目標達成にむけたパブリックコミットメント(公言)の効果
2026年7月26日 鈴木 友之
大分昔の経験だが、20代に仕事で一緒した先輩と1か月間昼夜をともにする突貫工事のような仕事をした時期があった。二人とも独身だったから出来たのだろうが、仕事に追われる中で食事も睡眠時間も不規則な生活になり、仕事のストレスもあったのだろう、不摂生な食事で見る見るうちに太って来た。あるとき二人で食事しているときに、太ってきて服を作り直す必要性に話が及んだ。このまま太ってしまうのは受け入れ難い、ひとつ気合を入れて体重を減らそうという結論に至った。ふたりそれぞれの目標体重を設定して、仕事が一段落する1か月後に体重を図り、目標を達成した者に達成できなかった者がご馳走することにした。私は岩城宏之さんの減量体験談を参考に、減量作戦を立てた。まず毎日の食事のメニューを手帳に付けて、カロリーを概算で算出し記録し、体重も測って記録する。二人一緒にする昼食や夕食では、定食のご飯など半分ずつに分け合ったり、魚や肉料理は敢えて半分残したり。一方、野菜などはしっかりと摂るように心がけた。もちろん、間食はせずコーラなどの甘い飲み物は止めてお茶や水で済ませた。一か月後、二人で社内にある診療室の体重計で図り、減量値を確認。二人とも10kgを超える減量目標をめでたくクリアできていた。二人でお互いの努力を祝ってご馳走し合った。
これは正に目標を達成するための方法「パブリックコミットメント(公言)」で多くの方が実践しておられると思います。この方法の効果には大きく3点あげられる。前述の例に当てはめて考えると次のような効果となる。
① 責任感の向上
同僚と宣言し合うことで達成への責任を強化した。
② モティベーションの維持
食事のカロリー計算をして記録し、体重も毎日図って記録して、改善は喜びに、悪化は反省につなげた。目標達成の暁には
ご馳走が待っている、また着ている洋服がきつくなっているのが解消されるといった楽しみをイメージした。さらには、食
事管理と体重測定を記録することが楽しみにもなった。
③ 周囲からのサポート
仕事を日夜一緒にしている同僚と状況を共有して励まし合った。
一方で、実践する際の留意点としては、
① ハードルが高すぎる目標にしない
減量目標に際しては、身長と体重の関係から適正な体重を割り出して減量目標を設定した。実行に当たってカロリーは抑
えるが、野菜などを積極的に食べてビタミン等の栄養素をしっかりとるようした。これは空腹対策にもなった。
② 進捗の共有
周囲からのサポートでも述べたように、同僚と状況を常に共有して励まし合った。
では、なぜパブリックコミットメントが目標達成に有効なのか。一つには「一貫性の原理」によると説明されている。すなわち、人間には「自分の言葉や信念、態度、そして行動を一致させたい」という強い欲求がある。例えば、「一貫性のない人間は信頼できない」とか「意志が弱い」とみなされるのではという社会的評価への懸念があり本能的に一貫性を保とうとする。また、一度決定した方針に従い続けることで、毎回ゼロから決断する思考ストレスを減らせるといった効果があるとも説明されている。さらに、公言することで「自己イメージの固定」につながり、公言を破った時の「信頼失墜」といった社会的コストが生じる懸念から一貫性の原理が強化されると考えられる。
また著名な心理学者レオン・フェスティンガーの提唱した「認知的不協和理論」という視点から考えてみたい。まず、「目標を宣言した自分(A)」と「行動していない自分(B)」の間に矛盾が生まれると脳は強いストレスを感じる。Aで公言した目標を変えられないとなると、矛盾を解消するためにはBの行動を変えることになる。
イソップの「酸っぱいブドウ」寓話では、キツネが高い木の上にあるおいしそうなブドウを見つけて何度も飛び跳ねあがっても届かない。どうしても届かないので「どうせあんなブドウは酸っぱくてまずいに違いない」と言って立ち去っていく。飛び跳ねても届かないキツネがA、「おいしそう」という考えを「酸っぱいに違いない」に変えて立ち去るキツネがBとなる。
私の減量努力の例に当てはめると、減量目標を公言した自分がA、いろいろと食べたい自分がBとなる。Aが公言した目標を変えられない状況で矛盾を解消するために、Bが考えと行動を変える、即ち食事を管理維持することになる。
どうでしょうか、何か成し遂げたいときには、途中で挫折する可能性から公言を避けて、こっそりと頑張って、達成したら高らかに発表したいと思う気持ちがありと思います。私がそうですから。しかし、そこを敢えて公言することで行動への動機づけを強化してみませんか。上記に紹介したように、無理せず達成可能な範囲でストレッチした目標設定、モチベーション維持する方法を取り入れて、公言することで周囲のサポートも得て、トライしようではありませんか。
以上