※宅建Tシリーズと、宅建の「基本テキスト」については、序章をご覧ください。

(1): 共有制度の見直し(23年施行・民法改正)

P:前回(宅建05)の話を聞いて、「相続人同士が遺産分割でもめて、分割協議がずっと進まない間、不動産(家・土地)の所有権はどうなるのか?」と思ったんですが。

S: 遺産分割協議がまとまるまで、相続不動産は相続人全員の共有になります。

「共有」は、基本テキストでも独立した項目として触れていますし、下記のように、23年の民法改正(2023年4月1日施行)で重要な変更がありましたので、今回はまず「共有」から。 ※補足1

 

 

P: なお、上記ページに書いてあるように、23年の改正点はほかにもありまして、遺産分割や共有物の管理に重大な影響のある変更も含まれていますが、23年の改正で23年度宅建試験で未出題の箇所は、24年度試験の前(9月ころ? )に、Sさんが、試験対策用にまとめるか、そのころにはネットやYouTubeでも、直前対策のコンテンツがいろいろ出るはずなので、その紹介をするそうです。

1-① そもそも共有とは?

と規定していますので、兄妹3人が、時間ごと/日ごとに交代で使うように話しあってスケジュールを決める(①)。

もし、Pくんが、とある日に長時間使いたければ、妹さんにお小遣いをあげて、妹さんの持ち時間を譲ってもらう(②)と、丸く収まるでしょう。

P: 妹と交渉するくらいなら、さっさと自分の自転車を買いますが…。

S: 自転車なら別に自分で買えますが、これが、相続した家(建物・土地)だとどうですか? 

両親AとCが相次いで亡くなって(遺言はなし)、子のE、F、Gが実家(建物・土地)と、預貯金300万円がのこされました。

このケースでは、宅建04で話したように、法定相続人E、F、Gが1/3ずつ相続しますね。

P: 預貯金は簡単に分けられますが、家(建物・土地)は、E、F、Gがそれぞれ持ち分1/3ずつの「共有」になり、どう分けるか? が問題になりそうですね。

1-② 民法改正(2023年4月1日施行:以下”23年改正”)で、共有物の管理・変更に関する規定が変わった

S: 民法では、共有物の管理や変更について、これまで

 ・保存行為(家の修繕など)→各共有者が単独でできる

 ・管理行為(短期の賃貸借権の設定など) →共有者の持ち分価格の過半数の同意でできる ※補足3

 ・変更行為(共有物の売却や、共有建物の増改築など) →全員の同意が必要

としていましたが、23年改正で、「軽微な変更」も、共有者の持ち分の価格の過半数で決定できるようになりました。

P:「軽微な変更」ってどんなものですか?

S:「軽微な変更」とは、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」で、たとえば、家の外壁の塗装や屋上防水などの大規模修繕、砂利道のアスファルト舗装などです。

ちなみに、「共有者の持ち分」の扱いについても23年の改正によって、

「共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。」(民法252条2-2)

と、「共有物の管理者」が、裁判所に請求して、裁判所が決定(裁判)すれば、その共有者以外の共有者全員の同意で、変更ができるようになりました。

上の例でいえば、E、F、Gが不動産を相続したけれど、Gがずっと行方不明のときなどは、「共有物の管理者」が、裁判所に請求して、裁判所がOKすれば、EとF、残る2人の共有者(全員)の同意で、「変更」行為ができる=不動産の売却ができるようになるわけです。

P:「共有物の管理者」は、「宅建士」のように特別な資格を持つ方ですか? 

S:いえ、こちらも23年改正で明文化されて、共有者の持分の価格の過半数で選任/解任ができます。「共有者」などに限定されませんし、特別な資格もいりません。

つまり、EとFが、Pくんを「共有物の管理者」に選任しても良いわけです。

1-③ 共有物の分割の決着は、最後は裁判(共有物分割請求訴訟)

P: E、F、Gが三つどもえで、相続(とくに実家の処分)の話し合いがまとまらないときは、どうすればよいですか?

S: 相続財産の額にもよりますが、私だったら弁護士に相談をして、さっさと裁判(共有物分割請求訴訟)をしますね。

ちょうど、全日本不動産協会のHPにわかりやすい説明が載っています。

 

 

裁判所の判断で、
 ①現物分割
 ②競売して、売却代金を持ち分に応じて分配
 ③価格賠償による分割(1人の所有物として、ほかの共有者には金銭が支払われる)
のいずれかの方法で分けることになります。
 

(2)共有持ち分の譲渡と「物権変動」

2-① 共有持ち分の譲渡

P: 共有の不動産の分割協議がまとまるまえに、たとえばEさんが、義弟のHさんに自分の「持ち分」を譲ることはできますか?

S:できます。先ほどの、自転車の例でいえば、Pくんは友人のRくんに、自分の持ち分(使用できる時間)を譲って、お礼をもらってOKです。ほかの兄妹の同意はいりません。

これは、兄妹3人が、自転車という財産を共有しているときに、それぞれが「部分的な所有権」を1/3ずつ持っている状態のためです。

P:自分の持ち分内なら、遠慮なく使えるわけですね。

S:大学の授業などでは習った記憶がないですが、「(共有)持分権」いう呼び方で、不動産関係ではよく使われる用語になってるようです。

宅建試験では、「持分権」という言い方までは出題されてませんが、次回以降に説明する「物権変動の対抗問題」の論点のひとつに、「共同相続と第三者」がありまして、私は「部分的(それぞれ独立した)所有権」としての「(共有)持分権」で、整理した方がすっきりするため、ご紹介しました。

2-② 物権変動とは?

