モザイク国家とは、モザイクのように異なる人種・民族・宗教を持つ集団が入り交じって溶け合わない状態の国家のことを言います。

 

インド、レバノン、アフガニスタンなどは有名なモザイク国家です。また中東やアフリカは、民族や宗教などに関係なく白人国家が勝手に国境を引いたことで、多くの国がモザイク国家となっています。

 

モザイク国家では、異なる人種・民族・宗教同士の対立が絶えず、紛争や内戦になっていることが多くあります。

 

欧州でモザイク国家といえば、旧ユーゴスラビアでした。旧ユーゴは、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字から成る国でした。

 

共産党による1党独裁の社会主義国家で国内の民族主義者の活動が抑えられていましたが、東欧の民主化が広がったことで、ユーゴでも1党独裁を廃止して自由選挙が行われるようになりました。

 

そして、各共和国では民族主義者が政権を握り始め、各民族による自立独立の動きが強まり各地で内戦が起こりました。内戦中には、宗教や文化の違いが浮き彫りになって激しい憎悪が剥き出しでぶつかる悲惨なものや、民族紛争が激化して民族浄化というような虐殺行為も行われました。

 

 

イラクは、アラブ人とクルド人が住んでおり、イスラム教でもスンニ派とシーア派が混在しています。サダム・フセインが独裁政権を握っていた時は、クルド人は迫害されていましたが、恐怖政治によって宗派間抗争は起きていませんでした。

 

現在は、形の上では民主主義になってサダム・フセイン時代のような恐怖政治はなくなりましたが、宗派間抗争が激化してテロが頻発しており、以前よりも混乱は大きくなっています。

 

中東やアフリカの国の中には、独裁政権のときは力で内紛が起きないように押さえつけていましたが、独裁政権が崩壊すると抑えられていた民族間や宗教間・宗派間の対立が表面化して、泥沼の内戦になっている国が少なくありません。

 

白人国家は植民地を統治するときに、分断統治という植民地の民族同士を争わせて統治者である自分達に矛先が向かわない手法をよく使っていました。そういったこともあって、欧米の植民地だった地域はモザイク国家になっているケースがよくあります(詳しくは「欧米の姑息な統治手法」 参照)。

 

通常、国境線というのは宗教・宗派や民族の状況を念頭に置いて引かれます。しかし、植民地支配に効率的な分け方をしたため、アフリカや中東の国境線は直線が多くなっています。

 

イラクのように、独裁政権で力によって内部の対立が起きないようにしているときは、宗教間・宗派間や民族間による対立は抑えられていましたが、独裁政権の力が弱まったり崩壊すると対立が一気に表面化してしまいます。

 

かつての欧州も、宗派間や民族間の対立が絶えない地域でした。何度も壮絶な争いが起こった末に、ようやくある程度平穏な時代を迎えることができました。それを考えると、アフリカや中東で起こっている内戦などの混乱が落ち着くのには、相当な時間がかかることが予想されます。

 

 

また、米国、カナダ、オーストラリアは移民国家であり、様々な人種・宗教が入り交じった国です。白人が圧倒的に多く政治的にも経済的にも力を持っている状況では、モザイク国家のような問題はあまり起こっていませんでした。

 

移民であっても、全体から見て極僅かで、なおかつ現地の習慣に馴染むような努力をしているのであれば大きな問題に発展する可能性は低いです。しかし、中国系や韓国系の移民のように、現地の習慣に馴染もうとせず固まって独自のコミュニティを作って排他的な移民が多くなっていくと、新たな火種となります。

 

そうした移民が増えていることで、少しずつ問題が生じてきているようです。特に米国は、歴史的なことから白人と黒人の対立がありますし、近年ではヒスパニック系の住民が増えて大きな勢力になってきています。また、人種や民族によって居住区域が分けられています。今後、モザイク国家で起こったような混乱が起きないとは言えないでしょう。


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