
※宅建Tシリーズについては序章をご覧ください。24年/25年の使用テキストについてはこちら
(A)民法の賃貸借と使用貸借との違い 宅建試験2022年過去問・問6
(A-1)肢①~④
P: 前回(宅建40)予告した、過去問(2022年・問6)ですね。
ここでは、A所有の甲土地を、Bが資材置場とする目的で、期間2年で
あ:ABで賃貸借契約
い:ABで使用貸借契約
した前提ですね。
S: 肢①~③は、前回の知識プラス、常識? で、正答できると思います。ね、Pくん。
P:肢① 貸主Aは、借主Bに土地を引き渡す前なら
賃貸借→口頭での契約の場合に限り自由に解除できる
使用貸借→書面で契約を締結している場合も自由に解除できる
これは、前回きいた使用貸借の条文
民法第593条の2
『貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。』
により×。
S:ちなみに「賃貸借が口頭での契約の場合に限り自由に解除できる」の正誤は?
P: これも前回触れた、賃貸借は諾成契約&有償契約(売買契約の規定を準用)なので、たとえ口頭でも、貸主は自由に解除できないでしょう。
S: ちなみに、「契約の解除」については、宅建21で紹介しています。
P:肢② 借主Bは
賃貸借では貸主Aの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできない
使用貸借では貸主Aの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる
これは、
使用貸借=貸主Aの承諾なしで転貸OK >賃貸借=貸主Aの承諾が必要
と言ってますが、前回の2005年問10・肢3と同じで、使用貸借はそもそもAが無料でBに貸してあげているので、Aの承諾は必要。なので×。
肢③は、借主Bは
賃貸借では期間内に解約する権利を留保しているときには、期間内に解約の申入れをし、解約することができる →ここでは特約で、解約できる権利をもっているので〇
使用貸借では期間内に解除する権利を留保していなくても、いつでも解除することができる→…ここは、条文の知識が必要かな?
S: たしかに、民法の条文(第598条3項)に、
『借主は、いつでも契約の解除をすることができる。』
とありますが、下の解説記事にあるように、借主BがAから無料で借りた土地を、早くAに返還しても、貸主Aにデメリットはないので、契約解除OKという理解でよいと思います。
逆に、貸主Aが使用貸借で解除ができるのは、同条(598条)の
(1) 貸主Aは、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主Bが使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
(2) 当事者(AB)が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主Aは、いつでも契約の解除をすることができる。
です。
ここで、下線の「前条第二項に規定する場合」は、
第597条
(2)当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。
なので、簡単にいえば、
・当事者(AB)が返還の時期を定めなかったとき→同項の目的に従い借主Bが使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき
・当事者(AB)が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったとき→Aはいつでも契約の解除ができる
そもそも、Aが厚意でBに貸してあげていたので、納得できるかと思います。
P: 条文の言い回しは難しいですが、Sさんのレコードの貸し借りのたとえ(筆者の時代はCD)で、判断できそうです。
S: 肢④は、甲土地について契約の本旨に反するBの使用によって生じた損害がある場合
に、Aが損害賠償を請求できる期間
賃貸借→返還を受けた時から5年以内
使用貸借→返還を受けた時から1年以内
P:貸主Aからいえば、賃貸借(5年)>使用貸借(1年)
で、〇と思いましたが…。もしくは、あざといですが、年数が違うとか…。
S: ここは、条文の知識がないと、正解できなかった箇所で、
民法第600条 ※(2)が民法改正で追加
(1)契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
(2)前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
が、賃貸借にも適用されるため、
賃貸借→返還を受けた時から5年以内
が×でした。
P: 賃貸借も使用貸借も1年というオチでしたか…。
S: ただし、600条2項の追加は、消滅時効との関係で重要な改正でしたので、詳しくは下記の解説をごらんください。
A-2) 民法(改正2020)の条文で、使用貸借と賃貸借でイコールな部分と、違う(準用されない)部分
S:さらに、
(改正後)民法第622条
第597条第1項、第599条第1項及び第2項並びに第600条の規定は、賃貸借について準用する。
となりまして、使用貸借=(準用)=賃貸借は、600条のほかに
◎第597条
(1)当事者が使用/賃貸借の期間を定めたときは、使用/賃貸借は、その期間が満了することによって終了する。
◎第599条
(1)借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用/賃貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
(2)借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
があります。
逆に、賃貸借に準用されないのは
×597条
(2)当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
(3)使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
×599条
(3)借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
です。
P: 「賃貸借」については、宅建特別編で、退去時のトラブル、とくに原状回復などを紹介しましたので、使用貸借とイコールにならないのは納得です。
S: 「民法の賃貸借と使用貸借との違い」が、25年度の宅建試験で出題される可能性は低いと思いますが、広い意味での賃貸借(民法、借地借家法、宅建業法ほか含む)についての理解を深めるうえで、2022年の過去問(問6)は解説記事を読んで、肢ごとにチェックしておくとよいでしょう。