P: 「物権」という言葉は、以前の記事(60代からの宅建02)で、「債権」と対で出てきた、民法の基本ワードですよね。
S: そうです。ここも、Google Geminiに、「物権 債権 違い わかりやすく」できいたら、下記のように、かなり分かりやすい回答をしてくれました。
やはり、民法を勉強するうえで、この二つの違いは意識しておくとよいと思います。
『物権と債権は、財産を支配する権利の2つの類型です。
物権は、すべての人に対して権利を主張できる絶対的な財産支配権 [絶対排他性]で あるのに対して、債権は、特定の人にある要求をする権利であって、第三者には権利を主張できない相対的な請求権である。
<中略>
物権の代表例は、所有権・地上権・質権・抵当権 [担保物権]などです。
債権の例としては、賃借権、利息債権などがあります。』(2024年3月31日:部分。[]内は筆者追加)
ただし、宅建試験の勉強で「物権変動」といえば、「所有権(とくに不動産)の移動をしたら、誰が所有権を主張できるか?」を指すようです。
P: 不動産だと、自転車などとは違って、現物を空間的に移動はできませんよね。家の鍵を渡すなどはできそうですが?
S:そこで登場するのが、「不動産登記」です。
以前の記事(60代からの宅建03)の③で、家(土地・建物)の所有権と登記について、「相続登記」との関係で、簡単に説明しましたが、「物権変動」で「(不動産の)所有権の移動」の証になるのが、「所有権移転登記」です。 ※補足4
P: 60代からの宅建03では、

『Pくんが法務五郎さんから、家を買ったら、

  順位番号3 に、所有権移転登記、令和6年2月〇日 原因 令和6年2月△日売買 所有者 P

などと追加される』

とありましたが、この移転登記によって、ぼくが法務五郎さんに代わって、家の持ち主になったと証明できるわけですね。

S: そうです。

「物権変動」では、基本的には、

  ①登記を先に備えた方が

  ②第三者に対して

 対抗要件を備える=不動産の持ち主と主張できる

ことになります。

P:  この例で、②「第三者」が、法務五郎(売主)とぼく(買主)以外の人というのはわかりますが、①の「登記を先に備えた方」というのは?

S: これが、宅建試験でもよく出題される「二重譲渡の対抗問題」のケースですね。

下記のような

2012年問6の③では「Aが、甲土地をFとGとに対して二重に譲渡して、Fが所有権移転登記を備えた」と、

売主Aが、甲土地を、買主F、Gへそれぞれ売ったときに、GとFどちらが所有権を主張できるか? といえば、ここでは、所有権移転登記を先に備えたFになります。たとえ、Gが先に契約して、代金を支払っていてもそれは、A⇔G間の問題で、FとGでは、Fの勝ちになります。

ただし、買主Gが「登記がなくても対抗できる相手」もいます。

例としては、上にあげた2012年問6の、④が「背信的悪意者」のケースですので、解説をお読みください。

ほかには、

 無権利者 宅建過去問2017年問2② 

 不法占拠者  宅建試験過去問2019年問1①

などですね。

P:リンク先の過去問の他の肢にも、いろいろなケースがのってますね。

2-③ 対抗問題のまとめ

S: 宅建試験対策としては、「対抗問題」については、過去問でいろいろな出題例を把握したほうが、理解しやすいと思います。

なお、全日本不動産協会の埼玉県本部の下記HP

 

 

に、対抗問題について、図入りの分かりやすい記事が載っていますので、ご覧ください。

P:次回は、「対抗問題」の続きと、「不動産登記法」の予定です。

S: 「共有持分と第三者への二重譲渡」については、「基本テキスト」の101ページに解説されていますので、気になる方は、この前後の「第三者への対抗」のいろいろな事例と併せてお読みください。

 

補足1 23年の試験では、23年民法改正のうち「相隣関係」(問2)が出題されました。残る改正点はまだまだあるので、24年度の試験対策上、要チェックです。

補足2: 「善良なる管理者」も民法の基本用語の一つで、いずれ記事でふれる予定です。

補足3:共有者の持ち分価格の過半数の同意で設定できる権利。カッコ内は上限。

 (1) 樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃借権等 〔10年〕
 (2) (1)に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 〔5年〕
 (3) 建物の賃借権等 〔3年〕
 (4) 動産の賃借権等 〔6か月〕

補足4:宅建試験では、毎年「不動産登記法」で、1問出題されるようです。

 

【BGM】

S選曲:Greeen(GRe4N BOYZ) 「桜Color」

P選曲:シンプルマインズ 「Don’t You (Forget About Me)」

【写真】上:筆者、中・下 提供:Pixabay

 

 

※宅建Tシリーズと、宅建の「基本テキスト」については、序章をご覧ください。

(A)  遺言(遺言書)で相続はどうなるか? VS.遺留分

P: 前回は、主に法定相続人について、Sさんに説明してもらいました。

さらに、被相続人の「遺言」によって、血縁者以外でも「相続人」になれるそうですね。

S: 「遺言」で財産をもらえる人を「受遺者」といいます。基本テキストにはでてきませんが、法定相続人と区別するためと、宅建試験でも使われている用語なので、覚えておくとよいでしょう。。※補足1

「遺言書」をめぐるトラブルは、「犬神家の一族」とか、ミステリー小説でもよく出てきますね。

P: (Sさんの好きそうな)「犬神家」のようなドロドロした遺言はおいといて、シンプルにAさんが「全財産を社会福祉事業団体Bに寄付する」旨の遺言をしたときに、もしAさんに配偶者Cや子Dがいた場合、どうなりますか?

A-1)法定相続人の遺留分

S: 遺言書自体に問題がなければ(後述:A-2と3)、Bが全財産を相続します。

一方で、配偶者Cと子Dは、本来相続できたはずの相続分(法定相続分)の1/2を、「遺留分侵害額」として、Bに対して金銭の支払い請求ができます。

ではBくん、Aの全財産が、5千万のとき、CとDは、Bに対していくらずつ、請求できますか?

P:本来、CとDは、5千万を相続できたはずなので、その半分が遺留分で、2500万円。2人なので、各1250万円ですね?

S:そうですね。ただし、あくまでも「請求権」なので、CとDは、「請求をしない」こともできます。

そして、この「請求権」は、相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈などがあったことを「知った時から1年間」または、「相続開始の時から10年間」行使しないと、「時効」で消滅します。 ※補足2

ちなみに、法定相続人でも「兄弟姉妹」には「遺留分」はありません。

A-2)遺留分の放棄

S: 宅建試験対策の観点からいえば、「遺留分の放棄」は、前記事で説明した「相続の放棄」とまぎらわしいので、直近(令和4年)の過去問でも出題されています。ここは、下記のような過去問解説の記事で、違いを整理しておくとよいでしょう。

 

 

主な違いは、

・「遺留分の放棄」は、家庭裁判所の許可をもらえば、被相続人(今回の例でいえばAさん)の生前にできる。「相続放棄」は、Aさんの生前にはできない。

・「遺留分を放棄する」=「相続する権利を放棄すること」ではない。

P: えーと『「遺留分の放棄」=「相続する権利の放棄」ではない。』は、ちょっと分かりにくいんですが?

