少子高齢化によって、日本の人口は今後も減少していくと推測されています。特に、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)が今後減少していくため、経済成長が維持できないことや、公的年金制度に大きな影響を与えると言われています。

 

その対策として、外国人移民を受け入れることによって解決しようという考え方があります。外国人の移民を増やすことで、人口減少を抑制し、公的年金を負担する世代を増やそうという考えです。ちなみに、日本が成長を維持していくためには、全人口に対する在留外国人の割合を現在の2%から2030年に5%まで上げる必要があると言われています。

 

しかし、単純に移民を受け入れて在留外国人を増やしても、そう上手くはいきません。収入が少ない人が増えても、そんなにGDPは増えないからです。収入が600万円の人が1人増えるのと、300万円が2人増えた場合は、GDPの増加分に変わりはありません。

 

つまり、人口が増えたとしても、収入が少ない人が増えた場合は、GDPの増加分は少なくなってしまいます。外国人移民を増やして経済成長を維持するのであれば、収入が高い外国人を増やす必要があります。

 

これと同じようなことは、公的年金にも当てはまります。

 

公的年金は、現役世代の保険料負担によって、そのときの高齢世代の年金給付を賄う賦課方式となっています。現役世代の人数が減少して、年金を受け取る高齢世代が増加すれば、当然現役世代の負担は大きくなります。

 

現役世代に該当する国民年金保険の被保険者には、自営業者などの第1号被保険者、会社勤めなどをしている被用者である第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている第3号被保険者に分けられます。このうち、保険料を支払っているのは第1号被保険者と第2号被保険者です。

 

1号被保険者の保険料は、収入に関係なく一律15,590円(平成27年度)です。一方、第2号被保険者の保険料は、収入に応じて決まることになっています。

 

月給が30万円の場合は保険料は52,400(平成27年度8月までの保険料率を適用)となります。月給が60万円の場合は保険料が103,100(同前)となり、月給が30万円の場合の約2倍となります。月給が605千円以上になると、月給がいくら多くなっても同じ保険料ですが、605千円未満であれば、月給に応じで保険料が変わるようになっています。

 

第2号被保険者が加入している厚生年金や共済年金の保険料収入は、収入が少ない人が増えるよりも、収入が多い人が増えた方が多くなるということです。

 

平成25年度の被保険者は、第1号被保険者が1,805万人、第2号被保険者が3,966万人と第1号被保険者の2倍以上です。収入が少ない人が増えると、公的年金の財政を厳しくしてしまう可能性があるのが分かると思います。

 

 

こういったことから、ただ単に外国人移民を受け入れても、経済成長や年金財政の向上に寄与しないことが分かると思います。単純労働者というのは収入は高くないのが一般的ですので、そういった外国人を受け入れても問題の解決にはならない可能性が高いです。

 

また、外国人労働者を受け入れるということは、日本人の職を奪うということになります。更に、低賃金の外国人労働者を受け入れるのは、日本人の賃金を下げることにもなります。

 

そして、外国人移民に関する記事でも書きましたが、収入が多い高度人材の外国人を受け入れるのではなく、日本人を高度人材に育成するのが、本来の日本政府の役割だと思います。


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