ビジネス人間学
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 ITmedia エグゼクティブ勉強会に、コンパス代表取締役で「思考の整理家」の鈴木進介氏が登場。著書である「問題解決のためのセパレート思考(フォレスト出版)」に基づき、「なぜ一流の人はシンプル思考なのか?」をテーマにワークショップを交えて話をした。

 「ビジネスパーソンやアスリートなどの超一流といわれる人は、シンプルに物事を考え、最大の成果を上げている。一方、非常に優秀で、頭が良く、経歴や実績があるにもかかわらず、最大限に能力を発揮できない人や企業も多い。理由は、考えすぎである。思考を整理するだけで、人や企業の能力を最大限に引き出すことができる」(鈴木氏)

●「一流の人」と聞くと、どのような人をイメージするか?

 「質問に対し1つの答えを出す人は、シンプルに自信を持っている人であり成長スピードが速い。また、たくさん答えを出しても、その中からシンプルに中心軸を見つけることを意識すればよい。この質問に正解はないが、私の"一流の人"の定義は、"常に成果を出す人"である。ポイントは"常に"という枕詞である」(鈴木氏)

 職場が変わる、仕事が変わる、人事異動がある、事業が変わる、どのようなときでも成果を出し続けるのが一流の人である。それでは、どうすれば一流になれるのか。どのような思考法を持てばよいのだろうか。例えば、Googleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏は、「成功はシンプルから生まれる」という名言を残している。

 鈴木氏は、「Googleの創業者が、ここまで明快に言いきっているからこそ、あのスピード感で巨大企業を作れたのだと思っている。はじめてGoogleの検索サイトを見たとき、愛想のない、殺風景なサービスだと思ったが、目的は本当に必要な情報を検索することであり、ほかのニュースやコンテンツはいらないことに気がついた」と当時を振り返る。

 また、京セラの創業者である稲盛和夫氏は、「バカなやつは単純なことを複雑に考える。普通のやつは複雑なことを複雑に考える。賢いやつは複雑なことを単純に考える」と話している。鈴木氏は、「ビジネスにおいては、ものごとをシンプルに考えなさいという教訓。"あれも、これも"がんばるではなく、"あれか、これか"の判断が重要だ」と話す。

●「シンプル思考」のメリットとは?

 「シンプル化がもたらすのは、"決断力×行動力"の向上である。ものごとをシンプルにすることで決断が速くなり、適切に行動することができる。諸説あるものの、人が苦しむのは、世の中が複雑に見えるからである。世の中を複雑にしているのは、人それぞれの頭の中である」(鈴木)

 例えば、「なぜ、あいつはいうことを聞かないのか」など、人間関係の悩みは多い。しかし、「そもそも人は話を聞くのが嫌いである」と割り切り、その上で何ができるかを考えればよい。「動いてくれるはず」という前提で考えると、ストレスがたまることになる。目標やビジネス、健康面においても同様である。

 「独立した当初、苦しい時代は複雑思考であった。飛躍することができたのは、シンプル思考に進化したときだった。常にシンプル化を意識しておかなければ、頭の中はどんどん複雑化する。そこで1日に1度でも、週に1度でも、頭の中をシンプル化する"自分会議"を開催することが効果的である」(鈴木氏)

●自分を変える3つの鍵とは

 自分を変えるためには、「思考」の使い方を変える、「時間」のとらえ方を変える、「お金」のとらえ方を変えるという3つの鍵が必要になる。鈴木氏は、「当たり前のことだが、同じことを、同じやり方でやっていたら、同じ成果しか期待できない。これまでとは異なること、異なったやり方に変えなければ、新たな効果は期待できない」と語る。

 思考、時間、お金の3つの変化で定義すれば、自分や会社を変えるターニングポイントを意図的に作り出すことができる。余談だが、ものごとは3つに分類すると整理がしやすくなる。例えば信号では「赤、黄、青」、食べ物では「松、竹、梅」、ビジネスでは「プランA、プランB、プランC」など。3つの中からもっとも重要な1つを選べばよい。

 「思考」の使い方を変えるためには、自分に質問をすることだ。そのための質問項目を頭の中にインストールする。例えば、「結果を出すために、いま何をすべきか?」「結果を出すために大切なことは何か?」などである。しかし問題が。人は時間が経つと自分に質問することを忘れてしまう。そこで重要になるのが自分会議である。