B)金銭消費貸借契約ほか
B-1)実は住宅ローンも…
P: 使用貸借、賃貸借のほかに、前回(宅建39)ふれた13の典型契約の中に、「消費貸借」がありましたね。説明に
・使用貸借(無償で何かを借りる契約)
・賃貸借(使用料を支払った上で何かを借りる契約)
に対して、
・消費貸借(種類や品質、数量が同じ物を返還をする旨を約束した上で、財産を受け取る契約)
とありましたが…。
S: Pくんにもなじみがあるのが、「金銭消費貸借」、つまりお金を借りて、将来同じ金額(プラス利息)を返す契約、いわゆる「借金」でしょう。
友人・家族間のお金の貸し借りは、無利息でも民法上は問題ありません。
というか、ここも2020民法改正に関わる変更箇所なんですよ。
民法589条
(1)貸主は、特約がなければ借主に利息の請求をすることができない
(2)利息の支払いの特約があるときは、貸主は、借主が金銭を受け取った日以後の利息を請求することができる
P: つまり、特約がなければ利息は払わなくてもよいと。
S: 現実には、友人や親せき以外で、お金を無利息で貸してくれるところなんて、まずないですよね。
そして、当シリーズで何度も話題にしている「住宅ローン」も、
貸主:銀行 ⇔ 借主:家の購入者
間の金銭消費貸借契約です。
P:そこに、もれなく? 抵当権の設定契約も付いてきますが…(宅建28)。
B-2)語句としておさえておきたい「金銭消費貸借」:宅建試験2022年過去問・問5
S: 抵当権のときも話してますが、住宅ローンは金融機関と借り手との話で、宅建試験での出題は、「住宅金融支援機構法」関連が主です。
そして、「金銭消費貸借」が1問で出題されたケースは、1991年問9
くらいで、今後も、1問丸ごと「消費貸借」で出題されることはないと思いま。
ただ、今回A)で紹介した宅建試験2022年過去問・問6の直前の「問5・肢2」に、「金銭消費貸借」という語句がでてきましたので、この問5を紹介しておきます。

※不動産適正取引機構HPより
P: 「期間の計算」についての出題ですね。
S: 大学の民法の授業だと、「総則」で出てくるはずですが、この問題も以下の民法の条文を知らないと、正解はむずかしいかな?
民法139条
時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
民法140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
民法141条
前条(140条)の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
民法142条
期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
とくに140条は「初日不算入の原則」と言われているものですが、これに当てはまらない例外も、出題(142条-肢3)されていますね。
P: 肢2には
「令和4年8月31日午前10時に、弁済期限を契約締結日から1か月後とする金銭消費貸借契約を締結した場合、令和4年9月30日の終了をもって弁済期限となる。」
とありますが、ここは売買契約でも当てはまるわけですよね?
S: 「期間の計算」について、「消費貸借」契約だけの条文は、ありません。
この問題では「金銭消費貸借契約」 という語になじみのない、Pくんのような? 受験生を惑わすために、あえてこの語句にしたかもしれませんね。
ただ、問5については、A-2)でも「期間の満了」などのワードがでてきましたので、その「期間」の意味を深堀する目的もあって、ご紹介しました。
問5についてくわしくは、下記のリンク先記事をお読みください。
P: 「期間の計算」については、補足1に、参考説明を掲載しました。
次回は、「賃貸③ 賃貸人・賃借人の権利/義務」を予定しています。

【補足1】
Google geminiに「民法 期間の計算 具体例」できいたら
『民法における期間の計算の具体例には、次のようなものがあります。
期間の起算点が「時間」である場合、その時点から期間の計算を開始する
期間の起算点が「日、週、月、年」である場合、期間の初日は算入しない
期間の末日が日曜日や祝日、休日の場合は、その翌日が期間の末日となる
期間の計算が週、月、年によって定められている場合は、暦に従って計算する
【具体例】
6月1日午後6時に「今から30時間以内に1万円を支払う」と約束した場合、6月2日午後12時に期間の計算が終了する
1月1日から起算して2か月は、平年なら2月28日、閏年なら2月29日が満了日
1月20日から起算して2か月は、3月19日が満了日
1月31日から起算して1か月は、平年なら2月28日、閏年なら2月29日が満了日
5月30日を起算日として1か月を計算する場合、期間は暦にしたがって計算されますので、6月29日が満了日となります
5月31日を起算日として1か月と定めた場合、応当日となる6月31日が存在しないので、その月の末日たる6月30日が満了日となります』 (2025年3月28日)
【BGM】
S選曲:秦基博・カバー 「なごり雪」
P選曲:ケツメイシ 「さくら」(2021年 ver.)
【写真】 冒頭:Pixabay 中・下は筆者撮影