岩野卓司さんの、贈与論についての本。


最近気になっていたトピック、贈与論。「10代から知っておきたい贈与の話」がテーマだそうで、贈与論をはじめて知るならこの一冊、という感じでたいへんよくまとまっていてわかりやすかった。


内容としては、日常にある贈与からはじまり、みんなが贈与と思っていないけど受け取っている贈与、贈与の慣習の歴史、新しい時代の贈与、さらに自然の贈与と続く。


プレゼントだけじゃなく、知識も教育も言語も憲法も、太陽の光だって贈与となれば、逆に、贈与じゃないものってもはや何?それをあらためて「贈与論」と呼ばなくても、もうすでに私たちの生活のなかにあるものだったのか!という感じになってくる。


というわけで気になったところをメモ。


・贈与と商業的交換のいちばんの違いは、贈与には精神的な交流がともなわれているが、商業的な交換はそれを切り捨てる傾向があることである。(8p)


・贈与するということは、相手と対等の関係を結ぶことではない。贈与するだけでは、与える人が優位に立つことになる。贈与された方が、お返しとして同等のものをあたえることで関係は平等になる。(36p)


・給付金という、一見すると国の側からの一方的な贈与と見えるものも、実は国の側からのお返しだということがわかるだろう。だから国に対して恩や負い目といった特別の感情をもつ必要はないのだ。(102p)


・人はいいものをもらった喜びから今度は自分が贈与しようとする気持ちにかられるのだ。(112p)


・古代ローマでは、災害に見舞われて村の橋が壊れ道路が寸断されたとき、その地域の貴族は私財を投げうって復旧の工事を請け負い、村民たちに貢献しなければならなかった。だから、貴族は感謝され尊敬されていたのである。(ノブレス・オブリージュの原型について。136p)


・ハロウィンとクリスマスの本当の意味は、太陽の日射しが弱まり生命の危機を感じたとき、古代の人々が異界の住人たちとおこなった贈与の儀式なのである。(139p)


・「いただきます」は一見すると古来の食事のあいさつと思われるかもしれないけれど、意外にその歴史は浅い。昭和になってからの習慣である。(142p)


・闇を照らすことこそ、光の贈与なのだ。(151p)


・(宮沢)賢治にとって理想の食べ物は、肉でも野菜でもない。風や光なのだ。(152p)


あと、この本でカバーできなかったテーマ、「臓器移植とケア」とあとがきに書かれていて、もしこれが将来文庫化されるなら、岩野さんにはぜひそこを加筆していただきたい!(私がいまケアする立場だから!)









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