制作過程の音源を取り混ぜた「LATE MINIMALISM 1981-84」。こちらにはBlog開設時からお話していた「未来永劫 part2」がいよいよ公開! さらに幻となった「PETSTEP」のオリジナルバージョンが聞くことができます

 

そして、第三弾は上記の計4枚のCDから抽出したアバログLP「HOAX FOR ELECTRIC GUITAR」。こちらは海外でのセールスを見据えた1枚です。


目下、音源のマスターリング、ブックレット制作、ジャケットワークなどなど、進行中です。お楽しみに!! 
 

発売日は

「EARLY MINIMALISM 1973-78」が、9月10日

「LATE MINIMALISM 1981-84」が、10月1日

「HOAX FOR ELECTRIC GUITAR」が、10月22日

 

発売元はいずれも

 

以下はプレスリリース/オーダーシート(一部画像を編集してあります)

 

「EARLY MINIMALISM 1973-78」 

 

「EARLY MINIMALISM 1973-78」

 

「LATE MINIMALISM 1981-84」

 

ご案内の通り現在、新津章夫の未発表音源を集めたCDの制作中です。

 

その中で彼が21歳の時、多重録音を始めた1973年の記念すべき(笑)第一号作品を発見しました。

 

コード3つ、リフ1つのシンプルな曲ですが、ジャズの名曲「Take Five」が大好きだった彼らしく変拍子のジャズロック風のアレンジです。2チャンネルのオープンリールデッキのピンポン録音(ひとつの楽器パートを録音したら、それをバックに2つ目の音を重ねていくスタイルの多重録音)で作られています。

 

始まりはサイレンですが、これは後にドハマりするエフェクター(最近はペダルと呼ぶそうですが…)の中で彼が始めた購入した新栄電器(Shinei)というメーカーの効果音機能付きワウワウ&ボリュームペダル兼用のモデルに付いていたひとつの機能です。この効果音には「未来永劫」でも使用されている波の音(ホワイトノイズですね)もあってプロになってからも使用しておりました。

 

イントロのハーモニックス音は中途半端に聞こえますが、これはテープの編集中に誤って最初の音を消してしまったための事故です。新津章夫は録音したオープンリールのテープを切り貼りして編集していたので、何度もオリジナル音源を失う事故を起こしております。

 

途中2分40秒ほどのところからディストーション音(使用しているのはHoney製のファズ)のギターソロが始まりますが、その直前のシューッ!という効果音はオープンデッキの電源をオフにすることでテープの自走がゆっくりと停止し、再生すると逆に速くなりシューッという上昇音になる効果を狙ったものです。これは事故ではありません(笑)。

 

この乱暴極まりない技術は、「I/O」の「ブラックホール」のエンディングでも用いられています。あちらの場合は使用したアンペックスのMTRに付いている電力安定ボリュームを徐々に下げるという信じられない暴挙に出ました。

 

2、3個のギターエフェクターだけでミキサーもなければエコーもない。そんな貧弱な機材で新しいことをやろうと思うとテープを切り貼りしたり、テープレコーダーの電源を落とすなどという前代未聞の行為以外の方法はなかったわけです。

 

しかし、21歳の時に初めて作った多重録音のエンジニアリング(と言っていいと思いますが)が、その後の新津章夫の音作りの礎になろうとは驚き以外の何ものもありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

もうね、面白すぎます。いやぁ、このレコード屋さんのサイト。

 

まずは、これを聴いてくださいな。

 

 

新津章夫の3枚目の45回転ミニアルバム「ウィンターワンダーランド」に収録されている「N氏のナイーブ」ですが、速度を20%ほど落としてあります。

 

誰がそんなことをしろと(笑)

 

まぁ、いいんです。元々、新津章夫の音楽は「I/O」の一曲目、最初から聞いても最後から聞いても同じに聞こえる「オレンジパラドックス」に象徴されるように、音の実験とアソビが基本ですから。ちな、この曲名は私がつけました。N氏はもちろん新津章夫のことです。当時「無印良品BGM」に代表されるようにナイーブミュージックに傾倒していた兄の代表曲になるだろうと付けたものです。

 

なお、こんなアソビをしているサイトはこれです。中古レコード屋さんでしょうかね。

 

 

>一人多重録音による特徴あるセンチメンタルなフレーズと共に冬のキラキラとしたファンタジー感あるサウンドを作り上げています。

 

紹介文も素敵だなぁ。ありがとうございます。中古でなくとも先ごろリリースされた「I/O」の復刻盤や、近々発表する未発表盤の新譜も扱ってくださいませ。いや、勝手にこんなアソビをした罰として扱え(笑)

 

今後ともよろしくお願いします。

 

新津隆夫拝

 

 

新津章夫の持論のひとつに「現代の音楽の旋律はすべてバッハの『平均律クラヴィア曲集』の中に見出せる」というものがあります。彼らしい極論ではありますが、これは『よってメロディの独自性を主張することは不毛であり、これからは編曲とエンジニアリングによって音楽の個性を表す時代になる』という考えに帰着します。

 

しかしながら新津章夫のギターサウンドは独特であり奇怪で誰とも似ていない、ちょっと聞けば新津章夫だとわかる強烈な個性を持っています。それはどのようにして生まれたきたのか。

 

そのひとつが先にも出したバッハです。

 

 