 また仕組みづくり、道具選びも重要。円を等分したグラフを使い、それぞれに「目標」や「変化を起こしたい項目」を書き出し、もっとも重要な分野は何か、それぞれの分野に対し100点満点で何点になるかを考え、レーダーチャートを作ることで、自分の思考を容易に視覚化できる。

 「道具により、いま本当に集中すべきことに集中しているかをセルフチェックすることができる。頭の中に質問をインストールするのは、頭の中にコーチを雇う、セルフコーチングだと思えば分かりやすい。単に頭の中だけで考えるのではなく、グラフ化したり、手帳を使ったり、道具を使うことが有効になる」(鈴木氏)

 また、いきなり絞り込むのが難しい場合には、大きなかたまりを「仕分け」することから始めてみる。可燃ごみと不燃ごみ、夏服と冬服など、生活の中で仕分けすることは多い。それでは、頭の中は仕分けしているだろうか。「頭の中の仕分けは、基準となる軸さえ持っていれば、それほど難しいことではない」と鈴木氏。

 頭の中の仕分けの軸とは、「重要なものと重要ではないもの」「変えられるものと変えられないもの」「自分でやるものと他人の力を借りるもの」などである。元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜氏は、「コントロールできないことは考えない。コントロールできることに注力する」と語っている。

●「時間」と「お金」のとらえ方を変える

 「時間」のとらえ方を変えるためには、「いま」に集中することである。過去は帰ってこない。一方、未来は不確実である。そこで"いま"に集中することだ。また"いま"のタイミングが是か非かを判断することも重要になる。これは、天職の発見でも、人間関係の構築でも、新商品の発売でも同じである。

 一方、「お金」のとらえ方を変えるためには、出資に関する決断を即断即決することである。鈴木氏は、「無意味なコストパフォーマンスを考えないこと。現在のコストパフォーマンスは、9割がコスト削減に注力している。本来であれば、パフォーマンスに注力すべき」と話す。

 鈴木氏は、「シンプル思考の3原則は、思考の使い方を変え、時間とお金のとらえ方を変えることである。また、常に振り返りの時間を持ち、頭の中を仕分けすることで、思考をシンプル化できる。シンプル化により、ビジネスにおけるすべての問題を解決できる」と話し講演を終えた。
(山下竜大)
(ITmedia エグゼクティブ)


 最高レベルに練られた計画には「プランB」(代替案)はない――。

 新たな研究によると、複数の目標に向けた代替計画を作成すれば、主要な目標に対する成果に悪影響が及ぶ可能性があることが分かった。

 ウィスコンシン大学マディソン校ビジネススクールの准教授(経営・人事管理)で、この研究論文の共著者であるジヘ・シン氏は「代替計画を検討するだけで主要目標を達成する意欲が薄れ、あまり力を注がなくなる。その結果、主要目的で成功を収める可能性が低くなる」と話した。

 同じく共著者であるキャサリン・ミルクマン氏とシン氏は一連の研究で、代替計画の作成で発生する損失を何度も観察してきた。ミルクマン氏はペンシルバニア大学ウォートンスクールの准教授で、オペレーション・情報・意志決定を専門とする。

 ある実験で、参加者は言葉のパズルを解読するよう求められ、うまく行けばスナックを無料でもらえると告げられた。ただ、一部の参加者には無料のスナックを得られない可能性があると注意され、キャンパス内で無料の食べ物を見つける別の方法を考えるよう告げられた。つまり、無料スナックを得る代替計画を練るよう求められたのだ。

 代替計画を練るよう促された参加者は、追加の指示を受けず優先作業だけに取り組むよう告げられた参加者よりもパズルの成績が極端に悪かった。

 目標を達成したいという欲求は、努力の末に感じることを人々がどのように捉えるかに基づくことが多い。シン氏によると、仕事を達成できなければ本当に嫌な思いをすると予想するなら、一生懸命それに取り組むだろう。だが「プランB」のことを考えれば、力を抜いても大丈夫だと感じるかもしれない。

 大半の人にとって万が一の対策を取るのは自然なことだ。だが、より戦略的に考えるべきで、代替計画を練ることで成果が落ちる可能性を理解すべきだということをこの研究は示している。

