『「オードリー・タン」の誕生』

石崎洋司さんの伝記本。オードリー関連本はたくさん出てるけど、こちらは小学生から読めるということで、平易な言葉で、ということはつまり、ＩＴやデジタルに関して小学生並みの知識しか持っていない私でもするする読めるってことなのです！

それでいて、先天的な心臓病、ギフテッドの苦悩、いじめ、不登校、10代で企業、若き天才ハッカー、トランスジェンダー、そしてデジタル担当大臣、もうそれぞれに１冊ずつ本が書けそうな話題が満載で、１人で１０人分くらいの濃密なオードリーの人生がよくわかる。

誰もが疑問に思うこと、それは「どういう家庭で育ったら、オードリーのような人間が完成するのか」だと思うんだけど、やっぱり理解のある親とか、周りの大人に恵まれたことは間違いない。いや親も、はじめはオードリーの先進的な考え方を受け入れられなくて、古い価値観を押し付けようとするんだけど、そこは新聞記者で哲学に詳しい両親のこと、ほかの家庭よりも多少は知見が広かった。自分の矛盾に気がつき、素直に考えを改め、多角的に物事を見ようと努力するんですよね。

オードリーみたいな天才は、１人で勝手に生まれて育ったきたんじゃないってことがよくわかる。本人の努力ももちろんですけど、親が、学校が、地域が、社会が、彼女のことを諦めずに、なんとか受け入れようとしてきたから。みんな、結果だけ見て台湾をうらやましがったりするけど、その前に、まず日本の、あなたのすぐ隣にいる小さなオードリーのことを受け入れてきましたか？っていうことを、突きつけられるような気持ち。

なんか…オードリーが、強烈な管理教育体制の愛知県に生まれなくてほんとによかったと思う（笑）。