リスキリングとブラッシュアップ(能力の変化に備えて)

2024年7月27日 大圖健弘

 

 サードキャリアを考えていく上で避けて通れないものに個人の能力の変化がある。能力の変化といっても本人の備えている能力の変化だけでなく、本人に求められる能力の変化もある。

 まず、個人が保有する能力の変化が考えてみる。この中には記憶力の低下や個人が保有している知識等の陳腐化といったこれまで保有していた能力の変化に加え、加齢に従ってやる気の減退、疲れやすさの進行など新たな能力の変化が現れる。しかし、それでだけでなく、サードキャリアに伴う新しい世界に目を向けようとする好奇心や、キャリアの積み重ねを全うしようとする使命感などという、前向きの能力変化も少なからず影響を持ってくる。

 これに対し、キャリアを積んでいく中で、求められる能力も絶えず変化してくる。まず、今までのキャリアの延長上で活躍することを考えていても、社会自体が変化していき、新たに学ばなければならないことが否応なく増えてくる。又、今まで考えられていなかったものが新たに付け加わって、これまでのキャリアの延長上で今までの知識レベルでは対処できない事柄が発生したりする可能性もある。又、サードキャリアを新しい分野で切り開こうと思うのであれば、当然、今まで保有している能力だけでは対処できず、新しい知識の獲得を含めた新しい能力の開発を図っていく必要が出てくるのである。

 ここで、こうした能力の変化に備えて必要になるのがブラッシュアップとリスキリングではないかと思う。筆者が保有している「国家資格キャリアコンサルタント」の資格では5年ごとに資格更新のための勉強を結構な時間を割いて行わなければならない。この資格に限らず、実務で使用されている資格の中には、更新のためにこうした勉強を行わなくてはならない資格が少なからずある。「いつも使っている知識なのだから、そんな研修などいらないのではないか」と考えられる方もいらっしゃるかもしれないが、新しい知見や制度の変化を学ぶ必要が出てきたり、何よりも「長年自分流の行動」だけを繰り返しているとでついつい行動や考え方が偏ってしまうこと弊害が発生し、こうした偏りを是正するためにも資格に求められる能力の更新を行う必要が出てきたりすることも大きい。こうしたことも大きな意味での「能力の変化」であり、これを防ぐために「ブラッシュアップ」をすることで、能力の再開発することが重要な役割を果たすことになる。資格更新は、こうした「ブラッシュアップ」の非常に良い機会なのである。

 また、新しい世界に飛びこむにはその世界に必要な知識能力を身に着けることが必要でこれらのための勉学努力は広い意味での「リスキリング」に他ならない。私たちには、サードキャリアを実りあるものにするためにもこうした「能力に変化」に備えた「ブラッシュアップ」「リスキリング」を折に触れて行っていくことが大切になると思う。昨今、政府の声掛かりでリスキリングが結構ブームになっている。大上段に振りかぶって行う必要はないのだが、日常生活の中でこうしたことの重要性を理解しながら折に触れ「ブラッシュアップ」「リスキリング」に取り組んでみることが、サードキャリアにおける「能力の変化」に対応できる一つの手段かもしれない。

 

                                                  以   上

 

 

新たなキャリアに求められる能力の変化

2024年7月26日 鈴木 友之 

 

 職業に求められる能力の分類にはいくつか異なる視点があるが、そのうちの一つに、3分野、①概念化能力(論理的思考、課題発見、創造性等)②人間的的関わり能力、③個々の専門的能力、に分ける視点がある。①の概念化能力はいろいろと経験を積む過程で進化し、年齢と共に蓄積が期待される。②の人間的的関わり能力は持って生まれたパーソナリティーをベースに、いろいろな対人関係やチーム協力などの経験を通して個性豊かな人間的関わり能力が培われ、しかも衰えることはない。しかも、新しい仕事や取り組みにおいてもこの2つの分野、①概念化能力と②人間的関わり能力は、取り組み場面が違っても発揮すると期待される。「一芸に秀でる者は多芸に通ず」という諺の「一芸」は、この2つの能力がポイントと言える。

 

