三木三奈さんのデビュー作で、第125回文學界新人賞受賞作。文學界2020年5月号掲載。

今回の第163回芥川賞候補作で、受賞作『破局』『首里の馬』以外で気になったのがこれ。超〜おもしろかった。

主人公のミッカーは、小学校のクラスメイト・アキちゃんのことが大嫌いだった。いかに嫌いで憎んで呪っていたか、ということを延々と語ってゆく。嫌いすぎて、ものすごいアキちゃんに詳しくなっててウケる(笑)。

こなれた文体に膝を打つような表現をするすると織り交ぜて、ネタバレになるから書けないけど、後半でアキちゃんの正体を明かすところも企みがあってよかった。それ言われると、なんかアキちゃんを嫌うのがいけないことのような気がしてくるのが不思議…。

それでもミッカーはアキちゃんを嫌い続ける。個人としての感情を優先させまくり、そのためならポリコレの正しさなんてなかったことにすらできるのが人間の哀しい性…。

そして最後の一文がまた効いてる!説明はしないけど、いろいろ想像しちゃう。それは現代社会ではおいそれと口にすることも憚られる、でもきっと誰もが思ったことのある、あれのことか…?を、おんどりゃあっ、と読者に投げかけて幕引き。

デビュー作でこれかぁ、面白い人が出てきたな、という予感がして今後が楽しみ!