A: この点は、基本テキストの説明が分かりやすかったので、引用しておきます。

『遺留分を放棄した後、この遺言が破棄されて相続ができるようになったときは、ふつうに相続ができるということです』(2024年版」88ページ)

A-2)その遺言(書)は有効か?

P:「遺言の破棄」ですか?

S: 前提として、遺言は、法律で定められた形式の文書でないと「無効」です。口頭の「遺言」も、効力はありません。

そして、作成した「遺言書」を、作成者が撤回(破棄・修正)するのは自由です。

なので、今回の例でいえば、Aさんが「全財産を社会福祉事業団体Bに寄付する」旨の遺言書を作成したけれど、その後、遺言書を破棄したり、内容を書き換えてC・Dに相続させることにすれば、C・Dは遺留分を放棄していても、相続できるわけです。

また、そもそも「遺言書」自体に問題があるケースもあります。

P:下のHPを見ると、けっこう色々な「落とし穴」がありますね。

A-3)「遺言」自体に問題があれば…

S: 正しい「遺言書の書き方」などは行政書士「公正証書遺言」などは公証人、「遺言書」の有効・無効の争い(裁判)は弁護士、の守備範囲なので、宅建試験受験生は、基本テキストの知識プラス過去問レベルで覚えておくくらいで良いと思います。

 

P: 遺言(書)を、亡くなるまではいつでも修正できるとなると、遺産分割が終わって何年もたってから、突如、新しい日付の遺言書が見つかった…ということも、起こるわけですよね?

S: 正しい形式の遺言書なら、先に出てきた「遺留分侵害請求権」などとは違って、「消滅時効」がありません。なので、数十年後に、遺言書が見つかったとしても、その遺言書は有効です。

その場合の対処は、弁護士に相談するレベルの話になるので、これ以上はふれませんが。

ふつうは、被相続人が亡くなった後に、遺言書を保管したいた人か発見した相続人が、「死後、遅滞なく」その遺言書を家庭裁判所に提出して,「検認」の手続きをします。

この「検認」手続きもけっこう面倒なので、のこされた相続人等に手間をかけたくないとか、遺言書が紛失しないようにしたいと考える方は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」の利用を、ご検討ください。 

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

B)配偶者居住権

P: ネットで調べると、日本人で遺言書を残す人は、1割に満たないそうで。ウチの両親も、書く気はないと思います。

S: P家は、ご実家の近くにお兄さん夫婦がおられるそうなので、遠い先の「相続」も遺言書なしで問題ないと思います。

しかし、たとえば、先ほどの「Aさんに配偶者Cと子Dがいるケース」で、

 ・Dが配偶者Cの実子でない

 ・Aさんの財産は実家の土地・建物のみ

だと、どうでしょう?

P: Aさんが、遺言書を残さなかったと?

S: たとえ、土地・建物をすべてCさんへ遺贈する旨の遺言書があっても、Dさんは「遺留分」は、請求ができます。

仮に、財産額(土地・建物)が4800万円なら?

P: Dさんは、1200万円を、義母のCさんへ請求できますね。

S: そうなると、以前だと、Cさんは住み慣れた家を売って引っ越しをしなければなりませんでしたが、民法改正で「配偶者居住権」が新設されました(令和2年4月1日以降の相続から)。

https://houmukyoku.moj.go.jp/maebashi/page000001_00235.pdf

 

以前の記事で「所有権」と「登記」の説明をしましたが、「配偶者居住権」は、下記PDF

のような、

  https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/200701/pdf/01.pdf

一定の要件

〔配偶者居住権の成立要件〕(民法 1028条-1)。 ※あ、い、うは筆者が区別のために追加
 あ) 配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた
 い) 次のいずれかの場合に該当すること
   ① 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされた場合(登記が対抗要件)
   ② 配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合 
 う)被相続人が相続開始の時において居住建物を配偶者以外の者と共有していない

をクリアした配偶者に、権利(居住する権利)として認められます。

 

Cさんは、(あ)と(う)の条件はOKなので、あとは、Dさんとの話し合いで、たとえば

  Cさんが2400万円分の配偶者居住権、Dさんが2400万円分の「負担付き所有権」を得る

などと、遺産分割協議をして、自宅の「建物」に「 配偶者居住権」設定の登記をすれば、そのまま自宅に住み続けられます。

P: たしかに以前の記事で「所有権」と「登記」について説明してもらいましたが、こんどは「負担付き所有権」ですか?

S:負担付き所有権とは? で、Google Gemini(生成AI 24/03/20)の答えが分かりやすかったので、引用します。()内は今回のケースに沿って筆者が追加しました。

『負担付所有権とは、配偶者居住権を得た配偶者(Cさん)が居住する建物や敷地の、所有権のことです.
配偶者居住権とは、亡くなった人(Aさん)が所有する建物に居住していた配偶者(Cさん)が所定の条件を満たすと、家賃を負担することなく引き続き(自宅に)居住できる権利です。
負担付所有権を持つ人(Dさん)には、所有権と負担の両方があることから「負担付所有権」と呼ばれています。
負担付所有権を取得した相続人(所有者となる人)(=Dさん)は、所有者でありながら「配偶者(Cさん)が住んでいる間は自由に自宅(実家)を使えない」「自分が住んでいないのに固定資産税を払わなければならない」などの制約や負担があります。』

P:なんかDさんに不利そうですね。もし、Dさんが、遺産分割協議で反対をしたらどうなりますか?