 一方の③個々の専門的能力はあるレベルまでは進化するものの、ピークを過ぎれば劣化が始まる。例えば、スポーツ選手であれば、その専門分野によってピークの時期は異なるが劣化が始まる。どんな花形選手でもある時期に、多くはサラリーマンの定年よりもずっと早い時期に、引退して指導者といったセカンドキャリアに転身している。例えスポーツ選手としてトップクラスにならなかった人でも、引退後に携わってきたスポーツの理論研究やコーチング勉強のために大学に入り直したり、米国等のそのスポーツの先進国に勉強に行き、卒業後にコーチや監督としてデビューし、一流のセカンドキャリアを築く人もいる。更にサードキャリアとして評論家に転身する人も多くいる。このようなファーストキャリア、セカンドキャリア、サードキャリアという転身は、それまでのキャリアをベースに何らかの関係のある分野への転身であり、無理のないキャリアシフトと言える。

 

 ところが、スポーツ一筋取り組んできた人が、セカンドキャリア或いはサードキャリアを考える時に、それまでのキャリアで発揮してきた③個々の専門的能力とは全く関係のないように見える仕事に取り組む人もいる。例えばスポーツ選手が自ら料理する飲食店の経営や、それこそラグビー選手から医師といった転身をする人がいる。しかしその転身後の様子を良く見ると、それまでのキャリアで培った①概念化能力、②人間的関わり能力を新しい分野でも発揮しながら、新しい分野に求められる③個々の専門的能力を修得して、目指す成果を出せるよう努力をしていることが分かるだろう。

 

 これからセカンドキャリア、サードキャリアに新しい分野への転身を考えるなら、まず自分がそれまでのキャリアを通して培ってきた①概念化能力と②人間的関わり能力の強みに何があるのか明確にすること。そのうえで、それらの強みを生かしながら、③個々の専門的能力がこれからの年齢でも、心身の能力の変化、特に劣化、に影響されずに成長できる分野かどうかを吟味する事が鍵と考える。

 

以上

川下り型でも目的・目標を明確にする

 

2024年6月30日 鈴木 友之

 

 私が相談に乗ってきたいくつかの事例を参考に、架空のひとAさんのサードキャリアを振り返ってみたいと思います。

 

  Aさんはファーストキャリアでは企業内でのIT活用に関わる仕事に就いていました。IT活用は、第一に社内、社外との連携などにおける省力化・効率化といった生産性向上を主眼に取り組んでいました。セカンドキャリアとして再就職した会社でも引き続きIT活用に取り組んでいました。そのころになるとコンピュータを生産性向上に活用するだけでなく、コンピュータとネットワーク、パソコンや携帯までも組み合わせた新しいビジネスの創出といったテーマも重要になり、興味は拡がっていきました。

 

  その頃、Aさんの会社では職能制度による人事制度に限界があると考え、人事制度の抜本的見直しをすることになりました。Aさんは、コンピュータシステムの見直しの立場だけでなく人事制度そのものの見直しにも直接関わり、3年かけて全面改定した新人事制度の導入から制度の浸透までフォローしたところで定年退職を迎えました。

 

 Aさんは定年退職を迎えるに当たりサードキャリアとして引き続きIT関係の仕事を続けるか否かを考えた時、いま一つ違うという感じを持ちました。それよりも新人事制度を浸透させる過程で社員一人ひとりと接する機会を多く持つ中で感じた何かに惹かれるものがありました。そのような状態のときに、偶さか人事コンサルから紹介されたキャリカウンセラー(現在のキャリアコンサルタント)という資格に興味を持ち受講してみることにしました。晴れて資格をとった後は、人びとのキャリア形成をサポートする役割に、ITでの仕事以上に興味と価値観を感じました。更に、コーチングや産業カウンセラー等の資格を取得し、キャリアコンサルタント・コーチとなり、個人事業主、則ちフリーランスとしてサードキャリアをスタートさせました。

 

 フリーランスの仕事は、黙っていても仕事はやってきません。自らチャンスを見つけ飛び込み、講師やファシリテーションといった未経験のスキルは都度勉強し、いろいろな理論を深め広げていきました。そのような努力を重ねた結果、実績と人脈ができると、新しい仕事が向こうからやってくるようになりました。それまでにできた仲間と話し合う中で、新しい仕事を発案して取り組む機会を持てるようにもなったということです。

