こんばんは♪

久しぶりに医療記事を書いてみました。

久山療育園・宮崎医師が書かれた文献を参考に、まとめてみました。


重症児者の循環器(心臓)疾患は、表Ⅲ-1に示しますように先天性のものや出生後(後天性)に起こるものがあります。大まかに言いますと、先天性のものでは、心臓の形や弁膜の異常があり、後天性のものではリウマチ熱や敗血症に続いて起こるものと年長化・高齢化に伴なうものがあります。また脱水や浮腫など水分出納や電解質異常、呼吸不全、腎不全、ショックなどに伴なう心不全も重要な病態です。この章では日常的に起こる循環器の異常について、おかしいと疑うべき症状や対処の仕方、その他一般的な予備知識の概略について述べます。

表Ⅲ-1.重症児者の心臓疾患

Ⅰ.先天性心臓病

(原因不明,染色体異常による多発奇形,先天性風疹症候群など)

[疾患]心房中隔欠損症(ASD)、心室中隔欠損症(VSD)、

動脈管開存(PDA)、肺動脈狭窄(PS)、

ファロー四徴症(TOF)

[症状]・チアノーゼ;TOF、ASD・VSD・PDA・PSの

後期~末期

  ・息切れ;努力呼吸、肩呼吸、しゃがみ込み、

  ・多汗、易疲労、元気がない、哺乳力低下、食欲不振

  ・所見;ばち状指、心雑音、不整脈

Ⅱ.後天性心臓病

[疾患]リウマチ性心弁膜症;僧帽弁狭窄、大動脈弁閉鎖不全など

  亜急性細菌性心内膜炎;肺血症、僧帽弁閉鎖不全など

Ⅲ.原因不明の心臓病

[疾患]心筋症(肥大型・拡張型)

Ⅳ.不整脈

[疾患]刺激生成異常; 洞性不整脈、期外収縮

   刺激伝導異常; 房室ブロック、脚ブロック、WPW症候群

Ⅴ.二次性心臓病

[病態]心不全;心疾患・肺疾患(肺性心)・腎疾患などによる不全

    虚血性心臓病; 狭心症・心筋梗塞など加齢・動脈硬化に伴なう


1.出生前(胎児)診断

重症児のケアや原因に関する出生前診断として重要なものは、超音波(エコー)を用いた心臓や頭蓋内病変の診断です。この中で胎児心エコーでは、一般的な産科検診として行われ、先天性心疾患の約90%が検出可能と言われています。その他、胎児不整脈や心外奇形などもわかるようになり、出生後のケアに活用されています。先天性心疾患は、原因として染色体異常や母体の風疹感染などがありますが、原因不明のものも多いようです。いずれにしても出生前にある程度の診断や予測が出来ることは、産後の新生児の治療や障害の軽減に有用なことは明らかです。

2.重症児と心臓病(表Ⅲ-1)

先天性心臓病は、重症心身障害の原因とも関連して、重症児者の合併症として特記すべき疾患です。染色体異常の一部などの先天性因子や風疹感染など母胎の異常、子宮内発育障害などが原因と考えられます。先天性心臓病は治療しないと1歳までに30%が死亡するという恐ろしい病気ですが、軽症の心房中隔欠損などのように発育に従って消失するかさらに軽症化することもあります。しかし、重症児では四肢体幹の機能障害による合併症や虚弱、発達障害が加わるために心臓機能障害をさらに重篤にする場合も多いのです。

肺高血圧になる前の中等症では手術などの治療が有効ですが、高度の心室中隔欠損やファロー四徴症などのチアノーゼ型ではより重症で、予後不良です。望まれることは、治療機会の得られる疾患や状態、さらに治療可能な時期を逃さないことですので、担当医に率直に相談して頂きたいと思います。

3.心臓病の症状(表Ⅲ-2)

冒頭に述べた胎児期や新生児期で発見される場合は割愛し、小児期以降で注意すべき症状について述べます。心臓弁膜症などでは、症状がなく検診で指摘される場合は一般に軽症の場合が多く、動くと呼吸が早くなったり肩で呼吸する、すぐにかがみ込むなどの症状が目立つようになると心臓の障害を疑います。全身がむくむ、頚静脈が浮き出る、唇や爪が青くなる(チアノーゼ)などは、相当に病状が進んだことを示していますし、病気がわかっている場合でも、このようなサインが出ることは黄色信号です。放置せず、速やかに受診して下さい。また、出生後で小児期に罹患するものとしてリウマチ熱や細菌性心内膜炎による心臓弁膜症がありますが、発熱などの原因となる症状が収まった後に表Ⅲ-2のような症状があれば、心臓弁膜症が疑われます。また近年話題になっている、原因不明で進行性の心臓病である「心筋症」(拡張型・肥大型)があります。いずれも心臓の機能が進行性に傷害され、やがて心不全に陥る重篤な病気です。家族性にもみられ、若い時から発病します。心臓に余分な負荷をかけないためにも早期の診断が必要です。

また重症児者の年長化・高齢化に向けて、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病も珍しくなくなってきています。特に重症児者では、このような成人病が十数年は早く出現することが定説になっています。

表Ⅲ-2.循       

Ⅰ. 新生児期~乳幼児期

[症状] 哺乳量減少、発育遅延、運動減少、嘔吐

[所見] 心雑音、チアノーゼ、ばち状指

Ⅱ.小児期~成人期

[症状] 虚弱、運動減少、易疲労、易感染

[所見] チアノーゼ;先天性心臓病(右→左短絡)、

低酸素血症、多血症

  呼吸の異常;呼吸困難(動作後の喘ぎ・しゃがみ込み・多呼吸・肩呼吸)

  そ の 他;浮腫、不整脈、頚静脈拡大など