リスキリングとブラッシュアップ(能力の変化に備えて)
2024年7月27日 大圖健弘
サードキャリアを考えていく上で避けて通れないものに個人の能力の変化がある。能力の変化といっても本人の備えている能力の変化だけでなく、本人に求められる能力の変化もある。
まず、個人が保有する能力の変化が考えてみる。この中には記憶力の低下や個人が保有している知識等の陳腐化といったこれまで保有していた能力の変化に加え、加齢に従ってやる気の減退、疲れやすさの進行など新たな能力の変化が現れる。しかし、それでだけでなく、サードキャリアに伴う新しい世界に目を向けようとする好奇心や、キャリアの積み重ねを全うしようとする使命感などという、前向きの能力変化も少なからず影響を持ってくる。
これに対し、キャリアを積んでいく中で、求められる能力も絶えず変化してくる。まず、今までのキャリアの延長上で活躍することを考えていても、社会自体が変化していき、新たに学ばなければならないことが否応なく増えてくる。又、今まで考えられていなかったものが新たに付け加わって、これまでのキャリアの延長上で今までの知識レベルでは対処できない事柄が発生したりする可能性もある。又、サードキャリアを新しい分野で切り開こうと思うのであれば、当然、今まで保有している能力だけでは対処できず、新しい知識の獲得を含めた新しい能力の開発を図っていく必要が出てくるのである。
ここで、こうした能力の変化に備えて必要になるのがブラッシュアップとリスキリングではないかと思う。筆者が保有している「国家資格キャリアコンサルタント」の資格では5年ごとに資格更新のための勉強を結構な時間を割いて行わなければならない。この資格に限らず、実務で使用されている資格の中には、更新のためにこうした勉強を行わなくてはならない資格が少なからずある。「いつも使っている知識なのだから、そんな研修などいらないのではないか」と考えられる方もいらっしゃるかもしれないが、新しい知見や制度の変化を学ぶ必要が出てきたり、何よりも「長年自分流の行動」だけを繰り返しているとでついつい行動や考え方が偏ってしまうこと弊害が発生し、こうした偏りを是正するためにも資格に求められる能力の更新を行う必要が出てきたりすることも大きい。こうしたことも大きな意味での「能力の変化」であり、これを防ぐために「ブラッシュアップ」をすることで、能力の再開発することが重要な役割を果たすことになる。資格更新は、こうした「ブラッシュアップ」の非常に良い機会なのである。
また、新しい世界に飛びこむにはその世界に必要な知識能力を身に着けることが必要でこれらのための勉学努力は広い意味での「リスキリング」に他ならない。私たちには、サードキャリアを実りあるものにするためにもこうした「能力に変化」に備えた「ブラッシュアップ」「リスキリング」を折に触れて行っていくことが大切になると思う。昨今、政府の声掛かりでリスキリングが結構ブームになっている。大上段に振りかぶって行う必要はないのだが、日常生活の中でこうしたことの重要性を理解しながら折に触れ「ブラッシュアップ」「リスキリング」に取り組んでみることが、サードキャリアにおける「能力の変化」に対応できる一つの手段かもしれない。
以 上