 

 Aさんにとって、ファーストキャリアとセカンドキャリアでの目的は所属する会社で「ITを生かして生産性の向上や新ビジネスを創出する」ことであり、目標は企業が置かれた状況から設定される目標でした。一方、サードキャリアでの目的は「人びと一人ひとりのキャリア形成を支援し目指す目標の達成に、ひいては組織・社会の活性化に貢献する」とし、最初の目標は「キャリア形成支援の3分野、①転職・再就職、②企業内、③新卒就職での経験を積む」としました。会社の目的・目標ではなく、自から設定した目的・目標が大きな違いでありやりがいとなりました。

 

 いかがでしょうか、前回のブログでサードキャリアは「緩やかな川下り型」でと申し上げましたが、偶然の出会いの連続に見える川下り型と言えでも、川の流れに身を任せるのではなく、目的と目標を明確にして取り組むことが一層重要に思っています。

 

以上

2024年6月26日

延川和治

 

サードキャリアの目的・目標の、現実的な明確化は、正直なかなか難しいと思います。

 

「100年人生」と言われ始め、使われ始めているけれど、厚生労働省発表の2023年日本人平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳、二年連続減少との現実もあり、夢を追うことの大切さに合わせ、現実の地に足を付ける重要性も意識させられます。 現在70歳の男性であられるなら、平均的にはあと余命10年余です。 この時間の制約の中で、何を目的・目標にされるかです。

 

一方、健康で、興味があることができ、思う生活ができる経済力があり、他人との交流も、また活動を通して社会貢献もできる生き方を続ける、あるいは、改めて作っていける何かをすることを、サードキャリアでの目的・目標と、まず考えられることは、極く自然のことと理解をします。

 

厚生労働省の別の統計では、生活習慣病にかかっている日本人は7000万人を超えている(一人が一つの病気ベースの集計で、複数の病気を一人で罹っていることもあり、数字は実際より多いと思いますが)らしく、現在そのご苦労が始まっておられる方も、またこれから始まる方もかなりおられると想定、健康面で何らかの制約がこれから生まれてくる可能性も否定できないでしょう。 できれば、その制約がでてきたとしても、達成にむかえるような目的・目標を、これからの目的・目標とされていきたいのではないでしょうか。

 

自分が興味があることに、いままでかかわってこられ、それを引き続き行う事ができる方はまだ安心も、これから新たに始めようとするときには、そのスタートや、加速、展開への体力エネルギーの必要性を意識しておく必要があるのではと感じます。 ここにも目的・目標設定への制約の可能性がありそうです。 興味があることを行い充実したキャリアを過ごしている御自分の最終的な姿を、できるだけ明確化し、そこで必要とされているエネルギーと、今とこれからの御自分が持っておられるであろうエネルギーを前もって比較されておくのも、その設定目標へスタートを切るときの安心への一つの要素かも知れません。

 

他人との交流、それもいつも同じ他人ばかりではなく、いろいろな方々と新しい交流が始まることは、精神的にも、肉体的にも大きな刺激になり、ひいては活躍できる年齢の延長につながるように思います。 ご自身の身の回りの方々、またその方々の周りの方々、等々、仕事を通じて、プライベートでも、なにかの催しでも。いろいろな方々との接点を作り続けられることも、お考えの目的・目標のなかに折り込まれてみられてはいかがでしょうか。

 

残された時間が少なくなってきていることは、否定することができず、精神面でも体力面でも、マイナスのスパイラルに落ち込みそうなサードキャリアの方もいらっしゃるかも知れません。 それでも、ご自身をそこから引上げ、プラスのスパイラルに持って行くのは、やはり、ご自身の思いと意思と思います。

 

サードキャリアでは、これらいろいろな制約が、だんだんに増えてくると思えますが、それらにしっかり足を置き、ご自身の為し得られる、また、ご自身が満足し得る目的・目標に、どうか向かわれてください。

 

それらを為し得られたときの、御自分の様子を思い描きながら。

 

応援しています。

 

以上

サードキャリアの目標は

                  2024年6月23日 大圖 健弘

 