 シン氏は「まず主要目標を達成するため可能な限り努力し、しばらくの間は集中したほうがいい。詳細な代替計画を練るのはその後だ」と述べた。

By RACHEL EMMA SILVERMAN


※この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。

 経営コンサルティング会社や産業再生機構など複数の投資ファンドに在籍していた際に、かつては業績が良かったものの現在は不振に陥っている企業を何社も見てきました。しかし、オーナーの変更など経営体制や方針が大きく変わる、社内外に混乱を招きかねないリスクのあるタイミングから自分自身が経営者として参画した会社については、結果を振り返れば全ての期について対前年比で利益を伸ばしてきました。

 旧来型の産業には、大きなものから小さなものまでいくつかの収益性を維持・向上させるための勝ちパターンがあり、それぞれはおおよそシンプルなものです。会社や事業モデルの現状と理想とのギャップがどこにどれくらいあるのかという分析がまず必要です。そのうえで、なぜそこから外れてしまっているのか、軌道修正できなかったのかという問題を解きほぐして一つ一つ粘り強く対策を打っていかなければなりません。

 会社をおかしくさせるのは主に、利益を出す仕組みが競争環境の変化についていけなくなってしまう戦略上の要素と、日々の取組みを実行する組織内のさまざまなレイヤーによる意思決定の過ちの積み重ねとがあります。前者は分かりやすい、すなわち正しやすい課題です。しかし後者については見えにくく時間がかかりますし、リーダーがあらゆる手を尽くして組織の上から下まで継続的に関わっていかなければ解決できない問題です。

 企業といえども人間の集まりにすぎないため、会社や組織を変えたり伸ばしたりしなければならないリーダー(達)は、仕組みを変えることと、それを実行する人間の問題の双方に取り組まなければ結果は出せません。

●正しいと思ったら1人ででも試してみる

 意思決定を誤るケースとして多いのが、過去の成功体験に囚われること、新しい取り組み、社内慣習や常識からの逸脱に対して過剰にネガティブな反応を示すことです。

 以前経営していた会社では、着任当初の見立てとして、弱点補強のためには社内の各所に外からの人材採用は必要不可欠でした。ところが財務状況が極めて悪いので、ボーナスどころか給与水準の維持でさえも本音のところでは確約できない状態です。そんな状態では普通に募集をかけてもまともな人材は来てくれません。募集告知に「お金はないが、仕事の機会と夢だけは溢れている」というキャッチフレーズを掲げたところで反応はお寒いものでした。

 そこで、3カ月間の契約社員、ただし相場の3割増しの給与、「普通に」認められれば相場給与で正社員化という条件に切り替えました。社内では「(どうせ誰も応募がないから)意味がなくて無駄」と言われ、人材エージェント主要各社からは「非常識ですし、"普通に"っていったいなんですか? 説明できません」と反対されました。

 こんなに厳しい条件でも果敢にエントリーしてくるような、なにがしかの理由で真っ当に働くことを渇望している人でないとどの道今の会社ではやっていけないと考え、選考ポイントは意欲とその理由と対話力だけに絞り、学歴や職歴も不問にして、(当初誰も協力してくれませんでしたので)自分自身で説明会を開き採用活動をしていました。最初に採用できた人が優秀と認められたおかげで徐々に協力も得られ、社員の1割近くに相当する人員を採用でき(期間満了と同時の退社はうち1割でした)、プロパー社員とともにさまざまな取組みに挑戦できました。

●恥を恐れない勇気

 MBA保有者は時間とともに増えていきますし、いろいろな書籍や研修などにより、企業経営に関する戦略や思考のフレーム自体の情報格差はほとんどなくなっています。大切なことはそれらをどう自社に適用して、実践を継続できるかということです。

 特別な技術や資産があるような場合を除けば、ある程度の規模や事業基盤の企業において結果が出るかどうかは、戦略や知恵によって起こる差と同等以上に、個人であり集団の感情的な欲をコントロールすること、それによる意思決定の判断軸が客観的・論理的であること。また、根底に志があり、それが共感されるものであり、どう共有しているかといういたってシンプルな運営上の力量によって起こる差が影響するように思います。

 組織の中で実質的にある程度の権限を持つと、部下や周囲に意思決定の理由の説明を端折ることが許されたりもします。感情に任せて判断して指示を出すことはすごく楽なことです。ただしその結果に対する反省や分析も端折ってしまうと市場の変化についていけなくなり、どこかでウミが貯まります。