S:遺産分割協議がまとまらなければ、最終的には家庭裁判所の審判で、ジャッジされます

これから遺言書を書く方は、もしも確実に配偶者に「配偶者居住権」を取得させたいなら、上記の

 い)② 配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合 

のように、遺言書に書くことですね。「遺言書の具体的な書き方」は宅建試験の範囲をこえてますので、行政書士や弁護士などに、ご相談ください。

ただし、この「配偶者居住権」自体は、「中古住宅の売買」などの実務に深く関わる改正なので、すでに宅建試験でも、

・令和3年10月

 

・令和5年

 

と、かなり細かい部分まで出題されています。

R6年以降の宅建試験対策でも、少なくとも法務省のHPのFAQの内容は覚えておく必要がありそうです。

一方、「配偶者短期居住権」は、「基本テキスト」に書かれている内容プラス、生成AIに「配偶者短期居住権とは」で聞いた範囲で覚えるくらいでよいと思います。

また、遺産分割協議がもめる要因に、「寄与分」・「特別受益」がありますが、ここは、民法改正で、23年4月より「相続発生から10年を経過すると特別受益や寄与分を主張できない」ことになりましたので、「時効/期間制限」をテーマにした記事で、触れる予定です。

P:  今回の記事にも「配偶者居住権の(建物への)登記」という言葉が登場しました。

以前の記事でも、「所有権」との関連で「登記」についても簡単に説明してもらいましたが、次回からは「物権変動」・「対抗問題」・「不動産登記法」についてです。

 

◎補足1 「受遺者」には、人間(自然人)ではなく、法人(団体など)も含まれます。

 遺贈寄付という制度もあります。 

◎補足2 「時効」については、いずれ別記事で説明の予定です。

 

【BGM】

S選曲:山下達郎(カバー:Night Tempo)「キスから始まるミステリー」 
P選曲: Alan Parsons Project 「Eye in the Sky」

【写真】上:筆者 東京・麻布台ヒルズ 文末:提供Pixabay

 

※宅建Tシリーズと、宅建の「基本テキスト」については、序章をご覧ください。

 

(A) 相続は争族?

P: 前回は、主に不動産(家・土地)の相続登記をするための第一関門、「戸籍関係書類集め」について、Sさんに話してもらいました。第二関門は、関係者全員分の「遺産分割協議書」集めだそうですね。
S:  相続登記に必要な遺産分割協議書のひな型は、法務局のHPに掲載されていますので、S家は関係者に書類に署名・捺印いただくだけで問題ない見込みです。

ただし、昔から「相続は争族」といって、下記の記事によれば、裁判にまでなるのは1%強だそうですが、行政の無料法律相談や、司法書士・弁護士への相談数などは、けっこう多いと思いますよ。

そして、宅建試験でも、相続関連で1問出題され、今年以降も、本記事で話題にしている相続登記との関連で、いろいろなパターンで出題されると思いますので、このページでも過去問についていくつか紹介しています。

 


(B) 宅建試験レベルの「相続」の知識でかなりのもめごとは解決できる

P: 上の記事を読むと、
 ① 誰が故人(被相続人)の「相続人」か?
 ② どこまでが「相続財産」の範囲か? (寄与分/配偶者居住権など)
 ③ 相続財産の分け方(法定相続分/遺留分/遺言書など)
などが、問題になること。そして、これらが、はっきり分からない状態で、関係者が話し合うとこじれやすいというのは分かりました。

たとえば、上の記事の例で「相続人の配偶者が遺産分割協議に参加してきた」は、たとえば、兄嫁がP家の遺産分割協議に参加しようとしている…ということですよね?

S:ちょうど、宅建の基本テキストでも相続について説明されていて、その範囲の知識で、一般の遺産分割協議は解決できると思います。(補足1)

B-1)法定相続人
S:まず①についてですが、民法の「法定相続人」は、
 配偶者(被相続人の妻/夫。※配偶者は、常に法定相続人になります。なお、離婚すれば「配偶者」ではありません。)
  第1順位:子や孫(直系卑属)
  第2順位:親・祖父母(直系尊属)
  第3順位:兄弟姉妹・甥姪

です。

相続人の配偶者」、つまり、いま話に出た「Pくんの兄(相続人)の嫁(配偶者)」は、「法定相続人」ではありません。

相続分の基本パターンは、下図のとおりですが、

 

ほかにもいろいろなパターンがあるので、「基本テキスト」にも、
  被相続人に配偶者がなく、子1人、父が存命
の例などが載ってます。Pくん、このときの相続人は?

P:えーと、上の図の、配偶者と子が相続人のパターンから、さらに配偶者がいなくて、子が1人なので、子1人が相続。父は相続しない? ですか?

S: 結果的には正解ですが、宅建試験では、さらに複雑な「相続計算問題」が過去にも出題されてますので、宅建試験の受験を考えている方は、下記記事などで、計算問題対策(とくに回答の所要時間)も意識してください。

 

 

B-2)代襲相続と、相続欠格/相続廃除/相続放棄

S: 宅建の試験では、設問を難しくするために、下記の過去問のように「代襲相続」をからめた出題がされます。 

 

 

上の図で、配偶者1/2,子Aと子Bが、1/4ずつ相続する例が載っていましたが、もし、子Aがすでに亡くなっているけれど、AにC,Dという2人の子(被相続人からみると孫)がいたとしたら、相続割合はどうなりますか? Pくん。

P:子Aの相続分1/4を、さらに半分に分けて、C,Dとも1/8ですか?

S: そうです。もし、Cも亡くなっていたとしても、Cに子E(被相続人からみるとひ孫)がいれば、Cに代わって相続をします。

P: それで「代襲」なんですね。

S: さらに、「相続」の出題を難しくするために、下記の過去問のように、

 

 

相続欠格、相続廃除、相続放棄などが追加されることも、よくあります。

P: 「相続放棄」は、そもそも親の財産を継がない(放棄)と、見当がつきますが、「相続欠格」と「相続廃除」の違いは?
S: 簡単にいえば

 ・欠格 →遺産目当てで親(被相続人)を殺すなどした場合

 ・廃除 →親を虐待するなどで、親から家庭裁判所に相続人廃除の請求をされた場合

などです。

制度としてはありますが、実際の相続廃除の請求件数が年に300件くらいなので、宅建試験対策としては、

 「被相続人」の子Aが、相続欠格か相続廃除の場合でも、孫C,Dは「代襲相続」できるが、「被相続人」の子Aが「相続放棄」をした場合は、C,Dは「代襲相続」できない。

というレベルで、覚えておけばよいでしょう。

B-3)相続の承認・放棄

P: Aが「相続放棄」すると、C,Dはおじいちゃん(被相続人)の財産はもらえないと?