 キャリアを重ねていく中で、それぞれのキャリア形成の目標を明確化することは重要なアクションとして位置づけられている。サードキャリアを考えていく中で、その意図、目標を明確化することはやはり必要なアクションであることは間違いのないことであろう。しかし、この目標の明確化ということが、意外とサードキャリアを重ねる中で難しい問題になってくる。
 学校を卒業して新しいキャリアを歩み始めた時期には、そのキャリアの目標は、その道を究めたり、仕事の中で自分がランクアップしたりと、比較的明確な目標設定をすることが容易に行うことができた。所謂「末は博士か大臣か」ではないが自分の将来の夢としてのキャリア目標を比較的長いレンジでとらえ、目指すことが当たり前のように感じられ、その目標に対して素直に邁進することも可能であった。少し時代が下って、中年域に達し、セカンドキャリアを歩み始める段階においても、まだ、個人の生活野安定を願ったり、更なる高みを目指したり、とまだ自分がやらなければならないことも多く、目標を設定できる自由度もかなり大きく、まだまだ、自分のキャリアの目標は容易に設定できる範囲内にあることと思われる。

 これに対し、サードキャリアでの目標設定はかなり様相が違う。比較的高齢行きに入ってきた時点で、何を目標とするかについてはかなりこれまでの考え方から転換をしていくことが求められる。まず、生活については、基本的に65歳から公的年金の支給も始まり、贅沢をしなければ最低限の生活ができることが見込まれ「生活の為のキャリア形成」という側面が薄くなってくる。それでは社会で成功するといっても、既に社会で活躍できる分野は限られてきており、それまでのキャリアである程度成功を収めないと社会での成功をこれから収めることは難しくなっている。又、若い時と異なり、キャリアを積むために残されている時間が少なくなってきており、夢の実現といった長いスパンの目標より、現実的で日常生活に根差したキャリア目標の設定が重要になってくるのである。

 こうした中でのキャリア形成の目標設定はどのようにしていくのがいいのだろうか。まず、目標設定の考え方を見直す必要があるかもしれない。今までは目標が結果目標中心で何かを成就させたり、なにかを達成したいという考え方でキャリア目標が語られてきたことが多かったのではないだろうか。しかしサードキャリアの中ではなかなかこのような達成目標を設定することは難しい。すでに触れたように、キャリアの積むための時間も短くなっており、またそのような目標を求められることも少なくなってきているからである。

これに対し、サードキャリアでの目標はキャリアを形成していくプロセスにあるのではないかと考える。キャリアを積んでいく過程でどのような行動様式をとっていくかが必要になってくる。

 例えば、筆者は今合唱のサークルに入っているが、ここでの団体の活動目標について考えてみると、メンバーによって考え方はバラバラのところがある。確かに、学生時代のサークル等とは違いコンクールに出て良い成績を取る等の明確な目標は作りにくく、メンバーの年齢構成も幅が広く、結果目標を設けることは非常に難しい。更に高齢者になれば、難曲をこなしていく能力も失われつつあることも否めない。しかし、日頃の活動の中でお互いを高めあっていこう、日頃の活動が充実できるようにしようという目標を持って活動することは誰にでもできることであり、参加者はこうしたことを目標にしてそれぞれ自己研鑽を積んでいる。その中で、お互いが挑戦でき楽しめる曲目を選択し、行動目標が達成できるように備えてきている。サードキャリアの世界ではこうした活動過程の目標を設定することが、ある意味機能しているのである。

 サードキャリアの目標設定はこうして考え方を変えて行っていくことを、考えたらいかがだろうか。例えば、キャリアの中で社会貢献をする。日々、充実感を持てるような行動を行っていく。等、個人個人が納得できるような行動過程がキャリアの目標になる。是非こうした目標設定を行っていきたいものである。

 

 

                                以  上

キャリアチェンジのとき


2024年5月19日
延川和治


キャリアチェンジに二つのタイプがあると思います。
一つは、自分が判断しチェンジしていくもの、もう一つは、勤務先の倒産等で強制的にチェンジさせられるものがあると思います。
また、自分が決めるものにも二つタイプがあって、キャリアプランを既に建てていて、それを目標とし、達成に向けてチェンジしていくものと、刹那刹那で現状が嫌になり、現状逃避でチェンジしていくものがあると思います。
理想は、御自分のキャリアステップを上がっていくキャリアチェンジをされることと思いますが、現実はなかなか厳しいものがあると理解しています。