 著者のように落下傘的に突然外から会社に入ってくる人に対して、土足で踏み込んできたように捉えるミドル層はたくさんいます。むしろその方が人間として正直な反応だと思います。ただしさまざまなアクションや意思決定について理由を尋ねた際に、単に「面白くない」という感情によるネガティブな反応と、きちんと説明できないことを隠すためにいわゆる「逆ギレ」のような反応をされる場合などがあります。後者であった場合、現状を改善できるカギが隠れていると捉えます。

 リーダーが部下であれ他人の力を引き出すためにはまず、説明責任を果たせるような、自分としては客観的に正しいと思える解なり論拠を持っていなければなりません。加えて、普段の生活態度を含めて自分自身で実行が伴っていなければなりません。

 そのうえで、さまざまなアクションが実効可能かどうか、組織や自分の管理すべきグループに価値観や判断基準が浸透しているか、日々の大なり小なりのPDCAを早く多く回し、その結果を確認しなければなりません。もちろん人間ですから判断が誤っていたことが露呈することもあります。その際には素直に認めて「ごめんなさい」をして、関係者の知恵を集めて改善策を考える行動が必要です。

 結果を確認する際のカギとなるのが、1次情報です。中間管理職の報告という2次情報を聞くだけでなく、それとなくでも構わないので、組織の最前線にいるスタッフやお客様、取引先など関係者からの1次情報を取りに行くことです。報告とは違った事象が見えることは多々あります(もちろん、中間管理職のプライドを傷つけないようにする配慮は必要です)。1次情報に触れている人たちが躊躇なくネガティブな報告もできるような土壌を作っておくことが理想的ではあります。

 よく「立派な人ほど腰が低い」とは言われますが、1次情報を集めるためには人として丁寧な態度が必要ですし、また、誤りが起こった時には影響が小さいうちに芽を摘んで改善するために協力を仰ぐ際も同様ですので、そうなっていくのでしょう。

 (今売れている書籍のタイトルにかこつけるわけではないですが)ネガティブな事実を受け止める、自分の誤りが露呈して恥をかくかもしれないリスクを受け止めながらも他者に説明をする、ごめんなさいを言える、取組みを後戻りさせる、判断を途中で変える、何かを新しく始める(うまくいかない時間を過ごす)。そんな諸々の勇気を持ち続けることが、会社を支えるリーダーにとって忘れてはいけないことだと捉えています。

(出口知史)


(ITmedia エグゼクティブ)

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 世界経済が昨年どんなに動揺し、市場がどれほど乱高下しても、しっかり踏ん張ったグループがある。超富裕層(ビリオネア)だ。

 調査会社ウエルス-Xによる最新の調査(2015-16年版)によれば、個人資産10億ドル以上と定義される超富裕層が持つ富の総額は昨年、世界全体で5.4%増加し、7兆7000億ドルと史上最高に達した。参考までに、米国の国内総生産(GDP)は約17兆ドルだ。

 また昨年の世界の超富裕層は2473人と、前年比で6.4%増加。こうした超富裕層が持つ富が世界の世帯の富の総額に占める比率は3.9%で、前年の4%をわずかに下回った。

 ウエルス-Xのデービッド・バークス氏は「富が富を蓄積する一助になる」と述べた。

伸びるアジア太平洋地域

 超富裕層の人数を地域別でみると、欧州・中東・アフリカ(EMEA)が1013人と依然として最多で、2位は南北米大陸の782人。ただバークス氏によると、アジア太平洋地域が、南北米大陸を近く追い越しそうな勢いだという。アジア太平洋地域の昨年の超富裕層は678人。南北米大陸よりも4倍の新たな超富裕層を生み出したという。

 一方、富の総計では南北米大陸が3兆ドルに達し、EMEAの約2兆8000億ドルを追い越した。

 ベビーブーマー世代が若い世代に富を移譲するに伴い、相続で超富裕層になる人が増えている。ウエルス-Xによれば、部分的に遺産相続した超富裕層は前年比29.9%増となり、全体で最も速いペースで増えるグループとなっている。

 バンク・オブ・アメリカ傘下で個人資産管理を手掛けるUSトラストのマーク・コンプトン氏によれば、過去2年間にわたって、自らの事業を売却して一部資産を子供たちに移譲する顧客が増えているという。

