ニューヨークでは年間を通して映画やTVドラマのロケが行われています。年明け何日かマンハッタンのオフィスに出社して、すでに何度か行き帰りに撮影に遭遇しました。
東京など日本の都市ではあまり見かけないかもしれませんが、時には通りを通行止めにしての撮影もあります。在宅ワークが定着した関係でオフィス街での撮影がやりやすくなったからなのか、コロナ明けでハイペースでプロダクションが行われているからなのか、急に増えたような印象。面白かったのが、早朝のグランドセントラル駅、時計台で有名なコンコース広場でのTVドラマの撮影。外はマイナス気温だというのに、エキストラも含め出演者は皆薄着でした。でも、一般人の通行を規制するようなこともなく。あとでデジタル編集するのかな〜と足を止めて眺めてみました。同じ日の帰宅時は、駅の出口で、俳優さんがタクシーに乗り込むシーンを撮影してました。夕方の帰宅時間なのに、あまり有名人ではなかったのか、人だかりはできていなく通行人たちは「いつものことね、」みたいな雰囲気で通り過ぎています。
気になり出してニューヨークの各通りがどのくらいの頻度で映画などに登場するのか調べてみたところ、物件保証関係の大手・アメリカンホームシールド社が発表している全米映画ロケ地トップストリート50のサイトを見つけました。ベスト10には、ハリウッドのお膝元ロサンゼルスと、やはり予想通りここニューヨークの通りが軒並みランクインしています。
詳しくは以下のAHS社のサイトをご覧ください
早朝のグランドセントラル駅で見かけたロケ(リハーサルなので、割と近づけました)
当目で見ると駅自体の装飾は冬仕様なのが分かります
ニューヨークの繁華街はベスト10のうち4箇所を占めており、50位以内にも数多くのニューヨークのロケ地がランクインしているので、上位を紹介してみたいと思います。
パーク・アヴェニュー(Park Avenue)
まずは全米3位、ニューヨークで第1位はパーク・アヴェニュー(Park Avenue)です。マンハッタンでは、縦に走る通りをアヴェニュー(Avenue)、横に走る通りをストリート(Street)と呼びます。一般的に日本語に訳すと、それぞれ、Avenueは街、Streetを丁目と呼んでいることが多いです。それで、Park Avenueはパーク街、はFifth Avenueは5番街。マンハッタンは南北に長いので、どのアヴェニュー(街区)も縦に長いことになります。パーク街の地下にはメトロノース鉄道の線路があってマンハッタンのハーレム付近から地上に出てくるので、パーク街も通勤電車の高架下のような場所もありますが、華やかな雰囲気に満ち溢れるのは、グランドセントラル駅を中心として南北それぞれ数ストリートでしょう。近年の有名作品では「スパイダーマン」シリーズに頻繁に登場しています。高級コンドミニアムが立ち並んでおり、アッパーイーストサイドと共に住宅価格が非常に高いエリアです。アメリカの富の象徴のような場面で登場することが多いように思います。なお、日本からの旅行でパーク街の雰囲気に浸りたい方はパーク街と38丁目の交差点に建つキタノホテルに宿泊されることをお勧めします。部屋の窓から時間と共に移ろいゆく街の雰囲気を、それこそ映画のように感じることができます。この辺りには隠れ家的なバーやコーヒーショップも点在していて意外に便利です。
高級コンドミニアムが立ち並ぶパークアベニュー
キタノホテルの一室からパーク街を挟みイーストリバー方面をのぞむ
ブロードウェイ(Boardway)
全米4位、ニューヨークで2番目に多く映画に登場するのは世界的な観光スポットでもあるタイムズスクエアを擁するブロードウェイです。カウントダウンが行われるタイムズスクエアやブロードウェイ・ミュージカルの劇場が立ち並ぶ44ー50丁目界隈は、それこそ数えきれないくらいの映画作品に登場しています。近年の名作では「Birdman」(2014)でブロードウェイのタイムズスクエア近辺で派手なロケが行われました。Michael Keaton演じる落ち目俳優が、本番前の着替え中に非常口から外に出てロックアウトされてしまい、ブロードウェイの人混みをかき分けて裸のまま正面ロビーから劇場に戻るシーンが印象深いです。あのシーンはその年のアカデミー賞でもパロディーされたので、覚えていらっしゃる方も多いかと思います。ブロードウェイはマンハッタンを北西から南東の方向に襷のように斜めに突っ切っており、実はマンハッタン島の北端から南はダウンタウンの方まで伸びています。コロンバスサークル地区やヘラルドスクエア地区も繋いでおり、セントラルパークや百貨店Macy’sの戦艦店など有名観光地もブロードウェイ沿いにあります。
