
「誰が為に鐘は鳴る」
夜を濡らした青白い、雨は朝にも生きていた、
か細い指が恐る恐る鍵盤たたく、拙いピアノの音色にも似た、
太陽不在の坂道を、
冬をなぞる口笛鳴らして駆け降りゆく胸は冷たく透き通る、
森は眠るふりをして、風を使ってヒトが近寄らないように、
凍る煙は背を追って、
優しい歌なら遠ざけた、続くだろう孤立を知っていてなお、
横目に流れる星々を、数えるほどに幼くなかった、
鞄に積めているのは前世紀に綴られた、皆殺しを数えた史実を伝えた紙が数十束、
再びそれが繰り返されると、噂話は路地の地表を駆け降りる、
吐き出された水深15の真冬の呼吸は既に絶えて止まってしまった、
バス停裏のジャムの樹に、寄りかかって手紙を読んだ古い古い暖かい、
其れは君が水晶を、胸に秘めていたころだった、
壊れてしまったいまはもう、破片が皮膚を突き抜けてゆく、
恋をする約束が、途切れてしまった雨の日ピアノ、
背を追うのは連れてゆかれた山羊の悲鳴、
太陽死んだ坂道くだる、たった独りは沈痛なる鐘を鳴らしに転がりゆくだけ、
星が泣いてた、知らないふりを続けてた、
擦り傷負った肘と膝からこぼれる鉄の匂いが背後へ背後へ運ばれる、
其の痛みを知らぬ者たち、舌なめずりして奈落へと、
太陽殺す坂道つくる、呼吸のない星々までもを道連れにする、
手紙を書いた、それが誰に届くか知らない、
街の中央、虹まで浮かぶ噴水を、
凍らされた鐘を鳴らそう、星たち泣く夜に梟たちと話した少年、
蛇が睨めつく視線の森を、白い鐘へと下ってゆくゆく太陽不在の坂道を、



