充実したサードキャリアへのポイント

 

2025年3月23日 鈴木 友之

 

 サードキャリアを考えるにあたり、仕事だけでなく生活も含めたライフキャリアについて、日経新聞に連載の「私の履歴書」を例にとって考える。執筆者はみな世間的にしっかりと認知される実績をあげてきた方々だけに、どの人の半生記も素晴らしい内容に満ちている。しかしだ、官界、財界、政界、スポーツ・芸術など各界での大きな実績・功績にいたる苦労話には大きく分けて2種類の感想がある。一つは、苦労話のなかで時につまずきながらも「着々と成果」を上げる内容。もう一つは成果に至る道筋が一筋縄ではなく山あり谷あり、「波乱万丈」の生き様を率直に披瀝されている内容。勿論、後者の内容が興味深く、示唆に富んだ内容だ。

 

例えば、先月、連載された一条ゆかりさんという漫画家の自由で奔放な生き様は半端ではない徹底した自己追求の物語。成功談は勿論あるが、失敗や苦労の裏話も赤裸々に書かれている。同様にスポーツ界の方々は○○道と言えるような徹底・集中して努力し、時に大きな挫折に不安を感じながらも気を取り直して乗り越える展開が赤裸々に書かれている「波乱万丈」タイプで興味深い。一方の政財界で実績上げた方々の多くは上記での前者「着々と成果」タイプで、正直インパクトが薄い。勿論、例外的に後者の「波乱万丈」タイプでとても興味深く、翌日の話しを待つ感じの内容のものも少数だがある。では、「着々と成果」タイプと「波乱万丈」タイプの違いは何か。それは後者が、失敗談の中で努力しても報われないことが多い現実に繋がるエピソードを率直に披露しているところだ。一方の前者「着々と成果」タイプは、例えば成人に至る成長期のちょっとした失敗談が書いてあっても、後年の成果に至るも決して順調ではなかったという証といった程度の印象。社会に出てからの人生で、痛恨の極みや激しい怒りを感じたようなことが一つや二つでなくあっておかしくない。それが書かれていないのは、終わり良ければ綺麗さっぱり忘れてしまうからだろうか。凡人の私には理解できない。

 

 私は、矢張り一条ゆかりさんのような徹底して自分に忠実にやりたいこと、やるべきことを追求していきたかったけれど、例えば生活のため不本意な内容の漫画制作、といった自分を率直に認めて、いまある自分を語れるようになりたいと思う。が、中々難しい。自分の中では認知していても、人には言えない苦しかったこと、悔しかったこと、申し訳なく思うこと、時に自己正当化したい気持ちを乗り越えてさらけ出すことが、どうしたらできるのだろうか。

 

  一つ、方策として思いつくのは、浄土真宗の僧侶だった吉本伊信氏が考案した「内観療法」がある。浄土真宗の「身しらべ」を応用した心理療法だが、閉ざされた個室の中で自己をふり返り、次の3つのポイントで書き出す。①人に世話になったこと、②人にして返したこと、③人に迷惑をかけたこと。この3つについて、ひたすら事実を思い出して、カウンセラーに語る。これを通して、自己の思考のクセや思い込みに気づき自己成長が促される、更に当時は気づかなかった他者の状況や背景に思い至り、対人関係の改善につながるといった効果や、うつなどの精神疾患に有効といった効果があげられている。加えて、私としては、⓸人から受けた迷惑、も書き出したい。ただし、これは、迷惑をかけてきた人を非難するためではなく、「脇の甘さ」といった自省の未来志向を目的に。

 

  そのような自己の振り返りを通して、自己を未来志向で認め、より広き自己開示を全てとは言わないまでも出来るようになり、常に新たな自分を引き出して未来に向かえるようになりたい。こうして充実した日々を送ることができるようになると思う。そのためには、敢えて内観療法のような場を設けなくても、自分が置かれている日常的な環境の中で、静かに自己を振り返る時間を持つことで、例えばスマホやパソコンが時々バージョンアップをするように、自分をバージョンアップして生活を充実させていきたい。

 

以上