世界的観光地であるブロードウェイ
「Birdman」の名シーン。臨場感がありました。
ブロードウェイ沿いには有名スポットも点在
5番街(Fifth Avenue)
ニューヨークで次に映画撮影が多いのは、5番街です。ご存知オードリー・ヘップバーン主演「ティファニーで朝食を」はあまりに有名。ニューヨークを訪問したことがない方でも、5番街のティファニー本店のゴージャスなイメージは思い浮かぶのではないでしょうか。近年の作品では、映画版「Sex and the City」でMr.Bigが結婚式をブッチするシーンが印象深いです。あのシーンは5番街と42丁目の交差点に位置するニューヨーク市立図書館のビルで撮影されています。正式にはStephen A. Schwarzmanと言う建物で、実際に結婚式を執り行うこともできます。キャリーとMr.Bigはこのビルの中で結婚を執行し結婚証明を取る予定だったのです。昨年末にブログで紹介したゲイ映画「Spoiler Alert」でも主人公の二人が結婚するシーンはここで撮影されました。市立図書館の前の階段ではかなり頻繁に何らかのロケをしているのを見かけるので、このランキングを見る前までは、5番街が映画ロケ地ナンバーワンだと思っていました。ロックフェラー広場のクリスマスツリーやメトロポリタン美術館も5番街沿いにあって、さまざまな名作の舞台になっています。
ロックフェラービルも5番街からアクセスします
映画版「Sex and the City」のこのシーンは5番街でロケ
NY市図書館のビル。正式にはStephen A. Schwarzmanビル
ウォール街(Wall Street)
ウォール街も全米映画ロケ地ベスト10に入っています。さすが、世界の金融ビジネスの中心であり、立身出世ストーリーやマネー・ウォーズ系の数々の名作の舞台になっています。一番有名どころは、金融ビジネスの最前線で繰り広げられる野望と陰謀をオリバー・ストーン監督がスリリングに描いた名作、その名も「ウォール街」(1987年)、そしてもう少し最近ですと、超貧乏から数年にして50億を稼ぐトレーダーになる立身出世(そして破滅が待つ)ストーリー、レオナルド・ディカプリオ主演「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)あたりでしょう。ウォール街を舞台にした映画は基本的に金融ビジネスの現場ということで室内のシーンが多いので、実際にすぐにロケ地とはわかるような場所はありませんが、ランチタイムなどに行くと、まるで映画から出てたような証券トレーダーのような風貌の男たちがサンドイッチをかじっている姿を見かけます。また、9.11同時多発テロでワールドトレードセンタービルが標的になってからは、テロ関連のドキュメンタリー映画や、被害者のドラマを描いた作品などでも登場しています。
ブルックリン側から眺めたウォール街付近
どこで撮ったか忘れましたが、スマホデータによればウォール街界隈のどこか。いたって普通のオフィス街
ということで今日は、ニューヨークに点在する映画ロケ地を紹介してみました。再開発が進んでいる地域もありますが、基本的にニューヨークの街並みは戦後に発達した新興都市のように劇的に変化しないので、例えば半世紀前の名作映画に登場した街道の面影が残っていたり、場所によってはほとんど変わっていないこともあります。また映画以外にも、テレビドラマにも頻繁に登場します。日本人観光客の間で「Sex and the City」ロケ地巡りが大人気だった時期がありましたが、機会があれば穴場的ロケ地も紹介したいと思います。
5番街から見たクライスラービル。このビルも色々な映画に登場します
レトロなイエローキャブの再現モデル。凝ってます