遺産相続以上の何かが必要

 しかし大半の超富裕層にとって、資産10億ドル以上を持つグループの仲間入りをするには遺産相続以上の何かが必要だ。例えば、自らの力で資産の大半を形成した超富裕層は全体の87%で、前年の81%から一段と増えた。

 ベル・エアー・インベストメント・アドバイザーズ(ロサンゼルス)の上級マネジングディレクター、トッド・モーガン氏によれば、同氏の超富裕層顧客のうちの数人が起業家であり、彼らは「極めて強い意思に駆られており」、多くは富を成した後も長時間働き続けることを選択するという。

 「超富裕層は『10億ドルの資産に到達したから今後はビーチに座ってリラックスしよう』というのではなく、『次に何を創造ないし達成できるだろうか』と考える」(モーガン氏)。

 超富裕層が厚くなるにつれて、社会への還元に対する彼らの意欲も強くなっている。ウエルス-Xによれば、昨年も2014年と同様、世界的な超富裕層の間では慈善活動が主たる関心の的だった。慈善活動を追求したり関心を抱いたりしている人は超富裕層の56%以上に達したという。

 モーガン氏が一緒に活動している数人の超富裕層も、慈善活動に集中している。彼らは資産の一部を使って大きな問題、例えば飢えあるいはホームレスといった問題を解決しようとしているという。

 米マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏と投資会社バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェット氏は、2010年に出した「ギビング・プレッジ(寄付誓約宣言)」で話題を呼んだ。世の中の超富裕層に富の大半を寄付するよう呼びかける取り組みだが、それはモーガン氏の顧客の間で本格的に社会還元しようという意欲をかき立てる一助になったという。

 モーガン氏は「彼らは、超富裕層なら誰でも邸宅をもう一軒購入できることを承知しているが、むしろ(社会に)影響力を及ぼそうとしている」と語っている。

By VERONICA DAGHER


 五輪の標語は「より速く、より高く、より強く」だ。これに加え、今年の大会は「より鮮明に、より大きく、より近く」なるだろう。

 自宅で競技を観戦する人は、競泳女子のメリッサ・フランクリン選手が水しぶきを上げながら泳ぐ姿を超高精細「4K」テレビで驚くほど鮮明に見ることができる。これは今大会で初めて実現することだ。スマートフォンだけでも全競技の全試合、つまり4500時間におよぶリオ五輪のドラマをライブで楽しむことができる。さらに、仮想現実(VR)で飛び込み台にテレポートし、目と鼻の先で高飛び込み代表のデービッド・ボウディア選手がジャンプするのを見ることまでできるのだ。

 リオ五輪は5日に開幕するが、私たちにできることは自宅で特等席を確保するだけではない。テクノロジーの躍進のおかげで、リオデジャネイロにも存在しない座席まで確保できるようになったのだ。

 ホームエンターテインメント機材は急速に変化しているが、五輪大会はこれをリアルタイムでテストする多くの機会を提供する。過去数年間、私たちは「ウルトラHD 4K」や「HDR(ハイダイナミックレンジ)」対応テレビ、「スープドアップケーブル」「ストリーミング(逐次再生)ボックス」「VRヘッドセット」(装着すると間抜けに見える)など、格好良く聞こえるがすぐには役に立ってこなかった機材を買わされてきた。五輪に夢中になれる間は、これらすべての機材を有効活用することができるだろう。

 ケーブルテレビの契約者、ケーブルテレビをやめた人、仕事中にこっそり観戦したい人、写真動画共有アプリのスナップチャットで感動のハイライトを見たい人――今大会はさまざまな人のための五輪が用意されている。さらに、NBCは五輪をテーマにした絵文字キーボードまで作ってしまった。

 少し圧倒されそうな気もするが、ここでは五輪を最大限に堪能するのに必要な機材一式、アプリ、会員契約に関する「虎の巻」を紹介する。

・仕事中(あるいは休暇中)に観戦する

 五輪ファンなら即座にダウンロードすべきアプリの一つが「NBCスポーツ」(正式名は「NBCスポーツ・ライブ・エキストラ」)だ。このアプリは五輪のスポーツイベントとプライムタイム中継を、スマホやタブレット端末を通じて余すことなくライブストリーミング配信する。