S:そうです。Aが「相続放棄」すると、Aは「そもそも相続人ではなかった」=相続人の範囲に含まれない ことになりますので、C,Dの「代襲」がおきないんですよ。

ちなみに、試験ではプラスの財産の「相続放棄」で出題されると思いますが、実際は「空き家問題」と関連して、「負動産の相続放棄」が今後ますます増えると思います。

https://o-uccino.com/front/articles/98606

「相続放棄」は、自分が相続人だと知ってから3ケ月以内に、家庭裁判所に申し立て(申述)をしなければならず、この手続きをするときも戸籍謄本が要ります。ただし、被相続人と自分との関係がわかる範囲で良いようです。

P:「相続登記」の時のような、「さかのぼり」は必要ないわけですね。

S:そうです。

上の図で、配偶者と子Aと子Bが、相続人になるとき、3人は

 ・単純承認

 ・相続放棄

 ・限定承認 (後述)

の選択ができます。「被相続人が亡くなったと知ってから、3ケ月の間」に、相続放棄も限定承認もしなかったときは、「単純承認」とみなされ、ごく普通の相続をしたことになります。

P:「みなす」ってあまり聞かない用語ですね。

S:これも法律用語として、宅建試験のテキストにも普通にでてきますので、慣れてください。

法律用語としての「みなす」とは、 「事実と関係なくその事実があったとする」ものです。

2022年の民法の改正前は、「未成年者(改正前は20歳未満)が結婚すると、たとえ実年齢が20歳未満であっても、成年に達したものとみなす」、”成年擬制”の制度がありました。

改正で、成年が18歳に引き下げられ、同時に女性の結婚できる年齢も18歳~(以前は16歳!)になったため、”成年擬制”自体はなくなりましたが。

P: 「単純承認」と対になるのが、「限定承認」ですか?

S: たしかに「相続放棄」と違って、「限定承認」しても相続人にはなりますが、私のイメージではプログラミングで言う、IF文=条件付き相続です。

たとえば、日ごろ交流のないRおじさんが亡くなって、被相続人Rの財産が、プラスかマイナスかも分からないというときは、私なら「限定承認」を検討します。

これは、「限定承認」の場合は、いったんRおじさんの財産を、公的な手続きで確認、清算して、プラスの財産が残ったときは、その範囲で相続人たちが相続できます。逆に、Rおじに借金があったときは、Rおじの残した財産の範囲で返済され、私が借金を負うことはありません。

ただし、いろいろな手続きの手間や専門家に依頼した場合の費用などが、「相続放棄」よりもさらにかかります。

「限定承認」も、「被相続人が亡くなったと知ってから3ケ月の間」に家庭裁判所に申述の手続きをしますが、「相続放棄」と違って、限定承認の場合は「相続人全員が共同」でしなければなりません。

このように「限定承認」の利用はなにかと面倒なので、実際の利用件数は年間千件以下らしいです。

ただし、宅建試験の過去問には時々でますので、ここも「過去問」の範囲で覚えておきましょう。

P: …蓋を開けてみないと財産かどうか分からない、まるで「ミミック」のような相続への対策が、「限定承認」ということですね?

C:相続関係説明図/相続関係一覧図

S: 前章Bで紹介した知識で、「相続人」の範囲は、整理ができると思います。

実際に、不動産の相続登記をするときは、集めた戸籍関係の書類をもとに、「相続関係説明図」か「法定相続情報一覧図」を作成します。というか、この図を作成し、法務局の担当者に確認してもらうための証拠書類として、戸籍を集めるわけで。

※法務局HPより、見本図

 

 

P: このレベルになると、宅建ではなく、司法書士試験の範囲になるようですが、Sさん自身は、3年以内に、自力で相続登記にチャレンジする予定ですので、くわしくはその手続きが終わった後に記事にします。

次回は、引き続き「相続」関連で、遺言・遺留分・配偶者居住権などを、Sさんに説明してもらう予定です。

 

補足1 例に挙げた過去問は、「遺言書」も関係しますので、今後、その記事でも触れる予定です。

補足2 気になる方は「相続欠格と廃除の違い」で、Google Bard(生成AI)に質問してみてください。

【BGM】

S選曲:Tears for Fears 「Rule the World」

P選曲:The Bravery 「An Honest Mistake」

 

※宅建Tシリーズと「基本テキスト」については「序章」をご覧ください。本記事は、24年2月初出。3/9最終更新

① 期待:「戸籍の広域交付」で、本籍地以外のもよりの自治体窓口での戸籍の一括請求が可能に

P: 前回記事で、今年の4月から義務化される「相続登記」について、まず「亡くなった方の生まれてから死ぬまでの戸籍を、さかのぼって集めるのが面倒だった!」という、Sさんの体験談を話してもらいました。

そして、今年の3月1日からは、「戸籍証明書の広域交付サービス」がはじまり、もよりの市役所などの窓口で、亡くなった方の戸籍証明書を請求できるようになって、便利になるかも? と、Sさんも期待と不安があるそうですね?

S: 前回話したように、いままで戸籍証明書は、本籍地の自治体窓口へ行くか郵送請求でないと、入手できませんでした。

つまり、「亡くなった方Eの本籍地」が、

  出生○県A市→○県C市B→○県C市C→死亡東京都D市 

と変わっていたときは、まずD市の窓口で、戸籍証明書を入手。そこに書かれた内容(D←C市)から、次にC市に郵送で戸籍証明書を請求、最後にA市に郵送~で、戸籍証明書を入手していました。

それが、下図のように「最寄りの市役所などの窓口」で、「請求が可能」になりました。

 

上図・下図とも 法務省HP  https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

 

P: たとえば、筆者はM市在住ですが、東京都中央区(補足1)の窓口でA,B,C,Dの戸籍証明書を請求してもよいわけですね。

S:そうです。ただし、広域交付で請求ができる人は

 本人とその配偶者、直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)

に限られますので、Pくんが自分の兄弟姉妹の戸籍をとることもできません。

ちなみに、「配偶者(夫婦の一方)」「直系尊属(父母、祖父母…)」「直系卑属(子、孫…)」などは、宅建の基本テキストでも、この言い方をしてますので、Pくんも慣れてください。

そして、新しい「広域交付」サービスは、請求の資格がある人自身が窓口に行く必要があり、代理人は請求できないとか、顔写真つき身分証明書を提示しないと手続きできないなど、便利になった代わりに一定の制限がありますし、広域交付で取得できる戸籍証明書の種類は限られていますので、郵便請求の手続きは残るでしょう。

② 不安: 最寄りの市町村窓口での広域交付請求=さかのぼり対応には時間がかかる!