刹那刹那で現状が嫌になり、キャリアチェンジを思う方々には、まず自己を見つめ直して頂きたく思います。 本当の自分は何なのか、何をやりたいのか、何に向かって進みたいのか。 繰り返し繰り返し良くこれらを考え、自身で掴み、それを他人に、情熱をもって語れるようになって欲しく思います。
キャリアコンサルタントは、必ずや共にこれからの道筋をプラニングすることを支援してくれるはずです。 サポートが必要であれば連絡してみてください。
合わせ重要なことは、この作業を、辞めたいと思う現在の職場から離れる前に完成させることです。 現在の職場を離れた後では、経済面も含め、環境が非常に厳しくなります。

キャリアプランに沿って進んでいる方々は、日々が充実されていることを願います、ただ、世の中そうは甘くないのではないでしょうか。  都度都度振り返って、御自分の思いとかけ離れているところを把握され、その獲得をどこに求めるのかを追求していくことが求められると思います。 周囲の理解者を始め、いろいろな方々に接触され、お悩みを話されるのがいいのではと思います。 もちろんキャリアコンサルタントもその中に含まれるでしょう。 時間の経過と共に、作り上げたいと思われていることの周囲の環境も変ります。 ご自身の思うキャリアの達成へ、周囲の変化への対応の柔軟性と、成し遂げる心の強さが必要になるのではないでしょうか。

強制的にキャリアチェンジさせられるとき、そのショックから、全てを失い自分には何もないとの思いがまず沸くと思います。 加えて今日から食べていく糧が必要になるわけで、
その経済的側面が非常に強い物になると思います。 自分を捨てて、家族の為にも、先ずは何でもいい、稼げることをやろうと。
でも、このときでも、自己をなんとか捨てないで、自己をつか見直し、少ない選択肢しかないかも知れませんが、その中で自己が生きるものを掴んで頂きたく思います。
年齢の壁も大きく作用すると思います。  一方自分を知る友達、同僚、親戚縁者などから
良い情報を得ることも多いと思います。  環境、形も変り、大変と思いますが、御自分のキャリアの実現を、負けずに成し遂げて頂きたく思います。

                                                       以上
 

70歳台からは緩い「川下り型」で

 

2024年5月18日 鈴木 友之

 

 高齢者になると2つの視点で労働条件に制約がでてくる。一つは健康面で基礎疾患と体力の問題。もう一つは運動神経や思考能力の低下。健康面は、常に仕事を出来る状態を維持することが厳しいと自覚して臨むことが肝要になる。もう一方、運動神経や思考能力について大きくは低下していることを自覚して昔の杵柄を期待せず、新たなことに取り組んでいく事がポイントとなる。

 

 この後者「運動神経や思考能力の衰退」を織り込んで仕事に就くと言うことは、従来の延長線上の仕事ではなく、全く新しい仕事に就く気持ちで自分の運動神経・思考能力をよく認識して条件を考え、条件に合った仕事を見つけることが重要な視点だ。その時には一つ収入をどの程度必要とするによって選択肢も変わってくる。収入と自由な時間の確保が重要なら、フルタイムの非正規雇用だけでなく最近普及し始めたネットワーク上で募集されるスポットワークも選択肢になる。一方で、収入にはこだわらず自由な時間に体を動かして頭も使うような仕事を通して、やりがいと体力維持・ボケ防止が目的なら、自分の仕事に限定せずに得意とすることを生かす方向性が考えられる。

 

 収入に拘らず、やリがい・体力維持・ボケ防止を主眼にした例には、例えば資格を生かして、合気道といったスポーツの指導員やコーチング、或いは、家庭菜園、植木職人の手伝い、料理、絵画、音楽、茶道・書道、俳句・短歌、囲碁・将棋などの世界で興味を追及するのも一案。一人でもできるし適当な仲間がいると励みだけでなく健康管理にも繋がるメリットがある。ある人は市民農園を借りて家庭菜園を本格的に取り組んでいる。借りた農園をどのように区分けしてどのように野菜を育てるか調べ、農園の隣り同士で情報交換して工夫し、朝早くから汗を流し、新鮮な収穫を家族と味わい、更にはご近所にも配って楽しんでいる。或いは、思い立って俳句を始め新聞の俳壇に投句して楽しんでる人もいる。行動することで新しいライフスタイルが開けていくようだ。

