辛酸なめ子さんの特集ムック本。2004年発売。

デビューして間もない新人のころにムックでまるまる一冊特集が組まれていたなんて、この自虐ガーリーポイズンに侵されたのは私以外にもたくさんいたことがわかってうれしい。

はじめてなめ子さんのマンガを読んだとき、爆笑しすぎて腸捻転になりかけ、マンガで人を殺せると本気で思ったものだった。とにかくデビュー当時の、学校の壁新聞のような自由奔放な想像力が爆発しているんである。

「荒川セレブのプライベートルーム」という華々しいキャッチコピーをつけられたお宅紹介では、ごみ溜めのような汚部屋の写真と、「インテリアで気をつけていることは……ほとんどないです。電球がチカチカしたら変えるくらい」キャッチコピーとコメントのしれっとした落差(笑)。

「三十路前宣言」では、「こうして若さを享受することのないまま、私は三十歳を迎えます。若いと思ったことがないので、若さを失うことへの恐れもありません。今、私はとても安らかな気持ちです……。」

泣く子も黙る名門私立女子校の同級生による覆面座談会では、なめ子さん在学時の数々の節約エピソードに花が咲き、「えみちゃん(←なめ子さん)には節約する喜びがきっとあるんだよ」。一般家庭の子が私立に通うということの経済事情が、お嬢様育ちのクラスメイトにまったく伝わっていないところに、なめ子さんの孤独を感じたり…。

そして年表では毎年毎年、コンプレックスにさいなまれて屈折した心中と行動に大げさじゃなく爆笑してしまった。この誰とも似て非なる衝撃的な作風がどこから来たのか、やはり「自分の中から」でしかないのですね。そしてわずか5歳で一人単行本を自主制作して発表するなど、天才は子どものころから天才なのだなあと思った。

その後、アイドルをネタにした記事が事務所の逆鱗にふれ、菓子折をもって謝りに行ったら黒服の男たちに囲まれるというトラウマ体験などを経て(笑)、若干表現が丸くなられたけれどもやっぱり大好き。

あの頃の私に、将来は辛酸なめ子さんに自分の文庫本の解説を書いてもらうという栄誉にあずかることになるから人生あきらめずにがんばれ、と言ってあげたい。

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