ワールズエンド・ツアー -117ページ目

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!


 あと少しだけ。あと少しだけでいいんだけどな……右斜め前の短い髪のつむじあたりを眺めながら私は思う。
 その向こう、黒板の右にかけられたカレンダーをじっと睨む。少し目が悪くなったみたいで印字された日数がぼやけて見えた。教科書に押しつぶされそうになっていたメガネ(……振り返られたときに似合っていないメガネ姿を見られたくない……)をかけて残りの日数を確認する。

 私の席は窓際のいちばん後ろ。南に向いていて真冬でも頬が赤くなるくらいあたたかくなる。同じ教室のなかでも廊下側と窓際では見える景色が違う。

 私はこの三年間でいちばん好きな席にいる。背の高さを気にして猫背気味になることもないし、陽射しに包まれてうたた寝だってした、それに。
 それに、右斜め前には三年間同じクラスなのに一度も話したことのない、いつもどこかでその姿を追いかけていた人が座っている。
 春になれば遠くへ進学するって笑ってた。
 話すこともないのかなって、でも、残りの時間に「ひょっとしたら」があるかもしれない、そのときにはメールアドレスを聞かれるかもしれない。

 メガネでクリアになった視界に右斜め前の背中が、小さな頭が映っている。今朝は慌てたのか、寝癖ではねたひと束。一度、コツンとゲンコツをしてみたかったなって思う。
 可愛くもないのに上目遣いを練習してみたり(睨んでるみたいだと言われた)、頬杖をついてアンニュイさを演出してみたり(「夜更かしでもした?」って聞かれた)、お弁当を小さくしてもらったり(お腹が空いて帰りにラーメン食べた)……いろいろ、いろいろとやってはみたんだから。
 だから、と言うのもおかしいけれど、せめて、この席で過ごせる時間が一秒でも長くなればいいのにって、カミサマにお願いだってしてみる。

 卒業式の要項が書かれたプリントがリレーされてくる。彼が振り返る、少し痩けた頬が過ぎた時間を感じさせる。私は慌ててメガネを外すけれど、きっと気づいてないんだろうなって思う。
 
 教壇では先生が残りわずかな高校生活についてのありがたい訓示を述べているところで、でも私はいつもどおり右斜め前の後頭部を見つめていた。

 あと少し。そう、あと少しの間はここでこうしていられる。
 いつかずっと未来、記憶が都合良く書き換えられてしまったとしても、この席で過ごした数ヶ月は忘れたくないなって思う。
「たまにはこっち向けコノヤロウ」って念じ続けた、情けなくて愛おしい時間のことを。

 あと少しだけ。いや、ほんの少しだけ時間が止まってくれたらいいって私は思う。だから目を閉じ深呼吸して、似合わないメガネをかけて、この景色がずっと消えてしまわないようにと彼の細い背中を見ていた。
















machinegunbilly on instagram
Instagram





 【 厳 選 】 当サイト既出人気記事一覧 ☆【絵本】 きみといっしょに

★【動画】 星空サーカス

★【体験談】 白内障だったんです。

☆【長編】【失笑青春バンド小説】 イケメン・ジョニーはスーパースター
★【短編ノワール】 国境線上の蟻
☆【童話】 砂時計のクロニクル

★【自薦詩集】 「草原の人」を含む21編
☆【自薦詩集】 「草原には君がいた」を含む36編
★【自薦詩集】 「聞こえてくるアコーディオン」を含む26編
☆【自薦詩集】 「救世の子供」を含む31編

★【掌短編集】 ショートショート・フィクション

【更新!】 当サイト全著述者紹介




Copyright (C) 2018 copyrights.billy tanaka All Rights Reserved.