 パソコンで観戦したければ、ウェブブラウザーで「NBCOlympics.com」を開いてみよう。(上司が歩き回っている時の対処方として、ウインドウズでは「ウインドウズキー+D」、マックでは「コマンドキー+M」を押せばウインドーを最小化できる)

・ケーブルテレビを介さない観戦方法

 ケーブルテレビの契約から解放されたのであれば五輪観戦は簡単でなくなるが、それでも可能だ。残念ながら、「ネットフリックス」や「HBOナウ」と異なり、NBCは「NBCスポーツ」アプリでストリーミング配信のみ利用できるサービスを販売していない。アプリにログインするにはケーブル契約が必要になるが、あなたが契約していなくても他の契約者から「借りる」ことができる。(ケーブルプロバイダーによっては1アカウントから同時にストリーミング配信を受けられる人数を制限しているところもある)

 このほか、8月だけストリーミング配信のみのテレビサービスを購入する方法もある。居住地によって異なるが、30ドルから40ドルを負担すれば、セットトップボックス「ロク(Roku)」、アマゾン・ドット・コムの「ファイアーTV(Fire TV)」、そしてもちろんプレイステーションでも、クラウドベースのテレビサービス「プレイステーション・ヴュー(PlayStation Vue)」を使うことができる。これにはNBCのケーブルチャンネルが入っており、ストリーミング配信アプリ「NBCスポーツ」にもアクセスできる。

・「ウルトラHD」テレビを持っている人は

 リオ五輪は旧式の高精細(HD)画質の4倍の解像度を誇る「ウルトラHD 4K」で視聴すべき、最初の特大イベントになるだろう。金メダルと銅メダルがほんのわずかな差で決まってしまうことが多い水泳といった競技では、重要な細部を見逃さないために超高解像度が生きてくる。4Kでは陸上のウサイン・ボルト選手の汗まで見ることができ、スタジアムで有名選手の顔を見分けることもできるだろう。

 4Kを視聴するには4Kテレビが必要だ。米国では昨年、600万台の4Kテレビが販売された。この数字は今年、倍増すると見込まれている。ただ、4Kテレビだけでは五輪競技を4K画質で視聴することができないかもしれない。米国で4K映像が視聴できるケーブル会社はコムキャスト、ディッシュ・ネットワーク、ディレクTVの3社だけだ。

 とてもクールな技術をもう一つ紹介しよう。意匠を凝らした新型テレビの中には、明るさ情報の幅を拡大させる高画質化技術「HDR」に対応したものがある。これは生きているような輝度(明るさ)の高低を使って色を表現する、欲しがるに値する技術だ。4KとHDRに対応するテレビを使えば、五輪大会を映す画面が現実とほぼ同じくらい明るく見えることが保証される。

・現場にテレポートしよう

 それほど長くVRを試したことがない人にとって、リオ五輪は絶好の機会になる。想像してみよう。3メートルの高さの飛び込み台から、10メートル高飛び込みの選手が一瞬で通り過ぎるのを見ることができるのだ。また、ボクシングの試合をリングのコーナーから観戦できるかもしれない。審判でさえ、そこまで近づくことはできないだろう。

 こうしたテレポーテーションに参加するには、韓国サムスン電子のスマホ「ギャラクシー」シリーズの最近のモデルとVR端末「ギアVR」が必要になる。ギャラクシーで「NBCスポーツ」アプリを開けば、スクリーンをVR向けに切り替えることができる。この映像を使えばイベントを360度見回すことができるので、回転椅子が欲しくなるかもしれない。ただ、全てのVR映像は1日遅れで利用できる運びだ。

・選手に密着したければ

 競技における最高の視点はアスリートの目線かもしれない。五輪の規定により、アスリートは競技場から動画を配信することができない。ただ、有名選手の多くはフェイスブックやツイッターなどを利用しているため、世界クラスのアスリートとはどういうものかを垣間見る機会はある。

 体操女子のシモーネ・バイルズ選手は、スナップチャットでフォロワーを選手村内部にいざなってくれる。男子競泳のライアン・ロクテ選手は最近、画像共有アプリのインスタグラムに「信頼するコーチ」とのミーティング風景を投稿した。

 このほか、NBCは五輪シリーズ枠を開設するため、コムキャストが出資する新興ネットニュースメディアのバズフィードとタッグを組んだ。

By GEOFFREY A. FOWLER