これは彼の死後に私が制作した「Science Classics」(2005年 Bridge Inc.– EGD15)というアルバムに収録されているバッハの「イタリアンコンチェルト」ですが、これだけでも完パケしているテイクが約10通りあります。

 

この曲はもちろん鍵盤楽器によって作られた曲ですがギターで演奏する人はいます。

 

 

 

見ていただけるとわかりますが、ギターのために作曲された曲ではないので運指がきつそうです。6本の弦を5本の指で押さえるギターにとって合理的な旋律ではないのです。

 

ジャズベーシストのスタンリー・クラークは若い時にジョン・コルトレーンの旋律をベースで弾いて練習したと語っていました。スタンリー・クラークの独創性のひとつはサックスの運指にとって弾きやすい旋律をベースで弾いたことがあるのです。

 

有名なギタリストの心地よいフレーズをコピーして自分なりのメロディを作っていく。誰しも経験があるでしょう。しかし、そのうえでギターの運指の合理性などはまるで考えられていない旋律を練習してみる。これによってギタリストの個性が育まれることも大切だと思うのです。

既報の通り現在、新津章夫の未発表音源をまとめた新譜を制作中です。新津章夫は生前3枚のアルバムを発表しました。それらの制作過程では完パケしたものの選に漏れたものや何テイクか作って採用されなかったものもあります。それらをまとめたものが今回の新譜に収録されます。

 

その作業のため、この夏は日本で、9月にイタリアに戻ってからも段ボール4,5個にもなるオープンリールのテープを来る日も来る日も聴いているのですが、にわかには信じがたい発見をしました。

 

まずはこれを聴いてください。

 

 

マニアの方ならばわかるかもしれませんが、これは「未来永劫」です。しかし、逆回転になってます。このテープの前後には「ブラックホール」や「天気雨」のデモが入っています。

 

最初から聞いても最後から聞いても同じ曲に聞こえる「オレンジパラドックス」は音楽の実験をひとつのテーマにしていた新津章夫を代表する一曲ですが、途中の「ピッ!」の音(あの音はシンバルのアタック音です)からは前半の逆回転になっていますが、どのように録音したかというと、自分で演奏した前半を逆回転させて、それを忠実にコピー演奏するのです。

 

はっきりいって狂ってます(笑)。デジタルの時代の今であれば、そんなことはパソコンで誰でも可能ですが、最後のアナログ年ともいえる1970年代後半では、デジタルに似せたアナログを作るしかなかったわけです。

 

さて、「未来永劫」の逆回転テープがデモテープの途中に入っていたというのは何を物語るのか? どうやら「未来永劫」の逆回転版、「未来永劫・オレンジパラドックス風味」を考えていたようなのです。

 

あきれてものも言えん。

 

追伸 何年も前からファンの方々とお約束していた「未来永劫 Part2」ですが、今回の未発表音源盤に収録されます。お楽しみに。
 

 

 

 

 

以前にも触れたように目下、新津章夫の未発表音源をまとめたアルバムを制作中です。年内発表を目指していますが日伊に分かれて作業をしておりますので正確な発売日はまだ発表できる段階にありません。


しかし、「I/O」のファンの方々の期待を裏切らない内容にしたいと思っております。新津章夫本人が思い残したひとつである「未来永劫 part2」も収録予定です。かつてmixiの新津章夫のフォーラムで宣言したものの、ずっと放置したままだったため「アンタ、出す出す言うてちーとも出さないやないの??」と突き上げを食らっていた案件でもあります(笑)。ついに、ついに、日の目を見る日が来ます。


とはいえ、段ボール4箱にも及ぶ音源のチェックはなかなか骨の折れる作業で、もっとも大きな問題は再生する機材がないこと。さすがに製造から40年、50年も経過しているオープンリールデッキはモーターのトルクが下がっていて、まともに聞けたもんじゃあない。なのでテープをイタリアに持ち帰り、こちらの友人から借りパクしているTEACで聞いている最中です。


兄はスタジオに籠もると「鶴の恩返し」よろしく、作品が仕上がるまでは外に出てくることはなく、仕上がった新曲は必ず真っ先に私に聞かせてくれました。


なので私自身は彼の作品は制作工程からすべて知っているつもりでしたが、今回こうしてチェックしていると、聞いたこともない曲や発表されているのとは別テイクがあったりして驚きました。


例えば、彼の代表作のひとつである「光のオルゴール」。あの煌めく主旋律は当たり前のように4倍速のギターだと思っていたのが、デモテープの中には2倍速で録音されたものがあったり。また、「未来永劫」の途中のバロック部分は別録りして物理的にテープ編集をしているのですが(オープンリールのテープを切って貼り合わせるのです)、バロック部分のないオリジナルベースは聴いたことがありませんでした。さらに「ブラックホール」のエンディングは徐々に音程が上がってフェイドアウトしていきますが、あれはトラックダウンの時にMTR(マルチトラックレコーダー)の主電源についている電圧のコントローラーを下げていくことでテープの速度が下がり、再生すると逆に音程が上がって聞こえるという効果を使っていますが(超アナログ、超物理的エフェクト!)、デモテープの「ブラックホール」のエンディングは音が上がりません。なんとも不思議な終わり方をします。


そんな音源もいずれ機会があれば公開したいと考えていますが、今回の未発表盤は新津章夫が完バケした曲だけを収録する予定です。必ずや皆さんが納得いただける作品に仕上げますので、とうぞお楽しみに!!