応援クリックをどうぞよろしくお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ

「雨のカロン」


シトラス、ペパーミントに煙る、雨を待つ風の街、
傘に仕込んだライフルで、天を貫く銃声あげた、
暗い雲が閉ざしてる、水門さえも撃ち抜ければと、
無言の空は砂漠をさらに拡げろと、
水の色の雨をくれない、

雨のカロン、俯く視線、かつての湖、
へばりつく影は青、爪先に蹴る土は褐色、
水に消えた国を棄てたら、渇きの果てに声のない街、
雨のカロン、歩みに並行する無色、

ガラスでできた地球儀は、いつかの海辺に沈めてしまった、
深海にて球体は、宇宙の星のふりをするだろう、
鉄塔には降水予知機、観測されたことがない、
神はその高みの視座に、表情ひとつ変わらない、
無慈悲にさえ慈悲はある、すり替えては手を振った、

雨のカロン、傘に仕込んだライフルが、
神の手さえもすり抜けて、渇きに散る地に優しい水を、
雨のカロン、シトラス、ミントが香る街、
昼夜いとわず引き金を弾く、
頭上から、眺めるだけの救いの者へ、
どうか空が泣きますようにと、
















machinegunbilly on instagram
Instagram





 【 厳 選 】 当サイト既出人気記事一覧 ☆【絵本】 きみといっしょに

★【動画】 星空サーカス

★【体験談】 白内障だったんです。

☆【長編】【失笑青春バンド小説】 イケメン・ジョニーはスーパースター
★【短編ノワール】 国境線上の蟻
☆【童話】 砂時計のクロニクル

★【自薦詩集】 「草原の人」を含む21編
☆【自薦詩集】 「草原には君がいた」を含む36編
★【自薦詩集】 「聞こえてくるアコーディオン」を含む26編
☆【自薦詩集】 「救世の子供」を含む31編

★【掌短編集】 ショートショート・フィクション

【更新!】 当サイト全著述者紹介




Copyright (C) 2018 copyrights.billy tanaka All Rights Reserved.


応援クリックをどうぞよろしくお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ

「白骨」


埋められていた白骨なんて、百年経てば誰もが忘れてしまってる、
僕も君もいつかそうなる、風に吹かれて知らぬ顔を決めたところで、

愚か者がほら嗤ってやがるよ、いつかのお前がそうだったように、
強いふりして臆病者が息巻いてるよ、かつての俺らがそうだったように、

白骨よ、静かに死んでいろ、
もう痛くも痒くもないだろう、
白骨よ、穏やかに死んでいろ、
そっちはどうだ、現世たるとはどれほど滑稽に見えるもんだ?

見上げたら空しかなくて、遠さと青さに途方に暮れる、
それだけさ、相変わらずそんなもんさ、
白骨たちよ、天で静かに眠っててくれ、
夜になれば星になって浮かぶんだろう、
それを見て、俺らは愚かに生きてるって舌出す白骨たちのこと、
思い浮かべて苦笑いするしかない、

くたばれ白骨、くたばれ白骨、
くたばれ白骨、寝てろ白骨、
くたばれ白骨、くたばれ白骨、
消えろ白骨、そこは青空、
見上げろ死人、ほら見ろ俺ら、
星たち嗤ってくれてる、
じゃあな白骨、静かにくたばれ、

時間はいつしか砂になるんだ、
時間はいつしか砂になるんだ、
時間はいつしか砂になるんだ、
眠れよ骨共、そこで待っていてくれよ、

見上げちまったらそこは相変わらずの澄み渡る空、
ひたすら白いお前なんざにゃ浮かぶ世さえもないだろう、
だからか俺らは居心地なんてなさそうに、タバコ咥えて雲なんてをつくるんだ、
適当に嗤いながらさ、いい加減な相槌で、
くたばろうぜ、適当な頃合いで、
くたばるしかねぇ、白骨になる頃合いに、










machinegunbilly on instagram
Instagram





 【 厳 選 】 当サイト既出人気記事一覧 ☆【絵本】 きみといっしょに

★【動画】 星空サーカス

★【体験談】 白内障だったんです。

☆【長編】【失笑青春バンド小説】 イケメン・ジョニーはスーパースター
★【短編ノワール】 国境線上の蟻
☆【童話】 砂時計のクロニクル

★【自薦詩集】 「草原の人」を含む21編
☆【自薦詩集】 「草原には君がいた」を含む36編
★【自薦詩集】 「聞こえてくるアコーディオン」を含む26編
☆【自薦詩集】 「救世の子供」を含む31編

★【掌短編集】 ショートショート・フィクション

【更新!】 当サイト全著述者紹介




Copyright (C) 2018 copyrights.billy tanaka All Rights Reserved.


応援クリックをどうぞよろしくお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