 

 既に持っていた趣味を発展させるのならスムーズに移行できるが、思い立って新たに始めるとなると習うことから始めるため、リスキリングでのそれなりの苦労を覚悟することが必要になる。いきなり高い目標は持たず、継続は力を胸に、一歩一歩ゆっくりと前進できれば良いと思うことが肝要だ。現役時代のような高い目標をもって挑む「山登り型」ではなく、自分の習熟ペースを大切にした「川下り型」で、しかも急流ではなく緩やかな川下りを大切に、周りの風景も楽しむ余裕をお勧めしたいが、いかがだろうか。

以上

キャリアチェンジ・ナウ

 

2023年5月16日

大圖 健弘

 

 

 サードキャリアを考えていく上で、避けてはいけないことがある。それはキャリアチェンジ。新しいキャリアに調整するのだからキャリアチェンジが起こることは当然なのだが、このキャリアチェンジが大変なことだ。「仕事が変わって大変ね」というただそれだけの事であれば、たいしたことがないように思えるが、仕事が変わるという事によって、これまで当たり前に思っていた職場環境や、仕事に対する考え方、人間関係など、多くのことがリセットされ新しい環境が用意されることになる。ともすれば、これまで自分が培ってきた価値観をも覆しかねない事態になる。こうした中で、私たちはどうすればよいのだろう?

 ここまで言及すると何かキャリアチェンジがおどろおどろしいことに感じ、しり込みをされる方もいらっしゃるもしれないが、実はそんなに大変でないかもしれない。事実、そんなに大変なことであったら、世の中にキャリアチェンジをしようとする人材がこんなに多いことは無いはずである。キャリアチェンジをする世界というのは確かに自分を取り巻く環境が合わる世界であるが、それはとりもなおさず、自分が学び変わっていく世界であるからだ。このキャリアチェンジの世界では、人は新しい人と出会い、新しい考え方に触れ、新しい行動指針を得ることができる。これらは、一つの世界にとどまっていたのであればなかなか得られない世界である。確かに友人や職場の先輩、後輩等からいろいろ学ぶこともあるが、どうしても同じ環境下にある場合、類似した発想、行動規範に基づいたことが多くなる。これに対して、キャリアチェンジ後の世界ではこうした環境が一新される。こうした新しい世界を脅威と捉えず、なかなか得難い経験として自分の中に取り入れることが出来れば、キャリアチェンジが自分にとっての良い経験と感じられ、おどろおどろしいことに感じなくなくなれるのではないだろうか。

 確かに、今まであったこともないような人物に出会う事もあり、これまで簡単に事が運んでいたものが、運ばなくなることもあるかもしれない。選んだキャリアが仕事でなく、趣味の世界だったりすると、メンバーが目指すところがまちまちでまとまりをつけるのに苦労することもあるかもしれない。しかしそうした中で得られる経験が、これからの自分の人生の中で生きる肥やしだと思って、キャリアチェンジを楽しむことも人生の醍醐味かもしれない。

要するに、チャレンジ精神をもって、新しい環境を楽しむ姿勢で取り組むことが大事である。自分の意識を変化させ、飛び込めるのはチャンスがここにある。是非楽しんでいってみようと思う。

 

                                以  上

転職とは新しい革袋と思え

 

2024年4月21日 鈴木 友之

 

中高年の転職面接で戸惑う質問の一つに、「あなたのパソコンはWindowsだそうですが、当社のパソコンはマックですが、大丈夫でしょうか?」と質問された時に、どう答えるかだそうだ。Windowsとマックの違いを即座に気が付いて答えることができれば良し、はて何の質問かと戸惑う人が多いと聞く。

 