P: 24年3月1日、つまり新制度の初日は、残念ながら戸籍情報連携システムのトラブルで、全国の自治体が受付できない旨のをホームページに掲載。

法務省のトップページの冒頭にも

  【重要】戸籍情報連携システムの障害について(令和6年3月1日)

のお知らせが表示される事態になってますね。

アクセス集中が原因だそうですが。

S: 初日から、予想以上の申し込みがあったのか? または、システムを操作する市町村(以下、役所)の窓口の方たちが、まだ慣れていないせいか? は不明ですが、実は、他市の戸籍をオンラインで取り寄せる作業は、役所の職員でもかなり大変だと思います。

P: 今まで、戸籍を担当された方でもですか?

S: そこが、「相続のための一連の戸籍請求(いわゆる、さかのぼり)」の特殊なところで、亡くなった方が、どれくらい本籍を移動されていたか? 蓋をあけてみるまで分からないことが多いはずです。

たとえば、先の例で挙げたEさんが亡くなり、相続登記のために、孫のPくんが、戸籍集めに「広域交付」を利用しようと考えたとします (出生○県A市→○県C市B→○県C市C→死亡東京都D市)。

この段階では、健康保険証などから「住所」などは分かりますが、「本籍地」はわかりません。

そういうときは、まず亡くなったD市で「住民票の除票」を請求します。

除票から、東京都D市が、最終の本籍地と分かったところで、最寄りの板橋区の窓口で「広域交付」を申し込むとします。

P: Eさんの例だと、さらに

 出生○県A市 ←○県C市B ←○県C市C

とさかのぼる必要があるわけですね。

S: Pくんが、板橋区に申し込んだ時点では、○県C市C→死亡東京都D市の移動があったことしか分かりませんが、新しい「戸籍証明書の広域交付」では、役所の方が、「出生○県A市 ←○県C市B ←○県C市C」までのさかのぼり作業も行ってくれるようです(補足1)。

 

 

そのせいか、上の板橋区のページ(24/2/16時点)を見ると、

出生から死亡までなどの一連の戸籍を請求される場合、発行に非常に時間がかかります(目安:90~120分程度)。お時間に余裕を持ってお越しください。
受付時間や証明書の内容によっては、当日中に交付できない場合もあります。」

とあります。

P:つまり、慣れているはずの役所の方でも、「さかのぼり」作業に、最大2時間くらいの時間がかかると見込んでいるわけですね。

S: 私が、〇十年前、郵送請求で取り寄せた戸籍の中には、明治時代の毛筆文字があったと記憶してます…。最大2時間で大丈夫かな? と心配なんですが…。

そのためか、東京都目黒区だと

 

 

 ステップ1 事前来庁予約:電話またはオンラインで、事前来庁予約をします。
 ステップ2 区役所での申請:区役所に来庁し、申請書を記入後、受付をします。(約1時間から2時間)
  (発行準備:区が審査、発行を行います。原則7営業日
 ステップ3 区役所での受取:区役所に来庁し、戸籍証明書を受け取ります。(約1時間)

としています。

最寄りとはいえ、役所の窓口へ複数回行って待つか? 予約を取るか? 昔のように本籍地へ郵送で請求がよいか? ここは、いろいろな市のホームページを見ても、まだ対応にばらつきがありそうなので、私も迷っています。

引き続き、続報を書くと思います。 ※文末に情報を追加中

P: 今回は、法務局への相続登記の前に必要な亡くなった人の戸籍書類集めが広域交付で便利になった反面、戸籍情報連携システムも稼働したばかりで、コロナやマイナンバー(マイナポイント)関係の手続き以上に、紆余曲折がありそうなので、独立した記事にまとめました。

状況により、適宜書き足し、書き直し予定です。

 

【補足1】

広島市のページに、職員の方による作業が、図で紹介されていました。

 

 

なお、「戸籍証明書」などについては、東京都中央区のHPの説明がわかりやすかったので、リンクを掲載します。

 

 

 

 

 

[24年3月9日 追加情報]

法務省のHPに、「戸籍情報連携システムの緊急メンテナンスの実施に伴うサービスの停止について(令和6年3月6日掲載)」が掲載されていました。

  「令和6年3月8日(金)午後10時から令和6年3月11日(月)午前7時まで」緊急メンテナンス

[24年3月16日 追加情報]

法務省のHPにて、「本籍地市区町村以外の戸籍証明書の交付(いわゆる広域交付)がしづらい状態となっておりましたが、本日(3月11日)、復旧したことを確認できましたので、お知らせします。」

しかし、自治体は警戒モードのようで、たとえば、東京・三鷹市は、3月15日時点で、

「【申請から交付までに時間がかかります】

法務省システムの全国的な障害及び交付時に当初予定と異なる確認作業が必要になったことから、当面の間、三鷹市に住民登録がないかたの「過去にさかのぼらない戸籍(除籍)証明書」の交付については即日交付が難しい状況です。交付目安については申請時にお伝えします。<中略>「過去にさかのぼる戸籍(除籍)証明書」については、法務省システムから交付できない事象が相次いでおり、請求を受付けても証明書の交付ができないことがあります。当面の間、「過去にさかのぼる戸籍(除籍)証明書」は請求後、交付準備が整い次第ご連絡を差し上げることとし、交付不可能な場合でも請求後3開庁日後までにご連絡いたします。」

→やはり、本文でSさんが懸念していた、”過去にさかのぼる戸籍”(画像)を、他自治体の職員が検索して探す手間がかかっているのか?