新しい革袋に入れば、当然新しい仕事の仕方だけでなく新しいオフィス環境があるわけで、フレッシュな気持ちで取り組む姿勢が必要だ。かつて企業の人事関係に携わった経験から、特に中高年の再就職の方々にはいろいろな姿勢がみられて興味深かった。なかでも極端な例には、何でも人事や総務に頼めばやってもらえるという感覚の人がいた。仕事の環境を整えるまではサポートするが、例えばコピーを取るのは自前だということを理解していない人がいた。最初の1-2か月は、丁寧に説明するが、人に頼むのが当たり前と言う感覚から抜けきることの難しさを感じた。

 

かつて、米国の現地法人を立ち上げた会社で、いろいろな会社から転職してきた人々が、新しいオフィス文化を作っていった経験を思い出す。偶さかかもしれないが、米国人の社長が、毎朝、コーヒーを入れに自らカフェテリアにやってきていた。秘書がいるにもかかわらず。日本企業から出向した役員の中には自室にこもっていて秘書にコーヒーを入れてもらうのを好む人もいた。。勿論、どちらが良くてどちらが悪いということでもないが、それまでの習慣を変えられない部分もあると感じた。半年もすると、自然と新しいオフィス文化が形成されていた。

 

大事なことは、自分流という、換言すると、前の会社で馴染んできた仕事の仕方が染みついてなかなか変えられない自分に気づくことだろう。会社ではチームワークが大切、パスプレーが出来なければ得点には結びつかない。即ち、自分のやりかたを捨てるのではなく周りとのスムーズなパスプレーが出来るよう意識のチェンジして、新しい革袋、ならぬ新しいオフィス文化に昇華させることと思うがどうだろうか。

 

以上

 

2024年4月20日

延川和治

 

四月、入社してすぐに、入社前に聞いていたことと違う、配属先が自分の希望に合わない、などとして、会社との妥協点も見いだせず、退職エージェントを通して、退職をしていく若者がそこここにいると聞く。

一方、自己のキャリアプランを立て、実践し、会社にとらわれず、むしろ会社を自己のプラン達成への足がかりや段階の一つとして利用し、キャリアアップを図っていく考え方の講習を大学で学び、実践し始める若者もいることも聞く。

人それぞれであるが、いつれにしても、若者には、これから、紆余曲折を経ながら成長発展していく豊富な時間がある。 

 

一方、キャリアの教育など受けず、サラリーマンとして一心不乱に頑張り、気がつけばサードキャリアに突入している御仁には、もうそんな時間はない。 

いや100年人生、あと30年あると言われる。 

けど、若者のこれからの30年と、我々のこれからの30年は文字は同じでも、中身は全く違う感覚がある。 成長の30年と衰退の30年。 どうあがいても変えようのない寂しい感覚。 もう終わりに向かう時間しかない。

 

なんとか組織の中で頑張ってきた。 定年、再雇用、契約社員、顧問契約、組織にすがってきた。 けど最近、周りの態度、言動、雰囲気から、もうご苦労様でしたを感じる。 皆の役に立つと思うこちらの一言が、もう要らん一言らしい。 周囲からの諸事連絡もれも出始めている。 連絡しておかねばならない一人にはもう入っていないようだ。 もう要らない人間らしい。

 

昔一緒に頑張ってきた先輩、後輩、同期も、今となってはバラバラ、どこでどうしておられるのか。 友好を暖める必要性・重要性を分かりながらも、眼前の仕事に没頭し続けてきて、気がつけば、自分は今、一人。

 

話をしている最中でも、人の名前がでてこない、言わなくてはいけないことを忘れてしまう、相手の話の中身をしっかり覚えている時間が短くなっている。 立ち上がろうとすれば、やれどっこいしょ、階段は苦手、歩くスピードは遅くなり、左右に揺れながら歩く自分を感じている。 目も見えにくく、ろれつも回りにくくなり、身体が、体力が衰えてきていることをはっきり感じる。 

 

これからどうするのか。 耐え難き孤独感。

 

こんな方々、

もう一度御自分を見直してみませんか?

御自分の今までのご経験、そのなかでの多くのご苦労、嬉しかったこと、達成感を感じたこと、 そんなご自身の今までを、コンサルタントにお話始められてはいかがでしょうか?

 

サードキャリアを考えるスタート。 

100年人生の残り30年、コンサルタントと一緒に考えてみませんか?