尾道市のHPで、具体的な事例で説明されていましたので、参考として引用します。

『戸籍事例2 相続人を確認するために、死亡した人の「出生」から「死亡」までの連続した戸籍謄本が必要と言われた場合
大正生まれの方の場合の例
 戸籍1(除籍):生まれた日・・・祖父が戸主の戸籍
 戸籍2(除籍):祖父死亡により伯父が家督相続・・・伯父が戸主の戸籍※この戸籍のとき婚姻
 戸籍3(改製原):伯父の戸籍より父が分家・・・父が戸主の戸籍
 戸籍4(改製原):昭和32年法務省令27号による戸籍改製(戸主制度から筆頭者制度へ)・・・本人が筆頭者の戸籍
 戸籍5(現在戸籍):平成6年法務省令第51号による戸籍改製(紙戸籍から電算化戸籍へ)※この戸籍で死亡
昭和32年法務省令27号による戸籍改製は、戸主制度から筆頭者制度への変更により、夫婦およびその子単位で編成された戸籍です。
平成6年法務省令第51号による戸籍改製は、従来の紙戸籍(縦書きの戸籍)から電算化戸籍(横書きの戸籍)に変更した戸籍です。
※電算化による改製年月日は市町村で異なります。
以上の法改正による変更前の戸籍を改製原戸籍と呼びます。(上記の場合、戸籍3・戸籍4)』

なお、尾道市の文章にあるとおり、戸籍情報のコンピュータ化の時期は、各自治体でまちまちです。

 

【BGM】

S選曲:X Japan「Rusty Nail」
P選曲:Daft Punk ft. Julian Casablancas 「Instant Crush」

 

① 「相続登記」はなぜスルーされてきたか?

P: 今回は、S家の「住み替え」に向けて、いまは「おじいちゃん」名義の家と土地の登記名義人「孫」へ変更するための手続きの前に立ちふさがる「カベ」についてです。

 

序章でふれたように、Sさんは20代のころ、親戚が相続した家と土地の「所有権移転登記」=相続登記 の手伝いをされて、「かなり面倒だった」そうですね。 ※補足1、2

S: 大叔母Gさんの夫Rさんが亡くなり、遺言で住んでいた家と土地はGさんが相続しました。

そして、下表(ただし図は令和4年)のような書類を集めて、申請書などの「作成書類」と一緒に法務局へ提出する必要がありました。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001393744.pdf

 

P: 筆者も、住民票、印鑑証明書、戸籍事項証明書は、引っ越しのときに役所へ行って、手続きした覚えがありますが…。

S:自分が今住んでいる市の窓口で取得できるものは、係の方に聞いて、なんとか手続きできると思いますが、上の表の赤いワクで囲んだ、「亡くなった方の戸籍謄本/除籍謄本/改製原戸籍」を本籍地の市区町村で入手するのが、めんどうだったんです!

P: 筆者は本籍地を今住んでいるM市の住所にしていますが、Rさんは違ったんですか?

S: Pくんも、故郷Y県X市から東京都M市へと、本籍地を変更したわけですよね。

もしも亡くなった方が、何度も本籍地を変えていると、「現在の戸籍謄本」の記載(A県B市から東京都H市へ)を見て、まずA県B市の戸籍を入手。さらに、A県C町……と、Rさんが生まれた時までの戸籍を、さかのぼって手に入れなければならないんですよ。

 

 

P: それをSさんがなさったわけですね?

S: 登記の申請手続き自体は司法書士に頼んだので、併せて依頼もできたんですが、けっこう事務手数料がかかります。

G叔母は近所にすんでいた私が、民法を勉強したことを知っていたので、時給プラス実費(おもに往復の郵送費と役所への支払い。たとえば、戸籍謄本1通○○○円)で引き受けました。

くわしい作業内容は下記、東京都新宿区役所が作成した「出生から死亡までの連続した戸籍のさかのぼり方について」のPDF文書が、わかりやすいです(広域交付版もぜひ、作成してください)。

https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000252913.pdf

昔と変わってるかもしれませんが、だいたいこんな手間でした。

往復とも郵便なので、2~3か月かかった記憶があります。結局、Rさんは4通の書類(さかのぼり3回)で済みましたが。

 

なぜRさんの「生まれてから死ぬまでの戸籍」をそろえる必要があるか? といえば、もしRさんがGさんと結婚する前に、別の方との間に子供がいれば、その子も含めて「遺産分割協議」をやり直す必要があります。

ほとんどのご家庭は大丈夫でしょうが、「Rさんには、100%ほかに子供はいない」ということを証明するために、この書類を集めたわけです。

P: いくら手続きが面倒だといっても、S家も「おじいちゃん」が亡くなった時点で、相続登記をしなくてよかったんですか?

S: いままでは罰則がありませんでした。なので、親戚中でこの家と土地は、祖父→子→孫へ…と受け継ぐという了解があれば、わざわざめんどうな手続きをしようと思わなかったわけです。 

逆に、遺産分割の話し合いがこじれて、登記申請に必要な「遺産分割協議書」がそもそも作成できないことも多いと思います。ここは、宅建04(相続:遺産分割)で、もう少し詳しく話す予定です。

②相続登記の義務化と「広域交付」

P:「いままでは罰則がなかった」。逆にいえば、これからは「罰則がある」ということですか?

S:そうです。24年の4月から、相続登記が義務化されて、

 ・不動産を相続した方は、取得を知ってから3年以内

 ・複数の相続人がいて、遺産分割で不動産を相続した方は、遺産分割が成立したから3年以内

に、正当な理由なく、相続登記の手続きをしないと、10万円以下の過料(いわゆる罰金)になります。

 

 

この義務化の対象には、24年4月1日以前に相続された(相続登記が未登記の)不動産も含まれます。

つまり、S家でも、遅くとも3年以内(27年3月末まで)に、

  おじいちゃんA →子C(Sからみて父)→孫S

の相続登記をする必要があります。

P: すると、やはりお二人(A,C)分の全戸籍を集める手間がかかるわけですね。

S: そこは、ようやく改善されまして、24年3月1日からは、「広域交付」といって、本籍地にかかわらず全国どこの自治体の窓口でも、戸籍・除籍全部事項証明書(謄本)を請求できるはずです。

 

 

P:つまり、最寄りの市役所などで、いっぺんに戸籍が請求できるわけですね。

S:そうです。ただし、上のA→C→Sのケースでは、S本人が窓口に行って、写真付きの身分証明書を提示すれば請求できますが、「代理人」は請求できません。

P: 本人が長期入院中などでしたら、昔ながらの「郵送」ですかね? 

S:本人以外に、上の八王子市のHPによれば、
 ・配偶者(注)
 ・父母、祖父母など(直系尊属)
 ・子、孫など(直系卑属)
 (注)死亡した夫または妻の戸籍を配偶者が請求する場合、婚姻後の戸籍のみ広域交付可能。

が広域交付の請求ができるようですので、たとえば、Sの子K(ひ孫)も、A・Cの請求ができます。

直系尊属はじめ、このあたりの用語は「法定相続人」にかかわるので、宅建04か05で触れます。

ちなみに、3月~5月は、引っ越しシーズンで役所の窓口はただでさえ混むし、役所の担当者もまだシステムに慣れていないと思うので、S家が準備するのは早くても夏以降かな? 実際に手続きしたら、また記事にします。

P: マイナポイントのときみたいに、3年後に登記期限の延長とかがありそうな~。

S:相続登記の登録免許税について、くわしくは宅建「税」のところで触れますが、下記のような免税(非課税)措置のおかげで、S家の場合も、A→C間の相続登記は、登録免許税が免税になりそうです。

この免税措置の適用期限が、24年2月時点では、令和7年(2025年)3月末までなので、その前の手続きを考えているわけですが、Pくんの推測どおりこちらの期限延長もあるかも? 

 

 

 

③ 不動産登記(所有権保存・移転登記)とは?

P: Sさんは、たまたま相続登記にかかわって、登記関係の書類なども見たことがあるわけですが、一般にはなじみがないと思います。

S: そこで、宅建の参考書が役にたつわけです。

基本テキストの「権利関係」109・110ページに、不動産登記・全部事項証明書の例が載っています。法務省の見本(PDF)はネットで簡単にみられますよ。

P:法務省の見本で「表題部」「権利部」とか見ても??ですね~。

S: 基本テキストでは、

 ・そもそも「登記」とは、不動産の戸籍である。土地・建物は別の不動産として扱われる

 ・「表題部」は土地・建物のプロフィールのようなもの

 ・「権利部」には、甲区に所有権に関する事項。乙区に所有権以外の権利に関する事項を記載

など、簡潔に説明されています。

P:  この記事の最初に、相続した家と土地の「所有権移転登記」=相続登記 とあったので、権利部・甲区の「所有権」について変更するわけですよね。

S: 「そもそも所有権とは?」の説明は、基本テキストにはみあたらなかったんですが、Google Bard(※補足1)に「所有権とは 家」できいてみたら、

『所有権とは、法令の範囲内で「自由に使用、収益、処分ができる権利」です。土地の所有権を持っていれば、そこに建物を建てたり他人に貸したり、あるいは駐車場にして運営したり、売却することが可能です。
土地の所有権は、地主から土地を購入することで取得できます。土地を購入すると法務局で登記を行い、購入者の名前で所有権登記を行うことができます。』(24年2月・一部抜粋)

この「不動産(家・土地)の所有権」というキーワードは、こらからも宅建試験の他の分野にいろいろと関連しますので、そのときにも触れます。

P: 法務省の見本をみると、甲区の1が「所有権保存」、2が「所有権移転」登記ですね。

S: 家を新築したときなどは、できてから1ケ月以内に「所有権保存登記」をする義務があります。マイホームを新築するときは、たいていは「住宅ローン」のお世話になると思いますので、このローンの関係(抵当権も関わります)でもれなく「所有権保存登記」はしているはずです。

そして、家の持ち主が、たとえば甲野太郎さんから法務五郎さんへと変わったら、所有権移転登記をします。

もし、Pくんが法務五郎さんから、家を買ったら、

  順位番号3 に、所有権移転登記、令和6年2月〇日 原因 令和6年2月△日売買 所有者 P

などと追加されるわけです。

相続登記の「登記原因」は、原則「相続」です。 ※補足3

P: 今のS家では、おじいさん(A)が所有権保存登記をしただけで、以後、C、Sへの所有権移転登記をしていないから、今の家の持ち主が、Sさんとは証明できていないと。

S: そうです。

たまたま「相続登記の義務化」とタイミングが重なりましたが、「住み替え」までには避けて通れない手続きです。

ちなみに、家の売買のときは登記のプロ(司法書士)に依頼すると思いますが、書類集め等が順調にいったら、S家の相続登記の手続きは、法務局へ行って、自力でやるかもしれません。 ※補足4

ただし、1か所気がかりな点(セットバック)があるので、これはいずれ、別の記事で取り上げます。

P: 今後は、「相続」でよく問題になる「遺産分割」(とくに家と土地)と、関連して「配偶者居住権」(宅建・令和3年出題あり)。次々回は、負の相続、いわゆる「負動産」を、トカイナカ、空き家問題などと関連付けて、話題にする予定ですが、先に3.5として今回も触れた「戸籍証明書の広域交付」について記事にしました。

●補足1

Googleの生成AI・Bard(これからはGemini)で、「相続登記 わかりやすく」で検索してみてください。

なお、ご興味のある方は「法務省 戸籍情報連携システム」も、Bard(Gemini) に聞いてみてください。

 

●補足2

役所の方も、分かりやすい説明を、いろいろ工夫されていますね ↓(例)

 

●補足3

気になる方は、「相続登記の登記原因には何がありますか」で、Bard(Gemini) に聞いてみてください。

●補足4

ふつうは、え? 法務局? どこにあるの? から始まると思います。

筆者は、農工大・農学部の北側道路(学園通り)沿いに法務局(府中支局)が建っていて、バス停の名前にもなっていたので見覚えがあるんですが、そういえば故郷の〇市の法務局って…?

 

【写真/画像】上:筆者撮影(豊洲)、下:Pixabay

【BGM】

S選曲:TM NETWORK「Self Control」

P選曲:New Order「Regret」